レポート

保護者に伝えたい、「24年卒以降の学生」のための地方就活ガイド

■旧来の就活を知らない「24年卒以降の学生」は、出遅れる可能性が懸念される

来年2024年3月に4年制大学を卒業する「24年卒以降の学生」は、大学入学以来、コロナ禍のもとで大学生活を送ってきた世代です。講義はリモートが中心になり、サークル活動も自粛が続きました。学生同士のコミュニケーションも難しい環境下だったと言えるでしょう。

そのため、旧来の就活スケジュールが分からずに、就活に出遅れる学生が増えることが懸念されます。そこで今回は、「24年卒以降の学生」の保護者のみなさんへ、コロナ禍の学生の就活状況とUターンを含む地方就活の変化についてお伝えします。

特にUターン就職も視野に入れるお子さんをお持ちの方は、昔とは環境が変化していますので、下記の最新情報を参考にしていただければと思います。

■友達の影響を受けにくいからこそ懸念される「24年卒以降の学生」の就活

都市圏の学生に対して地方就職の就活支援を行っている私たちLO活事務局では、この1年間の「23年卒学生」の就活支援に関して、これまでとは異なる傾向を感じています。

それが、「旧来の就活を知らないからこその出遅れ」と「企業の動き出しの早期化」です。
「23年卒学生」は、大学1年生の時は通常の学生生活を送ってきましたが、2年生以降はコロナ禍でリモート講義が中心となり、友達との交流機会が減った世代です。

この1年間、そんな「23年卒学生」の地方就活を支援してきた私たちは、出遅れて困っている学生の多さや、企業の選考の動き出しが水面下で早まっていることに気が付きました。

本来就活は、3年生の3月に企業の採用情報が公開されて、ナビサイトなどでエントリーすることでスタートします。4年生の6月頃からは採用選考がはじまり、この頃に内々定が出はじめます。

一般的な就活スケジュール

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しかし、「23年卒学生」の中には、4年生の夏頃になって「まだ何もできていないのですが、何をしたらいいですか?」と尋ねてくる学生が一定数いました。

旧来は学生生活の中で、サークルの先輩から情報を収集し、学食などでの会話から同級生の進捗を共有することで、お互いに意識を高め合ってきました。しかしコロナ禍の学生生活で、その環境が失われているという可能性があります。

子どもの就職に親は口を出すべきではないとお考えの方も多いとは思います。しかしコロナ禍の環境変化により、旧来はできていた「友達同士での就活状況の共有」が難しくなっていたり、多様な価値観により就活プロセスも多様化の傾向がみられることも事実です。このことを前提に、保護者のみなさんからも少し声掛けをしていただいたほうが安心ではないでしょうか。

そこで、近年大きく価値観が変化している「地方就職」に関しても、保護者のみなさんに知っておいていただければという情報をいくつかご紹介します。

■地方就職希望者は6割もいる!?

まずは、学生の「地方就職」への関心が高まってきているという状況についてです。
就職情報会社・マイナビが2022年に実施した学生アンケートで、「地元就職の希望意向」を質問した際の回答結果が下記になります。

※マイナビ「2023年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」より引用 <br />
<br> ※マイナビ「2023年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」より引用

23年卒学生では、地元(Uターン含む)就職希望者が62.6%で2年連続増加しました。

リーマンショックの影響が強かった2010年代前半は、黄色の折れ線グラフ「有効求人倍率」が低く、そもそも内定を取ること自体が難しい時代でした。そのため、競争倍率の高い大手企業を諦めて地元にUターンする希望者が増えました。その結果として、2010年代前半は、薄いブルーの棒グラフ「大学(大学院)に進学した際」の地元就職希望率と、濃いブルーの棒グラフ「現時点」の希望率の差が大きくなっています。

その後「20年卒学生」に向けて、「有効求人倍率」の復調とともに「地元就職希望率」は減少しました。しかし、直近2年間は「地元就職希望率」が上昇に転じています。その背景には、どのような意識があるのでしょうか。

学生自身は「地元就職を希望する理由」として、下記のようにアンケートに回答しています。

※マイナビ「2023年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」より引用 <br />
<br> ※マイナビ「2023年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」より引用

「両親や祖父母の近くで生活したいから」が最多で、昨年から7.9ポイント増加。「実家から通えて経済的に楽だから」も、昨年から10.3ポイント上昇して続きます。少し考え方が甘いのではないかという保護者の声も聞こえてきそうです。

ただ今の学生は、コロナ禍の影響で学生時代に十分なコミュニケーションが取れず、社会に出ることへの不安がこれまでの世代以上にあるのかもしれません。また、生活必需品の値上げが続く経済状況下において、一人暮らしへの不安が背景にあるようにも見受けられます。

そのため、「地元での生活に慣れているから」も昨年より6.3ポイント増加しています。これまでに経験したことのないような大きな社会変化の中で、家族と暮らすことで精神的にも経済的にも負担を減らしたいと考えているのかもしれません。保護者のみなさんが学生の頃とは、大きく価値観が変わってきていると感じられます。

■若者が地方就職で「増収」になる?

保護者の方々の中には、「地方企業は収入が少ないのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。この点も、近年変化が見えはじめています。

人材会社系のシンクタンク・パーソル総合研究所の2022年調査には、地方就職により20~30代の若手では、移住時に「増収」となるケースが多くなるというデータがあります。
地方移住した際の年収の変化を質問すると、下記のような結果が出ました。

移住した際の年収増減(年代別)

※パーソル総合研究所「地方移住に関する実態調査(2022年)」より引用 <br />
※調査対象は日本全国の地方移住者のため、必ずしも移住前が首都圏の地方移住とは限らない。 <br />
<br> ※パーソル総合研究所「地方移住に関する実態調査(2022年)」より引用
※調査対象は日本全国の地方移住者のため、必ずしも移住前が首都圏の地方移住とは限らない。

どの年代も55~60%程度は、移住前後で年収に変化はありません。
しかし50~60代では、年収が増えた人が15%程度なのに対して減少した人が25%以上と、減収となったケースが多いことが分かります。

一方20代では、25.8%が増収・15.1%が減収と回答しており、若者に関しては地方移住により収入が上がっているケースの方が多いことが分かりました。

■地方でこその魅力にこだわった先輩移住者の声

このように、地方に目を向ける若者が増加し、地方での収入も確保できそうだとなると、気になるのは「地方での暮らし」ではないでしょうか。

私たちは、地方就職を希望する人に向けた本サイトの中で、若者に対して移住前後の暮らしや意識の変化を取材しています。それらの中で特徴的に感じるのは、「地方だからこその良さ」を選んでいる移住者の姿です。取材記事の中から、いくつかご紹介します。

 

【仕事内容よりも働く場所を優先してUターン就職を決めた渡邊愁さん】

大学時代を横浜で楽しく過ごしていた渡邊さんは、都会は自然が少なく人も多過ぎるという理由で、地元・茨城でUターン就職することを決めました。「職種や仕事内容」よりも「どこで生活していくか」を優先したのです。ただ、大学在学中にNPO内部組織を立ち上げた等の経験がありながら、就活では自己分析に苦戦します。そこでLO活の個別相談や新卒応援ハローワークなどを活用しながら、「地域に役立つ仕事」という軸を明確にして、今の茨城県水戸市の福祉施設へ就職。現在は希望していた、児童福祉・障がい者福祉の仕事に邁進しています。
▶渡邊さんの記事はこちら

 

 

【旅で訪れた尾道を思い出し、移住を決めた保川あづみさん】

東京の建設会社で働いていた保川さんは、「自分にしかできない仕事をしたい」と転職を考えていました。そんな時、担当した物件の近くに広島県のアンテナショップを発見。以前旅をして好きになった街・尾道を思い出します。そして「好きな街で暮らしてみたい」と、広島移住に向けて動き出しました。尾道には建築関係の会社が少なかったため、移住サポートセンターを活用して隣の福山市の建設会社へ転職。今は、好きな街で注文住宅のコーディネーターとして、お客さまの要望を聞きながら家づくりのプランを考える仕事に喜びを感じているそうです。
▶保川さんの記事はこちら

 

【幸せな時間をとは何か?に向き合い、愛媛県松山市へ移住した村上慎さん】

新卒でアパレルメーカーに就職し、首都圏の配属先で好成績を上げていた村上さんは、ある日大切な人との別れを経験をします。働く気力を失い、車で旅に出る中で、友人とクラフトビールを片手に焚き火を囲んで語り合っていた時、これこそが自分にとっての幸せな時間であると気が付きます。そして『クラフトビールに携わる仕事がしたい』と愛媛県松山市でビール醸造所とアパレルショップを運営する会社へ転職。海・山・川と町が近く、車で30分圏内に何でもあるコンパクトで便利な松山で、奥さんと一緒に、時間的に余裕のある生活を楽しんでいるそうです。
▶村上さんの記事はこちら

 

このように、「地方だからこその価値」を見出して、「自分らしく生きる」ことを選ぶ若者が増えてきているのです。

その他、地方移住者へのインタビュー記事はこちらをご覧ください

■親からの声掛け・支援がある程度必要なケースも

「24年卒以降の学生」は、コロナ禍で長く学生生活を過ごしてきた世代として、旧来の就活のスケジュールを把握しにくかったり、友達同士で就活の状況を共有する機会を失っていたりする場合があります。

最近は、全国の自治体が開催する「就活セミナー」に、親子で参加するケースも増えています。もちろん、お子さんの就職に親の主観を押し付けるということではありません。これまで紹介してきたような環境の変化に、お子さん自身も気付けていないことが多いからです。

「就活について、こんな記事を読んだんだけど」と、お子さんと話をするきっかけとして、本記事を利用してみてください。お子さんの意識が、適切なタイミングで、働くことや就職活動へ向いているかどうかを確認しながら、併せてご自身の仕事に対する考え方や就職活動の経験談などを聞かせてあげることができれば、双方にとって有意義な時間になるのではないでしょうか。

また、お子さんが就活に迷ったり悩んだりしている時には、私たちLO活の無料個別相談を活用してみてください。そして、本サイトには、前述で紹介した先輩の声をはじめ、地方就職に役立つ情報がたくさん掲載されていますので、ぜひ参考にご覧ください。

 

※この記事に掲載されている情報は、2023年3月にサイトに公開した時点での情報です。