レポート

子どもの就活に親の確認を求められる「オヤカク」とは?
~「オヤカク」を求められた際の、親の対応は?~

近年の新卒採用においては、内定者の親の意向を気にする企業が増えています。
「オヤカク」という言葉を耳にされたことはありますか?

企業が学生に内定を出すにあたって、親の意向を確認することを「オヤカク」と呼び、企業では親に反対されないように、さまざまな取り組みが進められています。

今回は、「オヤカク」とはどのようなものなのか、そして親は「オヤカク」を求められた際に、どのように対応すればよいのかを考えます。

■内定者の親の半数以上が経験する「オヤカク」とは?

「オヤカク」とは、企業が学生に内定を出す際に、親に同意の確認を求める行為のことです。マイナビの調査によると、就職活動中の親の中で「オヤカク」という言葉を知っていた割合は2.8%だったのに対して、子どもの内定企業から「オヤカク」を求められたことがある割合は52.4%と半数を超えていました。
※マイナビ「2023年度就職活動に対する保護者の意識調査」より

 

「オヤカク」だけでなく、「オヤオリ」も

また、親への確認「オヤカク」と並んで、親への企業PRとなるオリエンテーション「オヤオリ」という言葉もあり、内定者の親に対する企業のオリエンテーション活動は盛んになっています。

前述のマイナビの調査によると、「内定式・入社式への招待」は17.3%の親が連絡を受けており、8.6%の親へは「保護者向けの資料」が送付されています。

※マイナビ「2023年度 就職活動に対する保護者の意識調査」より引用 ※マイナビ「2023年度 就職活動に対する保護者の意識調査」より引用

■なぜ「オヤカク」が増えているのか

ではなぜ、企業は内定者の親の意向を気にしなければならなくなったのでしょうか。
それには、近年の就活状況の変化が関係しています。

まずは「売り手市場」、学生が優位な採用状況があります。
厚生労働省発表の新卒学生の内定率は、2024年卒で98.1%と過去最高となりました。そのため2024年卒の学生は、6月までに8割以上が内定を獲得していましたが、そのうち半数以上は就活を継続していたというデータがあるのです。
※エン・ジャパン「2023年度版・就活状況調査」より

 

就職(内定)率の推移(大学)

(資料)厚生労働省「令和6年3月大学等卒業予定者の就職内定状況」数値より、当事務局でグラフ作成<br />
(資料)厚生労働省「令和6年3月大学等卒業予定者の就職内定状況」数値より、当事務局でグラフ作成

 

複数の内定を得ながらも、さらに就活を継続するということは、内定を辞退される企業も増えることになります。リクルートの調査によれば、2023年卒の内定辞退率の平均値は65.8%となっています。
※リクルート 就職みらい研究所「就職プロセス調査」より

 

親の意見を参考にする就活生の状況

また、親の就活への関与が高まっている背景もあるようです。
マイナビの「2023年度就職活動に対する保護者の意識調査」によると、親が子どもの就職先に関して、「親の意見」を伝えている状況が見えてきます。

子どもの就活中に「どのような企業や業界に就職して欲しいかを話した」経験のある親は43.2%でした。そして、親として「就職に反対したい企業」があることも示されています。

子どもが「知名度の高い大企業」に就職を希望した際には、反対する親は1.2%と少数であるのに対し、「設立間もないベンチャー企業」では26.6%、「全国転勤のある会社」では28.6%と、4人に1人以上が反対している状況が分かります。

 

親が反対する企業

※マイナビ「2023年度就職活動に対する保護者の意識調査」より当事務局でグラフを作成 ※マイナビ「2023年度就職活動に対する保護者の意識調査」より当事務局でグラフを作成

 

このような調査データからも、企業が少しでも内定辞退者を増やさないために、親の反対による辞退を軽減しようと「オヤカク」・「オヤオリ」に取り組んでいることが、お分かりいただけるのではないでしょうか。

■「オヤカク」・「オヤオリ」についての企業人事の声

実際に、以前取材にご協力いただいた2社の企業人事にヒアリングすると、以下のような声が確認できました。

A社では、入社直前の3月に内定者の保護者を訪問しているそうです。きっかけは、入社予定の新入社員に対して、先輩社員が販売力(戦力)のチェックをするような話をしていたこと。新入社員を迎え入れる際は、大切な仲間として共に成長していこうという気持ちが重要ですが、そこの観点が少し欠けているのではないかと気になったそう。そのため、各家庭で大切に育てられた新入社員を仲間として受け入れるというマインドを全員で共有するために、入社式で親からの手紙を紹介する取り組みを始めたそうです。

訪問は、その手紙を依頼することが目的ですが、そこでお子さんがどのように成長してきたのかという話を聞くことで、入社後の育成方法のヒントにもつながっているそうです。また、自動車販売は厳しい仕事というイメージもあるため、入社後の評価・育成方針を説明しているとのこと。結果として、保護者に安心してもらえるケースが多く、お子さんが悩んだ時に保護者の方にも力になってもらえる関係性が構築できる場合もあるそうです。

B社は、「オヤカク」は実施していませんでしたが、「まだ必要性を感じていないだけで、内定辞退者が増えるなどの必要性が出てくれば、対応する可能性がある」とのことでした。

 

■「オヤカク」・「オヤオリ」の内容は?

では、「オヤカク」・「オヤオリ」の方法には具体的にどんなものがあるのでしょうか。
一般的に実施されている内容をリストアップしてみましょう。

 

「オヤカク」・「オヤオリ」の内容例

・会社案内/採用パンフレットや企業紹介映像を親向けに送付する

・自社の商品を親向けに送付する・手紙や内定理由通知書(学生のどの部分を評価して内定を出したのかを説明する文書)を送付する

・内定者の親を食事会/懇親会などのイベントに招待する

・社長や採用担当者から内定者の親へあいさつの電話をかける

・社長や採用担当者が、家庭を訪問してあいさつする

・内定者の親に入社についての同意書をもらう など

 

保護者との食事会の事例

では、実際に「オヤカク・オヤオリ」を実施して、効果はあるのでしょうか。
実施企業がその効果について、プレスリリースで発表していますので、その内容をご紹介します。

株式会社ランクアップ
オリジナル化粧品の「マナラ」などのブランド展開をしている株式会社ランクアップでは、10年以上前から新卒内定者の保護者が、会社見学できる取り組みを行っています。

プレスリリースの中で同社の岩崎代表は、「親の会社見学」により、保護者の会社に対する理解は深まっていると語っています。

「本当は大手企業に入社して欲しかった」と打ち明けてくださる親御様もいらっしゃいながら、お会いした後には「素敵な会社でほっとしました。」と言ってくださいます。と、参加者である保護者の声を、プレスリリースで公表しています。

 

■「オヤカク」・「オヤオリ」の連絡がきたら、親はどうする?

では実際に「オヤカク」・「オヤオリ」で、企業からのアプローチがあった場合、親としてどのように考えればよいのでしょうか。

「親が子どもの就職に口を出す」こと自体については、賛否あります。
ただ、企業から連絡があった場合は、子どもと一緒に対応方法を考えることをおすすめします。

なぜなら、子どもの就職先に反対する場合に、親が本当にその企業のことを理解せずに自分の考えを押し付けてしまうケースがあるためです。

親自身が内定企業について調べたうえで、子どもの希望について対話をすれば、経験値のある親が、その企業のどこを不安視しているかが明確になります。その不安点を確認することで、反対する理由がなくなるかもしれません。以下のような手順で、「オヤカク」・「オヤオリ」に対応してみては、いかがでしょうか。

 

1.まずは調べてみましょう

まずは、子どもに内定が出された企業がどのような事業を行い、どのような働き方を推進している企業なのか等、親自身でも調べてみましょう。
近年「転勤ガチャ」という言葉も耳にするようになりましたが、新卒でも勤務地や職種を選べる企業も出てきています。企業側に態度を示す前に、どのような人事制度・人材育成制度があるのか等も、子どもと一緒に調べてみるのもよいかもしれません。

 

2.子どもの意見を聞いてみましょう

企業について調べた上で、子どもの希望や意見を聞いてみましょう。
将来Uターン就職を希望している学生が、最初は都市圏の企業で経験を積んでから戻りたいと考えているような場合、大手企業の中で限られた範囲の業務を担当するよりも、あえて幅広い業務を経験できる中小企業やベンチャー企業を希望している場合もあります。

 

3.必要と感じれば、企業の担当者と会ってみましょう

上記「オヤカク」・「オヤオリ」の取り組みのように、企業によっては親向けの懇親会や食事会などを実施している場合もあります。「親がそこまでしなくても」と考えず、子どもとの会話を通じて、参加するかどうかの判断をすることも大切ではないでしょうか。親自身が企業を確認できるチャンスがあるならば活用し、自分自身で不安点を確認してから、再度子どもと話をすることで、お互いの不安も解消するかもしれません。

 

もし「オヤカク」・「オヤオリ」の連絡があった場合は、上記のようなことを踏まえて、お子さんと一緒に話し合ってみることをおすすめします。

地方就活に関する保護者向けの情報は、以下「保護者の皆様へ」ページにも掲載しています。ぜひ、こちらもご確認ください。

 

※この記事に掲載されている情報は、2024年8月にサイトに公開した時点での情報です。