離島で働く 佐渡島編 Vol.3
人生の挫折から佐渡島での成功。移住したから出来たこと。
島に移住。響きはとても良いけど、本当に暮らしていけるの?そう思う人もいるのではないでしょうか。島出身でUターンを希望している人、島暮らしに憧れて移住したいと考えている人。島に移住したら仕事はあるのか、どんな生活が待っているのか、島での仕事と生活についてインタビューしました。
Brillian
片岡絢さん
長崎県出身。幼少期は両親の転勤に伴い長崎県内や福岡県内などを転々とする。社会人になってからは、長崎にてアルバイトとしてガソリンスタンドに勤めながら、バーテンダーとしても働いていたが、うつ病を発症し退職。1年間の療養の後、先に移住をしていた母親に誘われ、ハーブティーづくりの事業を手伝うために、佐渡島に移住した。
佐渡島ってどんな島?
新潟県佐渡島は、新潟港から船で最短1時間で到着する島です。人口は56,000人(平成30年3月末)。島の形がS字型の日本海側最大の島で、東京23区と同じくらいの大きさです。島の北部・南部にはそれぞれ山が続き、人が一番多く住む中央部には、平野が広がってます。冬は雪国のイメージがある新潟県ですが、佐渡島はこの地形の影響もあり、本土に比べ積雪は少ない場所です。
自然豊かな佐渡島では、海の幸も山の幸もとても豊か。海では、カニ・ブリ・アワビ・サザエ・海藻類などが採れ、山では多種類のキノコや果物、そして清らかな水を使って作られる米など、食がとにかく豊富です。また、佐渡島は国際保護鳥に指定されているトキがいることでも有名です。
ー佐渡島ではどんな仕事をしているの?
佐渡島の野草を使ったハーブティー(薬草茶)づくりの事業を、母と2人で運営しています。
仕事内容は、野草が元気な5~11月にひたすら採取、ハーブティーづくり、パッケージング、そして営業。島内だけではなく、新潟のデパートや旅館、また関東や九州にもイベントで出店しています。私と母、2人でこの事業を行なっているため、冬までは休みなく働いています。
「野草茶は苦くて飲みにくい」というイメージを変えるため、なるべく味がおいしくなるように、味をひとつひとつ確認しながらブレンドしています。お客様からフィードバックをもらったり、今までの接客業で培ってきたノウハウで、常に商品改良を心がけています。
ー佐渡島を選んだきっかけは?
佐渡島との出会いは、まず私の母が6年前に移住したことから始まります。母はSNSで知り合った人に会いに、佐渡島に旅行で3カ月間遊びに行きました。そしてとても気に入ったと言って、帰宅した1カ月後には、荷物をまとめて移住をしてしまったのです。
私はというと、実はそれまで正社員で働いていたことがなく、日中はガソリンスタンドで勤め、夜はバーテンダーとして働いていました。しかし母が佐渡島に移住した頃、うつ病になってしまい入院。働けない状態となり、無職でいることが1年ほど続きました。そんな時、母から連絡が。薬草でハーブティーを作る事業が軌道に乗り、手に負えなくなったので来て欲しいとの連絡でした。
ハーブティーづくりの経験は一切ありませんでしたが、職場復帰は難しかったですし、知っている人がいないところに行きたい、ということもあり移住を決意。今は母と私、妹の3人で佐渡島に住んでいます。
ープライベートはどう過ごしているの?
島民らしいことはあまりしてないです。人と会って遊ぶことも、そこまで好きではないので、だいたい一人で過ごしています。
逆に言えば、島ならではのこと以外にも佐渡島には遊びが豊富にあるのです。例えばよくびっくりされるのが、カラオケやインターネットカフェがあること。私もカラオケにはよく行きます。昔から好きだったんです。長崎にいた頃と、さほど変わらないプライベートの過ごし方ができています。
ー実際に移住した感想は?
まったく抵抗なく、そして不自由なく、島で暮らすことができています。母から連絡が来たのも良いタイミングだったのだと思います。最初は抗うつ薬を飲んでいましたが、今はまったく飲んでいません。
多分私は、根本的に田舎や自然が好きなのだと思います。自然が、昔の楽しかった記憶とリンクするのでしょうね。また、佐渡島は本当にご飯がおいしい。移住するかどうかの決め手に、食事はかなり重要だと思います。
佐渡島にいると、健康的な生活ができます。昔は夜も働いていましたが、佐渡島に来てからは、日が昇ったら仕事を始め、日が落ちたら仕事を終わりにしています。大きい島だし、インターネットで買い物をしても、ほぼ翌日に届く。チェーン店も多いし、コンビニもある。魚も惣菜も安い。生活する上で必要なことはだいたい揃っている島ですね。
デメリットとしては、車がないと生活が難しいことでしょうか。タクシーはほぼ走ってないですし、バスも時間が限られています。あとは、ツテがないと家探しが難しいかもしれません。
ー今後の目標は?
今は母が事業の代表を担っているのですが、この事業を会社にして、私が代表になろうと思っています。そして、人を雇用したい。ただ雇用を増やすだけではなく、私のようにうつ病になったり、精神的に辛い思いをした人を雇いたいと思っています。妹が身体障害者なのですが、そういう人でも活躍できるような雇用を生んでいきたいですね。
ハーブティーは外国の方も飲まれるので、インバウンド向けのカタログや表記も整えたいです。佐渡島の主な外国人観光客は台湾人。これからは繁体語対応なども考えています。
冬にやる事業も計画中です。ハーブティーの商品が売り切れてしまい、去年の冬は時間を持て余してしまいました。なので今後は、九州で培ったバーテンダーとしてのスキルを活かして、店を開けたらと思っています。今はどこで店を出すのが一番良いのか、場所を探しているところです。
ー離島移住を考えている人に、佐渡島はおすすめですか?
おすすめします。佐渡島は離島というよりも地方都市。基本的に何でも揃っているので、移住しやすい環境です。永住すると決めつけず、合わなかったら他のところを探すくらいの気持ちでまず来てみるのが良いと思います。私自身、長男なので将来長崎に戻るかもしれません。しかし、佐渡島で培ったハーブティー事業のノウハウを、地元に持ち帰るのも良いのでは、と思いながら楽しく佐渡島で過ごしています。
佐渡島は、一歩を踏み出しやすい環境だとも思います。事業を始めたい人や、移住をする人に対して、国や地域からのサポートも多くありますし、そういうものを利用すればリスクも減ります。もちろん佐渡島で就職をするのも良いと思います。とにかく一歩踏み出せば、佐渡島は快く受け入れてくれる島だと思っています。
離島で働く 佐渡島編【まとめ】
今回、取材した移住者3名は、背景がまったく違いました。孫ターンの人、佐渡島が大好きで移住したIターンの人、偶然たどり着いた先が佐渡島だったIターンの人。ただ、佐渡島は暮らす場所であること、チャレンジをしやすい場所であるとのことは、3人の共通意見でした。
佐渡島は島自体が大きく、まるで地方都市のような離島。離島移住に興味はあっても、いきなり生活を変えるのに抵抗がある方は、程よく自然、程よく施設が整っている佐渡島は、とても良い選択肢かもしれません。