「人を大切にする会社」って
どんな会社

株式会社日本エー・エム・シー

株式会社日本エー・エム・シー
企業情報

・事業内容:高圧配管用継ぎ手の製造・販売
・創業:1963年(昭和38年)
・本社所在地: 福井県福井市市波町13番地8号
・従業員:180名(2025年4月現在)
・企業ホームページ:https://www.j-amc.co.jp/

企業情報
Point 1
三位一体で進める「ダイバーシティ」「働き方改革」「健康経営」
Point 2
日々の積み重ねで育む、一人ひとりが安心して働ける環境
Point 3
現場の声をすくい上げ、すぐに形にできる風通しのよさ

働きやすさの形は、人の数だけある。福井県福井市で、高圧配管用継ぎ手の製造・販売を行う株式会社日本エー・エム・シーでは、社員一人ひとりが自分らしく活躍できる環境づくりを進めています。今回は、2022年11月に社長に就任した北川浩文さんに、「人を大切にする会社」として大切にしている考え方を伺いました。

TOPインタビュー

TOPインタビュー

株式会社日本エー・エム・シー
代表取締役 社長執行役員
北川浩文(きたがわ ひろふみ)氏

1981年に日本エー・エム・シーに入社。製造現場を経て、生産技術設計など幅広い業務を担当。1995年頃からは中国をはじめとする海外拠点3社の立ち上げに携わり、現地生産体制の基盤づくりを担う。製造・技術・管理と、会社の中核業務を一通り経験し、2022年11月より代表取締役に就任。

■一人ひとりが安心して働ける職場をつくるために

まず率直に「人を大切にする会社」とは、どんな会社だと思いますか?

会社で過ごす時間は一般的に、人生の大きな部分を占めます。
だからこそ社員には、自分らしく安心して働ける環境のなかで力を発揮してほしいと思っています。
私にとって「人を大切にする会社」とは、一人ひとりの価値観に寄り添い、誰もが安心して、前向きに働ける――そんな会社のことだと思っています。

当社は社是に「品質は最大の宝」と掲げています。ここでいう“品質”とは、製品だけでなく、人の質、仕事の質も含めたものです。人が育ち、チームがきちんと機能してこそ、安全で信頼される製品をお届けできる。ものづくりの根幹は、やはり“人”なのです。

そのために私たちは、「ダイバーシティ推進」「働き方改革」「健康経営」に三位一体で取り組んでいます。
誰かが働きやすい環境はきっと、他の誰かにとっても働きやすい。そんな考えのもと、一人ひとりの健康ややる気を支え、それが結果として品質や安全性につながる。この良い循環をつくっていくことが、私の役割だと思っています。

どんなに立派な制度をつくっても、使われなければ意味がありません。たとえば育児休業は現在、男女ともに100%の取得を実現しています。これは「申請しやすく」「仕事に復帰しやすく」するために、制度と現場の両面から運用を見直し、誰もが無理なく支え合える体制を整えてきた結果です。

抱える仕事や事情は、一人ひとり違います。だからこそ、丁寧に話を聞き、安心して休んでもらうことを心がけています。
こうした取り組みが“当たり前”になるまでには時間がかかります。けれど、それが文化として根づいていくと、会社の空気が変わっていくのです。多様性や働き方、健康への意識が少しずつ浸透するほど、職場の雰囲気が明るくなっていく。ここ数年は、そうした変化を特に強く感じています。

会社は、もう一つの家族のようなものだと思っています。長い時間を共に過ごす仲間だからこそ、体調や気持ちの変化に気づける関係でありたい。安心して働ける場所であることが、最終的には仕事の質、会社の信頼につながっていく。
人を大切にするというのは、そういう日々の積み重ねのことだと思っています。

 

■三位一体でつくる、安心して働ける文化

具体的にはどのような取り組みを進めているのでしょうか?

行政の施策・支援策に合わせ「ダイバーシティ推進」「働き方改革」を2014年ごろに着手。2017年には残業時間の上限規制への対応や人材確保を見据え、健康経営優良法人の認定取得を目指した「健康経営」の取り組みを開始しました。その後も行政や社会の動きに合わせて領域を広げ、「ダイバーシティ推進」「働き方改革」「健康経営」を三位一体で進める経営方針を正式に掲げました。

「ダイバーシティ推進」では、女性・シニア・外国籍人材・障がいのある方など、多様な人がそれぞれの力を発揮できる環境づくりを進めています。その象徴が、2016年に発足した女性活躍プロジェクトチーム「ツギテラス」です。女性社員を中心に、工場見学会や食育イベントなどを企画し、職場の垣根を超えたつながりを生み出しています。当社の製品である“継ぎ手”と“未来を照らす”という思いを掛け合わせて名づけた「ツギテラス」は、会社全体を明るくしてくれています。

「働き方改革」では、主に業務の効率化とともに、一人に負担が偏らない働き方を目指してきました。いわゆる多能工化を進め、特定の人に仕事が集中しない体制を整えることで、誰かが休んでも自然に支え合える環境が生まれています。
その結果、有給や育休の取得率も向上し、仕事と家庭の両立がしやすくなりました。

「健康経営」の面では、運動イベントや食育講座、健康診断後のフォローなどを通じて、“健康を会社全体で支える仕組み”を築いてきました。たとえばこの1年ほどは禁煙の取り組みも進め、いまでは全社禁煙を実現しています。ちょうど私自身も「そろそろやめようかな」と思っていた時期で、これを機に禁煙しました。健康というと、どうしても自己責任と思われがちな部分があります。でも実際には、社員一人ひとりの健康が、仕事をはじめとした様々な“質”を支えている。だからこそ、そこを少しおせっかいなくらい、会社として関わっていくことが大事だと思っています。

自社に取り入れられそうな良い事例を見つけたら、まずはやってみる――そんな柔軟さも当社の強みです。
総務部が中心となって小さな改善を積み重ねながら、社員の理解と協力を得て、これらの取り組みが“当たり前”の文化として定着してきました。

 

 

 

■現場の声に耳をかたむける姿勢

現場の意見をどのように経営へ生かしていますか?

私自身が現場出身ということもあり、今でもできるだけ現場に足を運ぶようにしています。年1回の全社員面談をはじめ、日々の会議や安全衛生委員会など、社員の声を直接聞ける機会を大切にしています。現場の声には、改善のきっかけがたくさん隠れているからです。

たとえば、キャリア形成支援を目的とした「エンカレッジプログラム」も、社員の声から生まれた取り組みの一つです。
以前から技能委員会を中心に、技能職の育成や技能伝承に力を入れてきましたが、一方で事務系職種の女性社員から「自分のキャリアをどう描けばいいかわからない」という不安の声が挙がりました。それを受けて2021年にプログラムを立ち上げ、社内に「キャリコンルーム(キャリア相談室)」を設置。誰でも気軽に相談できる環境を整えました。
職種や年代を問わず、自分の将来を前向きに考えられる――そんな職場をつくっていきたいと思っています。

例年猛暑が続きますが、暑さ対策としてファン付き作業服を導入したのも同様です。「こうしたい」「こうだったらいいのに」という言葉をそのままにせず、できるところから形にしていく。そんな日々の積み重ねを大切にしています。

社長になったからといって構えるのではなく、できるだけ気軽に話せる関係を心がけています。何気ない会話の中にも、改善の芽はたくさんある。そうした小さな声を拾い上げ、より良い方向へとつなげていく。それが、私の仕事だと思っています。

 

 

■認定や受賞は「ゴール」ではなく「通過点」

安全衛生優良企業マーク推進機構が発表する「2025年ホワイト企業ランキング」で常に上位に入るなど、多くの認定や表彰を受けられています。そうした評価をどのように捉えていますか?

大変ありがたいことです。 認定や受賞は、目標設定として活用するものもあれば、これまで続けてきた取り組みの“結果”としていただくものもあります。 たとえば「健康経営優良法人」は 2018年から8年連続で認定をいただいており、「くるみん認定」(2018年)から「プラチナくるみん」(2022年)、「プラチナくるみんプラス」(2024年)へと、より高い段階で評価をいただけるようになりました。続けていく中で、国や自治体の基準を満たしたうえで申請することが、自分たちの活動を客観的に見つめ直す良い機会にもなっています。

大切なのは、認定や受賞をゴールにしないことです。「今も続けている」「さらに良くしている」――その姿を社内外に見せ続けることが、次の成長につながると思っています。おかげで、こうして取材に来ていただく機会も増えましたし、取引先や地域の方々に当社の目指す姿を知っていただくきっかけにもなっています。

今後は、社内で培ったノウハウを外にも広げていきたいと考えています。すでに関係企業2社と連携し、健康経営の認定取得をサポートするなど、取り組みの整理や不足点のフォローを行っています。サプライチェーン全体の底上げを目指すことで、ものづくりの基盤がより安定する。
「関係企業もまた同じ家族の一員」という意識で支え合いながら、共に成長していけたらと思っています。