「人を大切にする会社」って
どんな会社

株式会社アポロガス

株式会社アポロガス
企業情報

・事業内容:グループ子会社を含め、LPガス、灯油、重油、太陽光発電、水素の供給、機器販売事業、通信事業、住宅・給排水設備などの施工事業を行う
・創業:昭和46年(1971年)
・本社所在地: 福島県福島市飯坂町字八景6丁目17番地
・従業員:61名(2018年3月末)
・平均年齢: 41歳(2018年3月末)
・企業ホームページ:http://www.apollogas.co.jp/

企業情報
Point 1
地域インフラの担い手
Point 2
プロジェクトを通じ、挑戦の機会が多数
Point 3
新規事業への積極的な取り組み

まちのガス屋さんとして創業したアポロガス。2011年の東日本大震災を機に、地域の基盤であるエネルギーを支えたいという思いを深め、事業投資を重ねてきました。結果、今ではグループ従業員数60名の規模で9つもの事業を営む、地域の総合インフラ企業へと成長。その事業戦略の核にあった「仕事で人を育てる人材教育」についてお話を伺いました。

TOPインタビュー

TOPインタビュー

株式会社アポロガス
専務取締役 相良 元章氏
1966年生まれ。大学卒業後、神奈川県鎌倉市の骨董屋さんに就職。1994年に住宅設備を扱うグループ子会社・アレックスに入社。2000年にアポロガスへ転籍となる。現在は同社専務取締役に加え、子会社3社の代表取締役社長、1社の専務取締役を兼任する。

■ガスや電気は、地域を一番下で支える土台である

2011年の東日本大震災は、やはり貴社にとって大きな出来事だったのでしょうか?

もともと、ガスや電気は暮らしに欠かせない土台だという自負は皆が持っていました。特にそれを痛切に感じたのが、あの震災です。3月のまだ寒い季節、暖をとるにも、お湯を沸かし温かい食事をするにもガスは必要です。また、ガラスが割れた危険な住宅で掃除機を使いたい、安心して眠れる場所が欲しいなど電気へのニーズも大きいものでした。そんな、できて当たり前のことが難しくなった中で、改めて私たちの事業は地域の一番根っこの部分を支える仕事なのだと感じました。

 

震災後、業種によっては激減した仕事もありました。例えば新聞やネットなどへの広告出稿は、必死にビジネスを立て直している最中の企業にとっては、緊急度が低いものです。そのように経済に余裕があって初めて回る産業とは違い、ガスや電気は無くてはならない社会のインフラなのです。

 

個人的な話ですが、実は同時期に交通事故にもあいました。病院で落ち込んでいたら、先輩経営者にこう言われたのです。「お前は震災でも事故でも死ななかったのだから、何か使命があるはずだ。震災後、どう行動したかが後々問われる。100年後、後輩から評価される仕事をしなさい」。経営陣として、地域の未来をつくる仕事をしなければならないと感じました。

 

地域経済を支える強い人材を作らないといけない。特に全ての土台であるインフラ企業なら、死ぬ訳にはいかない。数十年後も生き残るビジネスをやっていくこと、そしてそれについていける人を育てることが経営陣の使命だと、改めて考えました。その後7年間で5事業を立ち上げる推進力は、この時生まれたのかもしれません。

■よりクリーンなエネルギーを広めよう

■よりクリーンなエネルギーを広めよう

まず行ったのは住宅施工ですね。一部上場企業である神奈川県のハウスメーカーと共に仮設住宅を作り、ガスと一緒に供給を行いました。2012年からは、間に合わせの仮設住宅ではなく、自分の家を再建したいというニーズに応え新築住宅の建設も行っています。

 

さらに震災後、腰を据えて取り組むようになったのがクリーンエネルギーです。もともと私たちはプロパンガスの販売を皮切りに、1990年代からは電気の供給も行っていました。しかし日本における電気発電量の3割は原子力発電によるもので、リスクが伴う商材です。原発事故を経て、私たちはインフラ総合企業として、もっとクリーンなエネルギーを広めていく責任があると感じました。具体的には震災前から取り組んでいた太陽光に加え、バイオマス、水素、新電力といった事業に新規投資を行い、子会社化しています。

 

■田舎は『駅前食堂』のようなもの。多様なニーズに応えることが地域ビジネスの鍵

短期間に多くの新事業を展開し、混乱はなかったのでしょうか?

7年で5事業も増えた訳ですから、あまりのスピード感に、「ウチはどこに向かうんですか?」と言った社員もいましたね(笑)。

 

でも、震災復興の旗振り役として地域の暮らしを支えるためにも、更に地域を支える社員の雇用を数十年後も守り続けるためにも、事業の多角化は重要なことだと思います。田舎のビジネスは、言ってしまえば駅前食堂。都会と違って、みんなカレーを食べにカレー屋に、パスタを食べにイタリアンには行きません。人口が少ないので、それぞれの専門店と言うものが存続できないのです。みんなが駅前食堂に行って、カレーもパスタもラーメンも食べるのが、地方。ひとりひとりのさまざまなニーズに対して、多様なサービスメニューを揃え応える「何でも屋」や「駅前食堂」になることが、地域ビジネスで収益力を高める鍵なのです。

 

事業の多角化を行う上で、後押しをしたのが「未来を見て挑戦する」というアポロガスのもともとの気質でした。例えば私たちは1980年代から、『ガスの24時間保安監視』というガス漏れや異常がないかを定期的に把握できるシステムを運用していますが、これは全国で見ても先進的な取り組みです。最近ではこれを応用し、高齢者宅などで24時間以上ガス使用がないと警告が出る見守りシステムも作りました。昔から先を見据え新しいことをやる気風があるんです。

 

震災後の新規ビジネスでも、自ら「やりたい」と手を挙げる社員がいました。これまで挑戦を重ねてきたので、やる気もやれる技量もある社員が育っていたことは大きな追い風でしたね。例えばガスの保安監視にはIT通信技術が必要となりますが、私たちは1980年代からIT通信領域の技術者も採用していました。エネルギーだけではなく、地域の総合インフラとして住まいや設備・通信環境ビジネスにも着手した今、この分野の知見があったことは成長の大きなアドバンテージとなっています。

 

■幅広い仕事が、数十年後も生き残る人を育てる

新しい取り組みに対し「やりたい」と手を挙げる社員が多いとのことですが、なぜ挑戦できる社員が多くいらっしゃるのでしょうか?

「挑戦する場」を設けているからだと思います。言ってしまえば、変化や挑戦に慣れているんですね。

アポロガスは、それぞれの社員が入社したタイミングから、どんどん変わってきています。ガス屋だと思っていたら太陽光ビジネスを始めたり、常に新しい事業や、新しい仕事が生まれます。「狭く深く、ガスのみを頑張りたい」といった社員を別の部署に異動させることはありませんが、可能性のある社員には面談などで「この部門でこの技術を伸ばさない?」と声をかけます。最近でも新電力事業に2年目の小野寺という社員を抜擢しました。頑張っていますよ。この後インタビューに登場するので読んでやってください(笑)。

 

新会社への抜擢は挑戦の場として大きなものですが、小規模プロジェクトも定期的に用意しています。例えば新技術に関するプロジェクトでは部門横断でメンバーを集め、外部技術者や学者、税理士、司法書士などと共に議論を重ねます。メンバーは通常業務と並行し、新しいミッションに挑む中で、いつもはあまり関わらない他事業部の人の意見に「そんな意見もあるんだな」と刺激を受けたり、外部専門家達の知識に圧倒されるようですね。

 

新しいことをすれば、新しい情報や客観的な視点が得られます。プロジェクトや挑戦の場を通じて「自分もこの技術の資格を取りたい」と意欲を燃やし、結果的に1人で多領域の資格を持つ社員がたくさんいることはアポロガスの特徴ですね。また逆に「他部門や外部専門家に比べると自分にこの領域は荷が重い。今の仕事をもっと深めていこう」と気づき今の仕事により力を注ぐ社員もいます。

 

このように社員は大なり小なり、常にさまざまな挑戦をしています。社会やニーズが変わり、新しいビジネスに取り組まないといけないという時に、このような挑戦を重ねた経験があれば自信をもって取り組めるのだと思います。

 

■挑戦を後押しするのは「人の役に立ちたい」という思い

ポジティブで変化に強い社員が多いとのことですが、皆さんひとりひとりはどのような思いで新しいことに挑んでいるのでしょうか?

全ての起点は「人の役に立ちたい」という思いだと思います。

京都に成基学園という学習塾があります。なかなかのスパルタ校で、入塾すると特進クラスでは2週間ほどこんなお題を掲げられます。「あなたはなぜ勉強するのですか?」。毎日考え続けると、ほとんどの子どもたちはある答えに辿り着きます。それは「人の役に立つため」という回答です。

 

多くの人は自分のためだけには頑張れません。家族や地域や誰かのために、価値のあることをしたい、そう思えるから頑張れるんだと思います。地域のインフラという仕事は、ひとつのミスも、安全を損なうことも許されず、決して楽な仕事ではありません。でも地域の砦になりたい、皆のためにやりたいと思うからこそ日々の仕事を頑張れるのです。

特に震災後、アポロガスには「地域のために頑張りたい」と言ってくる学生が増えました。その多くは福島出身で、仙台や東京の大学に出たがやはり地域のために頑張りたいという方です。こんな思いでうちを受けてくれる学生が増えたことはとても嬉しいですね。

 

弊社の人材教育では、まさにこの思いを大事にしています。地域のお客さまや、一緒に頑張る仲間のために役に立ちたいという心。事業がこれだけ多いと、それぞれ各部署での仕事に必死になります。でも事業同士の積極的な連携や横断プロジェクトを通じ、お互いを気にかける力、協力しあう優しさ、周りを大事にする心のようなものを育てていきたいと思っています。

 

こうやって人のために頑張り、皆で成長を遂げ、その結果より地域を深く支える総合インフラグループとして根を張っていくことが私たちの夢です。今の新人たちももっと力をつけて、やがてはグループ子会社の社長として力を奮うことで数十年後も地域を支え続ける、そんな会社でありたいと考えています。