「人を大切にする会社」って
どんな会社

株式会社髙政

株式会社髙政
企業情報

・事業内容:かまぼこをはじめとした練製品、魚加工品、すり身調製品の販売・卸事業
・創業:昭和12年(1937年)
・本社所在地:宮城県牡鹿郡女川町浦宿浜字浦宿81丁目36番地
・従業員:216名(2018年9月末)
・平均年齢:37歳(2018年9月末)
・企業ホームページ: https://www.takamasa.net/

企業情報
Point 1
地域の産業を支え、復興の旗振り役となる
Point 2
自分で考え、動き、価値をつくる社員たち
Point 3
成果・目標を大事にする人材教育

2011年の東日本大震災で、甚大な被害を受けた宮城県・女川町。山奥にまで津波が到達し、建造物の7割が全壊。1万人ほどいた住民の1割が帰らぬ人となりました。類を見ない被災をしたこの地域の筆頭企業であったのが、かまぼこ製造を営む髙政。地域の産業の牽引役としてどのように事業経営を行ってきたのか、その経緯を伺いました。

社員の声

井田 志穂さん

入社8年目の26歳。販売部門所属。4月に新卒入社を控えた2011年3月に東日本大震災を経験。入社3年目に製造部門の男性と職場結婚し、3歳の娘を育てている。現在は産休・育休を経て時短勤務中。

髙政に入社していかがですか?

内定をもらった年に、震災がありました。実家は石巻の山側で大きな被害は無かったのですが、ようやく電気がついてTVで状況を確認した時、髙政がかまぼこを配っているというニュースを見たんです。女川の深刻な食料不足に対応するため、地震被害があったかまぼこ製造機を突貫工事で直し、中部電力から緊急電源車両に来てもらい製造したかまぼこ10万枚以上を配ったという話でした。一番被害が大きいと言われる町で、誰もが自分たちのことで必死なのに、皆のことを考えられる会社なのだと、内定者ながら誇らしかったです。

 

入社式は5月でした。まだ瓦礫が残る場所を毎日通勤しましたね。髙政は直営店、全国のスーパーやデパートなどへの商品卸といった形で練り物製品を販売していますが、各店の営業再開のスピードもまちまちですし、製造ラインの対応も随時対応という感じで、慌ただしい状況でした。新人で何も分からないながら、とにかく目の前のことに必死で取り組みましたね。

 

周囲では職場が倒産したり、解雇されたりという人も多かったので、働ける場所があるって実はすごいことなのだなと思いました。

女川をどう支えていきたいですか?

宮城では「髙政」は安心できる有名ブランドになりました。女川の看板企業として、地域を支えていくというプライドは大きいですね。

 

私は女川の本店にて販売業務を担当していますが、お客さまは宮城だけではなく、関東からもいらっしゃいます。商品の味には自信があるので「女川に来たら必ず寄るのよ」「ここのかまぼこしか食べれないわ」という常連さんに会うと嬉しいですね。県外からのお客さまには、震災当時のことを聞かれる方も多いです。私は震災時は石巻にいたので女川の詳しい状況は知らないのですが、被災し家を流された夫の話を聞いて、女川の当時の姿をお伝えしています。

 

今はまち全体がここまで綺麗になり、外からの人も増え活気が出たので嬉しいですね。女川は素晴らしいまちなんだぞという誇りを持って、女川の美味しい魚をこれからも全国に届けていきたいです。

髙政は働きやすい職場ですか?

みんな想いやりがあり、働きやすい職場ですよ。私はいま時短勤務で働いていて、16時には保育園への子どものお迎えで帰宅します。急に子どもが熱を出して休みをもらうこともあるのですが、周りはとても優しいですね。販売部門は比較的年齢が若く、育児経験者は少ないのに子どもの急なトラブルにも積極的に対応してくれます。

 

周囲のことを理解しようという風土もありますね。販売部門で始まった取り組みで、販売部門のさまざまな仕事を経験しようというものがあるのですが、レジや接客、在庫管理などに加え工場見学のアテンド担当も体験しました。夏場の暑い中、工場で力仕事を頑張っている姿を見ると、製造部門の方に対する尊敬も湧きます。工場で働く夫に対しても、以前より「すごいな」と思えるようになりました(笑)。

 

お互いの仕事を知れば、相手がやりやすいように仕事を進めようといった配慮も生まれます。雰囲気の良い職場で働けているのはとても有難いことですね。

 

泉田 圭太さん

入社11年目。2008年よりサッカーチーム・コバルトーレ女川の選手として女川町へ。7年間サッカーの練習と製造部門での仕事を並行する。2014年よりサッカーチームを引退。同時に29歳にして当時最年少の製造部門・課長代理に抜擢され、現在も同部門を牽引している。

髙政に入社していかがですか?

実家は栃木なのでまずは海が珍しかったですね(笑)。企業のサッカーチーム所属だと正社員とは線を引かれることも多いですが、髙政は人が温かくて「最近どうや」と家族のようにご飯につれて行ってくれます。プライベートでは、地元女川の女性と2011年に結婚しました。今では小学校1年生と、4歳の女の子がいます。人と自然に惚れこんで、気づいたらすっかり女川に居ついてしまいました。

 

仕事は面白いですよ。かまぼこづくりには、正解がありません。気温や湿度の変化で味がすぐに変わるので、安定した品質を維持するのが本当に難しい。毎日食感検査というものがあるのですが、問題があると「なぜ味が違うのか」「何をどう調整すればいいのか」と考え試行することの繰り返しです。奥の深い仕事だなと思います。

あなたにとって「働く理由」とは何でしょうか?

「必要とされたい」というのが一番の目的かもしれません。仲間にも、会社にも、お客様にも必要とされたいです。そう思えるようになったのは、この数年のことですね。20代の頃は「サッカーがしたい」「生活基盤を築きたい」という思いしか無かったです。

 

髙政に来る前、別のサッカーチームに所属していた時に、戦力外通知を受けたことがあります。当時は、今よりもサッカー重視の生活を送っていました。倉庫作業など一部仕事を任せられていましたが、言われたことをやるだけ。必要とされない歯がゆさを感じましたね。

 

漠然と仕事をするだけでは、何も変化が起きません。もっと製造の段取りや効率を上げたい、営業時間内にいくつ仕事をこなそうと考えて初めて、成長できます。今は蒸しかまぼこの製造ライン長をしているのですが、年に一度上長がライン状況をチェックしてくれる機会があります。「鮮度向上のためにはこの順番を工夫した方がいい」など意見をもらうと奮起して、次の1年で徹底的に粗を潰します。次の年、その上長に何も言われないと「やった!」とガッツポーズをしますね。

 

もっと価値のある自分になること、もっと「泉田がいて良かった」と多くの人を納得させるために日々小さな改善を続けていきたいと思います。

 

女川をどう支えていきたいですか?

いいかまぼこを作って、女川の味を世の中に広めていきたいですね。

去年天皇杯を取った「御膳蒲鉾かき」は、地域の魚と牡蠣を1つで楽しめる商品です。鼻に抜ける牡蠣の香りと素朴な味が活きた商品なのですが、気付けば賞レースに乗り、農林水産大臣賞を取ったと思えば、ついに日本一の天皇杯賞まで獲得してしまいました。社員一同、大興奮でしたね。私個人としても、サッカーでは獲れなかった天皇杯を獲れたということで感慨深かったです(笑)。

 

今は商品開発チームで、若年層に受ける商品を考えています。かまぼこの消費者は比較的年齢が高く、もっと多くの人に女川を知ってもらうためには若い人に食べていただくことが課題だと感じます。髙政と言えば重厚感・高級というブランドイメージがあるのですが、もう少し利用シーンの手軽さやインスタ映え、パッケージの可愛らしさにも力を入れていきたいですね。商品開発は面白いですよ。各部門からメンバーが集まり議論しているのですが、製造現場にいるとどうしても現実的な考えが先に立ち「今の製造ラインに追加しやすい商品とは」「その食材を使うと効率やスピードが落ちるのでは」などと考えがちなので、他部署のメンバーの自由な意見はとても刺激になります。

 

皆で知恵を絞って、女川の食をもっと多くの人に実感してもらえるような商品を作る ことが目下の目標です。