イベントレポート(vol.5)
『キャリアにinnovationを~地域×自分=新しい未来につながる第1歩を~』
未来につながるキャリアのつくり方セミナー
2019年のLO活イベントシリーズ第5回は、11月27日(水)に東京神田のthe Cで行いました。
今回のテーマは「キャリアの作り方」。
今は、大きく価値観が変化している時代です。かつて会社員は「出世するのが輝かしいキャリア」とされていましたが、現在は自ら出世を希望しない若者が増えています。厚生労働省の平成30年度「労働経済の分析」では、61%もの社会人が「出世したくない」と答えています。
では今の若い世代は、どのように自分のキャリアを築いていけばよいのでしょうか?
きっと、そこに悩んでいる20~30代が多いのではないかと思います。実際に私たちLO活のサービスを利用している若い世代でも、「自分自身が社会に貢献している実感が欲しい」という理由で地方移住を決めた方も多くいらっしゃいます。
会社員であっても副業が可能になったり、週休3日で自由に使える時間が増えたり、自分のキャリアの選択肢は増えているけれど、「どのように選択すべきか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回のセミナーで選んだテーマが「キャリアの作り方」なのです。
ゲストにお招きしたのは、人材会社で人材派遣の営業などを経験後、現在は新規事業の立ち上げを支援するお仕事をされる傍ら、社内の週4日勤務(週休3日)制度を活用し、地方創生などの仕事も行っているパラレルワーカー山口順平さんです。
「地方移住」という選択肢も含め、若いビジネスパーソンが、どのように自分の将来のキャリアを考えればよいのか、そんなヒントをつかんでいただくためのセミナーです。
【ゲスト・プロフィール】山口順平さん
パーソルイノベーション(株)新規事業創造プログラム「Drit(ドリット)」企画担当
NPO法人 湘南スタイル「湘南100CLUB」リーダー
国家資格キャリアコンサルタント
「社会に価値あるものを残す」という旧インテリジェンスの企業理念に共感し2002年入社。人材派遣事業部での営業を経て、2011年に公共事業部へ。プロジェクトマネージャーとして、地方自治体からの委託事業として若者の就労支援を行う。
2016年に長野県塩尻市と、東京のビジネスマンをつなぐ「第2のふるさとシェアリング」を立ち上げ、2017年には自身が暮らす神奈川県茅ヶ崎市で、誰もが自分らしくいられる社会を目指す、茅ヶ崎市市民活動団体「らしくる」を立ち上げる。同年、会社の制度を利用して週4日勤務を申請。週1日は地域活動に注力するように。
2018年には、NPO法人 湘南スタイル「湘南100CLUB」を、「かながわボランタリー活動推進基金21事業」としてスタート。
2019年9月、公共事業部から異動を希望して現職。
社内表彰される人材でも、キャリアには悩むもの
今回のゲスト・山口さんは社内の人事制度を活用した、週4日勤務(週休3日)のパラレルワーカー。会社員としての本業の他に、地方創生などの仕事も行っています。
しかし、そんな山口さんも順風満帆に今のキャリアにたどりついた訳ではないといいます。
新卒で人材会社の旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に就職し、人材派遣事業部での営業を担当後、30代半ばで管理職となり社内表彰制度「ベストマネジャー賞」を受賞します。
この経歴を見たら、多くの方が「順風満帆なキャリア」と感じるのではないでしょうか。
しかし山口さんは、この受賞時期を「光栄でうれしかったものの、目標を見失っていた時期」と振り返ります。
マネジャーとして会社から評価してもらう一方で、「予算がないから仕方ない」とか「あの人が悪い」とか自分が他人のせいにし始めたことに危機感を感じはじめたそうです。
情熱をもって仕事をするにはどうすればいいのかと、転職も考えるようになったそんな矢先、胃腸炎にかかって4日間の入院…。
点滴のチューブにつながれて病院のベッドに横たわり天井を見つめながら、「自分は何をしたいんだっけ?」と考え、「自分はここで動かないと一生このままだ。一歩飛び出そう」と決めたそうです。山口順平さんのキャリアの背景は、こちらの記事をご覧ください。
ワーク1「自分のタイプを知ろう」
そんな山口さんから、参加者に配布されたのがワークシートです。
縦8マス×横6マスの計48マスに、さまざまな価値観などが敷き詰められた用紙。その48項目の中から、自分に当てはまるものに〇をつける。そんなワークシートです。
ワークシートの横6列は、6つの価値観のタイプに分かれていて、タイプごとの〇の数をもう1枚のワークシートのレーダーチャートにプロットすると、自分の価値観が見いだせるような仕組みになっています。
参加者の皆さんは、真剣に〇をつけ、レーダーチャートを作成。特性が異なるいろいろなチャートが仕上がっていきます。
レーダーチャートができたら、6つのタイプで数の多かったTOP3(1~3位)を選び、48マスの中に書かれた価値観の中から最も自分に近いと感じた文章、最も遠いと思った文章を選びます。
このワークによって、改めて自分の価値観を客観的に確認していただきました。
ワーク2「課題解決策をみつける手法を学ぶ」
自分の価値観を再確認した後は、セミナーの軸になっている「innovation」という視点のワークです。
今回のセミナーは、「キャリアにinnovationを」というテーマで実施していますので、「どのようにinnovationを起こすのか」その手順をシミュレーションするのが目的です。
配布されたワークシートは2枚。
1枚目は、「誰が、どんな課題があるか」を書き込むものです。
■課題発見ワーク
ビジネスや社会サービスは、基本的に誰かの課題を解決することで成り立っています。
困っている人の課題を、どのようにしたら解決できるかの仕組みを考えるプロセスを「イシュードリブン」と呼び、そこから導き出した明確化された仕組みが「ビジネスモデル」となり、ビジネスの基礎となっていきます。
その「誰が」「何に困っているか」を考えるのが1つ目のワークです。
配布された付箋紙に、「困っている人」と「困っていること」を考えて書き込み、ワークシートに貼り付けていきます。
■課題解決整理ワーク
続いてもう1枚のワークシートで、「イシュードリブン」を整理します。
ワークシートには、下記の4ブロックの枠がありますので、それぞれのブロックに考えた内容を記載していくというものです。
1.Who・・・困っている人は誰か
困っている人の人物像を具体化していきます。マーケティングでは「ペルソナ」などといいますが、想定される人物像の年齢や性別・職業・家族構成・趣味嗜好・収入や暮らしぶりなどを明確化していきます。
2.AS IS・・・現在の状況
困っていることの具体例として、どのようなことが起きているかを明確化していきます。
3.TO BE・・・どの状態が理想か
その課題に対して、どのような状態になっているのが「ベストな状態」なのか、ベストな状態になると、困っている人はどのような体験を得られるのかを明確化します。
4.GapとSolution・・・課題解決のソリューション現在の課題を抱えている状況(AS IS)と、理想の状態(TO BE)には必ずGapが生じます。そのGapがどのようなものか、それを埋める方法を考えます。その「Gapを埋める方法」がビジネスモデルであり、ソリューションとなるのです。
ソリューションと聞くと、ちょっと難しそうですよね。
でも、山口さんが地方創生で関わった体験談を聞くと、もっと身近なものになってくると思います。山口さん自身が地方で経験した体験談です。
■ギターが上手くなるソリューション
「ギターが上手くなりたい」という課題を持った人が山口さんに相談に来ます。そこで会社を定年退職してからギターを始めたおじさんに「どうやったら上手くなるか」を尋ねると、「それは人前で弾くことだ」とおじさんは答えます。つまり、その解決策は「LIVEをやること」。山口さんは、街中の音楽好きを集めてLIVEを開催したそうです。
■自分がやりたいことがソリューションとは限らない
一方で山口さんは、失敗談も語ってくれました。
地方創生だからと「地元の余った野菜を東京に売ろう!」と意気込み、地元農家に飛び込み営業して「余った野菜ください!」とまわり、集めた野菜を箱詰めしてSNSを活用して販売したそうです。販売はできたそうですが、あることに気付きます。
「あれ?地元の農家さんは、収入アップを希望していたんだっけ・・・?」
そんなことより、畑仕事で大変な植え付けや収穫を手伝ってもらったほうが喜んでもらえると気づいたそうです。
「地元野菜を東京に売ろう!」は、山口さんがやりたいことであって、困っている人のニーズではなかったのですね。でも世の中には、こんな失敗のケースもたくさんあるんです。自分たちのやりたいことだけを考えて、Gapを埋めるための解決策になっているか検証せずにサービスインして、結局売り上げが上がらず撤退、ということもよく耳にします。
参加者の皆さんには、ワークで考えた課題とその解決策をグループ内で発表していただきました。
実践は翌週「鹿児島の兼業」で確認
今回のセミナーは、このようなワークショップで「自分のキャリアにinnovationを与えるシミュレーション」をしていただきました。
LO活では、そのワークショップで鍛えた仮説を、実践で試すチャンスを用意しています。
このセミナーが開催された翌週に同じ会場で、「鹿児島で活気を見せる3企業が、東京でリモートワークする兼業者を見つけるイベント」を開催します。
地方創生に興味はあるけれど、いきなり移住は難しい。そんな方も多いのではないでしょうか?
このイベントでは、東京の人材と仕事をしたい鹿児島の3企業と、東京に住んだままリモートワークなどの手段で鹿児島の企業の兼業をしたい方をマッチングします。
鹿児島の企業の課題をプレゼンテーションしていただき、課題解決策を提案し、解決するためのプロセスをリモートワーク等でどのように対応できるか。そんなことを一緒に考えるイベントです。
イベント終了後、LO活サイトにレポートを掲載しますので、どのようになるのかお楽しみに!