山岳スポーツと仕事を両立させたい。何もかも「ちょうどよい」新潟市ならそれができる。
サマリー
東京で気付いた地方の魅力
高校ではサッカー部の主将として、サッカーをやり切ったと感じた遠藤さんは、東京の大学に入学してからは陸上サークルに所属して、趣味程度に走っていました。しかし、ただトラックを走るだけでは物足りなくなって、思い立って登山に挑戦します。
「八王子のキャンパスの近くの高尾山から徐々に慣らしていきました。やがて標高3000 m 弱の長野の八ヶ岳に登ったら一気に魅了されて山登りにどっぷりはまりました」
空身で山をひたすら駆け上る爽快さと、ライバルと競い合う競技性に惹かれて、遠藤さんは大学3年でスカイランニング競技に夢中になりました。一方、山岳スキーを始めたのは「新潟出身なのにスキーしたことないんだ」という友人の何気ない一言がきっかけです。実は新潟市民で子どもの頃からスキーに打ち込んでいる人はごく一部。遠藤さんもスキー経験はゼロだったのです。「じゃあ、やろうじゃないか」と始めたものの、生来の競技好きです。ゲレンデをただ滑るだけでは物足りず、山岳スキーというスポーツがあることを雑誌で知って、大学3年の冬から始めました。
二つの山岳スポーツを始めたことで遠藤さんは新潟に思いをはせるようになります。「それまでは山なんて視界に入らなかったのに、東京から新潟に帰るたびに、あ、こんなに山があるんだ、自然っていいな、地元っていいよなって思うようになりました。それが地元での就職を考えるようになった大きな理由でしたね」。大都会東京で4年間の学生生活を過ごしたからこそ、地元の魅力に気付けたのだと遠藤さんは考えています。
地方就職をした理由
遠藤さんの場合、東京での就職は考えていませんでした。長男なので新潟の親元に帰った方がいいから。それに都会の人混みが少し苦手だから。しかし、最大の理由は山岳スポーツにありました。「スカイランニングや山岳スキーはまだまだマイナーだし、競技人口が極めて少ないスポーツです。せっかく新潟にはすごくいい山、自然豊かなフィールドがあるのだから地元で普及活動をして盛り上げたいという夢もありました」。
大学卒業後、地元に帰った遠藤さんは実家に近い住宅設備関係の会社に就職。が、体を使って作業する仕事が多く、アスリート活動との両立が厳しくて体調を崩してしまう結果となりました。競技を本気で続けたい――。そう考えた遠藤さんは会社を辞め、競技に専念することで山岳スキー世界選手権日本代表の地位を勝ち取りました。「夢中で練習を続けた結果です。競技人口が少ないですから(笑)」と遠藤さんは控え目に語ります。
ただアスリートだけをやっていたのでは生活が成り立ちません。スポーツと仕事の両立ができる環境はないかと模索していたところに、タイミング良くアスリートと企業の交流イベント「にいがたアスリートキャリアフォーラム」が開催されました。新潟県内で就職を希望するアスリートとアスリートを自社の戦力として採用したい地元企業との出会いの場となるイベントで、新潟県社会人スポーツ推進協議会が主催するものでした。
「特に業種は絞らず、体力的にアスリート活動に支障が出ない仕事内容・仕事環境の会社であればいいなと考えていて、シアンスというIT企業と出会えました。ITの知識も経験も全くなかったけれど、テレワークや裁量労働制を導入していた点が魅力で、ダメ元で応募したら採用していただけました」。
地方都市での暮らし
遠藤さんはシステムエンジニアとして、Web システムの開発を担当しています。文系出身でIT知識ゼロで入社しただけに、最初は「何が分からないのかすら分からないほど」でしたが、帰宅後も勉強してスキルを身に付けていったといいます。
平日は毎朝5時に起床。1時間ほどのトレーニングが日課です。近くの山に行き、山頂まで駆け上り駆け下って、帰宅して朝食とシャワー。それから出社です。定時は9時から18時。
「裁量労働制なので朝ちょっと長めにトレーニングして10時に出社したり、ケガをした時は治療に行くため早めに退社したり。全て自分で勤務時間を調整できるので、スポーツも仕事もすごくのびのびとできています」。山と職場が近い新潟だからこそ可能になった社会人アスリートの日常といえるでしょう。
遠藤さんは、ヨーロッパで開催される「山岳スキー競技」世界選手権の日本代表に2019年、2021年と2大会連続で選出されました(2021年大会はコロナ禍で日本選手は不参加)。日々、システムエンジニアの仕事とアスリート活動を両立させながら、夢に向かって挑戦し続けた結果、日本代表に選出されたことは、周囲の応援してくれている社員にもよい影響を与えているといいます。
「夢はたくさんあります。まずはスカイランニングと山岳スキーの両種目で日本代表になること。また山岳スキーはオリンピック種目になったので、イタリアで開催される2026年冬季五輪に出場するのが新たな夢になりました。競技の普及という面では、2021年10月、新潟県魚沼市でスカイランニングの大会を友人と共同プロデュースすることになっています。その大会を成功させて今後10年20年と続くような大会にして、新潟を“スカイランニング大国”に育てていきたいですね」。
仕事上の夢は、スポーツ関連のシステムをつくること。「例えばスポーツ一筋で歩んできたアスリートが最適の就職先と出会えるようなアプリを開発したいですね」。一流のアスリートを目指すからにはシステムエンジニアとしても一流に。それが遠藤さんの目標です。
地方就職を考える人へのアドバイス
新潟は遠藤さんにとって「ちょうどいい」という表現がぴったりな都市なのだそうです。「都会過ぎず田舎過ぎず。中心部から車でちょっと走ればすぐ海や山があるし、ショッピングモールだったり都会的な要素もあるので、本当にちょうどいい。そこが新潟市の魅力だと思っています」。就職先についても同じで、自分にとって「ちょうどいい」会社を探すことが大切だということが、遠藤さんの話から見えてきました。
新型コロナの感染拡大をきっかけに多様な働き方が可能になりつつある時代。特にIT系の業種は仕事の場所を選びません。「自分の可能性をつぶさずに、やりたいことに向かって、まずはチャレンジしてみるところから道は開けてくると思います。いろんなことにチャレンジして最終的に自分の“ホーム”が見つかるといいですね」。