どんな会社
株式会社東洋開発
・事業内容:山形県酒田市を中心とした不動産の売買・賃貸・管理及びその仲介など
・創業:1994年
・本社所在地:山形県酒田市本町一丁目5番31号
・従業員:18名(2024年11月)
・企業ホームページ:https://www.toyokaihatsu.com/
山形県酒田市で不動産の売買や賃貸、管理やその仲介など、幅広く不動産事業を手掛ける株式会社東洋開発。ホワイト企業認定マークを複数取得し、2024年7月のホワイト企業ランキング(※1)では1位を獲得しています。一方で、認定やランキングを目指す意識は全く無かったと櫛引社長は語ります。東洋開発の人に優しい仕組みや考え方、根底にある価値観はどのようなものなのか、お話を伺いました。
※1 非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構(SHEM)「ホワイト企業ランキング TOP100 2024年7月版」
TOPインタビュー
株式会社東洋開発
代表取締役社長 櫛引 柳一(くしびき りゅういち)氏
2000年に東洋開発に入社。営業担当として経験を積み、管理職を経て、2010年より社長に就任。2024年に創業者から全株式を取得し、オーナー社長に。酒田市の不動産事業だけにとどまらず、西表島のリゾートホテル経営や、国外の不動産事業も手掛ける。
■業務システムの先を行く、働きやすい仕組み
各種認定やランキングに関しては、「目指す」意識は全くありませんでした。社内の制度として認定の条件を満たしているものがあったので、申請書類を出して認定を受けたものばかりです。
東洋開発は今年で30周年を迎えました。私が入社した24年前を振り返っても、例えば子どもが熱を出したら帰れるような風土はありました。というのも、創業者である先代の社長とその奥さんの二人がオーナーシップを持って経営されていましたが、お二人の子どもがまだ小さかったんです。子どもが3人いらっしゃって、会社の奥で過ごしていることもあり、まだ仕事終わらないのかな、とオフィスを覗きに来ることもよくありました。社長の他にも子どもがいる社員がいて、その人たちも、子どもが熱を出したら普通に帰っていました。その頃からすでに「お父さん、お母さんが働きやすいように」、という文化が醸成されていたように思います。
とはいえ、当時から今と全く同じ制度だったわけではなく、遅刻や早退、欠勤も今ほど手軽に取れていたわけではありません。今は、遅刻早退はLINEワークスで連絡すればOKですし、1時間単位の時間休も自由に取ることができます。社内のシステム上は、休みの申請がされると上長が承認をする仕組みになっているため、便宜的に承認作業をしていますが、今の手軽な申請方法は、業務システムの先を行く仕組みだと思っています。
■働く時間は社員が判断し、気持ちよく休む
どうせ休むのであれば、最初から抵抗なく、気持ちよく休んでもらいたいからです。遅刻や早退も、LINEワークスをポンと送るだけでいいと思うんです。
例えば、朝起きたら熱があったので会社に電話をして「熱があるので休ませてください」と伝えたとします。その時に、上司から「じゃあ今日の現場は誰が行くわけ?」と問われるようなことがあると、その後は熱があっても言えなくなるじゃないですか。
自分の体調だけでなく、子どもを病院に連れていきたいけれど、遅刻や欠勤をしづらいので、親や家族に頼まなきゃいけない、そのせいで家庭内がギクシャクしてしまうこともあるかもしれません。もしかすると、始業に間に合わせようと焦って運転して交通事故につながる、なんてことも起きるかもしれません。働く時間はそれぞれの社員が判断すればいいことなので、会社として承認するプロセスは不要だと思うんです。
■オールラウンダーを目指さず、個性を尊重する
社員を画一的に管理するのではなく、社員の個性を尊重して仕事をしてもらうために、自由であることを大切にしています。人間の個性とは尊いもので、個性があるからこそ人類がここまで文明を発展させてきたわけです。逆に全員同じだったら、ここまでの発展はなかったと私は思っています。
社内の仕組みは今も変化し続けていて、最近では月に1回の全社会議を廃止しました。この会議では、数字の共有や、成果の発表・表彰が時間の多くを占めていたのですが、それらを止めることにしました。
こうした表彰は、どうしても営業などの、成果が表に出て来やすいポジションの人が評価されがちです。元々は私も営業の人間だったので、営業が契約を取り、評価されて報奨金をもらうことは自然なことだと思っていましたが、最近では少し違和感を覚えるようになりました。
実際は、裏方のサポートをはじめ、さまざまな部署が有機的に協力しあうことで、お客さまに喜んでいただき、結果として売上を得られるわけです。社員みんなが普段から地道に努力しているのに、契約が取れたことだけを取り上げて表彰をするのは、不要な波風につながるだけだと考えるようになりました。
限られた時間の中では、どうしても表彰される人が偏ってしまいフェアにできません。それならば、わざわざ全社会議で表彰せず、それぞれの努力を個別に労う方がいいだろうと考えています。
人材育成に関しても、昔はオールラウンドプレイヤーを作ろうとしていました。しかし、誰でも苦手な分野があります。全部の分野で80点を目指そうとすると、良さが活かされなかったり、得意じゃない分野で不必要なストレスがかかってしまい、不健全です。例えば、弊社の管理する物件で、担当の社員がさまざまな案件の交渉や調整で苦労しているのであれば、私が出てさっさと交渉を終わらせて、通常業務を頑張ってもらう、それでいいと思うんですよね。
■健康経営の秘訣は「無理をさせない」
私は、多い時には一日4万歩くらい歩いています。先日も、出張で東京へ行った時に、天空橋駅で降りて新宿の打ち合わせ場所まで歩きました(編集部補足:およそ19km)。社員から見ても、「社長が痩せた」「前より健康そうに見える」など、分かりやすい変化があったので、他の取締役や社員も刺激を受け、結果として歩く人がかなり増えました。
また、私は昔ボクサーだったのですが、高校時代にボクシングをやっていた社員2人と一緒にボクシングジムにも通っています。一人は体重が100kg以上あったのですが、4カ月間でおよそ75kgまで減りました。生活スタイルの変化も大きいですし、それに伴って仕事のパフォーマンスも上がっていきました。
会社のことでいえば、カイロプラクティックの先生を呼んで、毎月社員全員に施術してもらっています。そのような形で社員の健康に寄与できているんじゃないかなと思いますが、一番健康に重要なのは無理をさせないことですね。ちょっとでも体調が悪かったら、「休め休め!」ってすぐに休ませています(笑)。
■社員は自由な方がいい
他社では、利益を出すためには社員をちゃんと管理しなくてはならない、と考えているのかもしれません。他の経営者の方と話した中での私の想像ですが、社員を自由にさせてしまったら収拾がつかなくなるんじゃないか、という恐れの気持ちがある人もいると思います。
会社を存続させるためには、売上も利益も必要ですが、そこさえ外さなければ、社員は自由な方がいいと私は思っています。
東洋開発は副業もOKです。例えば、東洋開発の関連会社がコンテナホテルを運営しているのですが、清掃業務の人手が足りない日が発生しそうなときには、社員から副業を募ることもあります。
私もコンテナホテルの清掃をやっていますが、やっているうちに練度が上がっていくのが分かって、気分も乗ってきます。休日の30分だけ清掃をやろう、みたいな感じで効率のいい副業にすることもできますし、知らなかった自分の得意分野を見つけるきっかけになるかもしれません。
副業は、基本的には何でもOKと言っていますが、まずは私に相談に来ることが多いです。「何ができる?」「何もできないです」なんて会話をしつつ、話をちゃんと聞いてみると、インスタをバンバン更新しているので、関連会社のインスタを担当してよ、と副業を紹介することができるわけです。子どもの学費が必要で、なんて相談があれば、その社員の個性を生かして簡単に稼げるように、私が副業を斡旋します。仕事が終わった後に3時間パートタイムで働くなんて大変ですからね。
また、副業とは違いますが、社員が地域の活動、例えばPTAや自治会などで何らかの役割を引き受けるときは、必要になる資料の準備や、飲み会の設定など、リーダーとしてすべきことは、仕事として行ってOK、領収書を出せば会社が費用を負担すると言っています。
東洋開発の社員は、それが仕事であろうと、地域の活動であろうと目の前のやるべきことに真面目に向き合って手を抜かないので、周りの人たちの信頼を勝ち取ることが多いんです。そしてその社員が信用されることで、会社の評価にもつながります。それが、「誰々さんがアパートを借りようとしていて」とか「使ってないから実家を売却したくて」のような、仕事につながる相談になったりするんです。営業経費として考えたら、実は費用対効果の非常に高いお金の使い方だと言えます。
経営者は外に向かってチャレンジし続け、会社の中のことには細かく口出ししたり、むやみに管理しようとしない。社員には自由に仕事をしてもらう。そうすることで、私や社員と触れ合った会社の外の人たちが元気になります。そんな風に周りにインパクトを与え続けていきたいですね。