イベントレポート(vol.4)
『シングルマザーのためのはじめての地方就職ガイド』
LO活はじめてのシングルマザー向けセミナー
2019年のLO活イベントシリーズ第4回は、11月2日(土)に東京有楽町の東京国際フォーラムで、シングルマザー向けの内容で行いました。
なぜシングルマザーを対象にしたイベントなのでしょうか?
それには、しっかりとした理由があります。
なぜなら「シングルマザーは、地方移住で幸せになれる実績があるから」です。
そんな、数々の地方で幸せになるシングルマザーを支援しているのが、一般社団法人日本シングルマザー支援協会代表理事の江成道子さん(写真前列・中央)です。
江成さんご自身もシングルマザーで、子どもの頃は母子家庭で育ったそうです。
今回のイベントでは、江成さんの基調講演に加え、シングルマザーの移住を積極的に支援している自治体(北海道喜茂別町、静岡県静岡市、鹿児島県十島村)担当者のパネルディスカッション、懇親会では具体的な現地での様子を確認できる会となりました。
ママたちがセミナーに参加している間、お子さんたちはクリエーター指導のもと「ワークショップ」で、いろいろな工作などを楽しんで過ごしてもらいましたので、ママさんも安心してセミナーに集中できるようになっています。
イベントの開催概要については、こちらのURLからご確認ください。
また、実際に地方移住されたシングルマザー服部ゆきさんの取材記事はこちらです。
ひとり親だから、子育てがさらに上手になる!
まずは、これまでたくさんのシングルマザーの支援を行ってきた、一般社団法人日本シングルマザー支援協会代表理事の江成道子さんの基調講演からスタートです。
【講師プロフィール】江成道子さん
一般社団法人日本シングルマザー支援協会(横浜市)代表理事
保険外交員として勤務、リーダーとして新人の育成にも関わる。その後、子育てをしながらいくつかの営業を経験し、起業前にはメーカーにてMD業務の傍ら新人育成、取引先研修等を兼務する。2013年7月に一般社団法人日本シングルマザー支援協会を設立し、独立。シングルマザーの支援を通して、企業や行政との連携の中で、支援とビジネスの融合を目指し活動。2018年6月フォーブスジャパンの「新しいイノベーション!日本の担い手99選」に選出、2019年6月にはフォーブスジャパン「ソーシャルインパクトボンド」の記事にて掲載される。主な著書に「シングルマザー自立への道」(啓文社)がある。
シンママ移住メリット
本日この会場へお越しいただきました皆さんに、まずお伝えしたいのは「今の大変さが永遠に続く訳ではない」ということです。
私も母子家庭で育ち、シングルマザーとして子どもを育てました。5人も子供がおりますが、既に6人の孫までおります。子どもが幼児期の頃は本当に大変でした。ずっとこの大変さが続くのではないかと、その時は思っていました。でも、今振り返ってみると、子どもの幼少期ってあっという間で、短いものです。ですから、今日の話の中から、皆さんの子育て環境がよくなるようなヒントを持ち帰っていただければと思います。
本日は「移住」がテーマなんですが、最初にお伝えします。実は私、シングルマザーではあるのですが、地方で子育てをした訳ではありませんので、実体験をもとにした話ではありません。ただ、シングルマザー支援協会を立ち上げてから、本当に多くの自治体から「シングルマザーに移住して来て欲しい」という相談を受けました。
最初は、地方に行って本当に幸せになれるのか、半信半疑でした。
でも、現地に行って地方の暮らしを取材してみると、確かにメリットがたくさんあるんです。
協力的な環境
まずは環境です。自然が多いとか、そういうのもあるんですけど、それ以上に地域が移住者の子育てを助けてくれるんです。
今日は、実際に地方移住を経験した先輩ママも駆けつけてくれているので、岩手に移住したママに聞いてみましょうか。
先輩ママ:「私が移住する際に、現地の方が“私たちが100%助けてあげるから、安心して引っ越して”と言われたんですね。最初は、そんなの口だけだと思っていたんですけど、移住してみたら本当に120%助けてくれました(笑)。今も困ったことがあれば、何でも相談して助けてもらっています。」
これ、地方には地方の危機感というのも影響していると思うんですね。
地方は高齢化が進んでいて、地域によっては若者がほとんどいなくなってしまう場合もあります。そんな環境の中に、若い女性がかわいいお子さんと一緒に、2人とか3人とか引っ越して来たら、地域が明るくなりますよね。そしてお母さんは、地域で働いてくれる。自治体は税収が上がる。地域にとっては、いいことばかりなんです。だから、協力的な環境が構築しやすいんです。
安価な生活コスト
これはよく耳にすると思いますが、生活コストが安いんです。
地方暮らし経験のある先程とは違うママさんに、ちょっと聞いてみましょうか。ちょっと突っ込んだ質問でごめんなさい。種子島に住んでいた時、収入ってどれくらいでしたか?
先輩ママ:「そうですね、自分で月に8万円収入があれば、自治体からの児童手当などもあるので、何とか暮らせるレベルにはなります。ただ、貯蓄や将来必要な額を考えると、もう少しあったほうがよいと思いますが、最低限これくらいあれば、何とかはなりますね。」
※地方でもエリアにより生活費の相場には幅があります。第2部の自治体担当者のパネルディスカッションの中でも、児童手当など含め月に12~15万あれば、貯蓄などは難しくても、日々の生活は成り立つでしょうというお話でした。
ちなみに、都市圏で暮らすと、同じ額で生活できますか?
先輩ママ:「いや、そんなの絶対無理です(笑)!」
ありがとうございます。そんな感じで、住居費も都市圏とは比較にならないくらい安いですし、地域によってはお野菜とかお米とか、農家さんにいただけたりしますからね。岩手のママそうでしょ?
先輩ママ:「そう、結構いただいています。それに、外食するところもないので、毎日自炊ですから食費は地方だとかなり下がりますよ(笑)。」
例えば今日、別の部屋に子ども預けましたよね? 嫌がったお子さんもいたかもしれません。でも、今はもう楽しく工作していると思いますよ。
子どもが嫌がるのは、ほんの一時なんです。私も子どもの頃、何度も引越ししました。でも今振り返ってみて、転校したことによるデメリットって何も感じないんです。それぞれの土地に友達がいっぱいできて、今になってプラスになっているかもしれません(笑)。
子どもは柔軟なので、親が考える以上に適応力が高いんです。実際に移住されたママさんに聞いても、皆さん同じように、子どもの適応力は高いと言っています。子どもの転校を理由にせずに、ぜひ子どもの適応力を信じて、ご自身がよいと思った環境に進んでみるといいと思います。
上手くいくパターン、失敗するパターン
次に、移住を考え始めた時に、上手くいくパターンと失敗するパターンがあるので、それを紹介しましょう。
これは簡単に言うと、「相談するかどうか」なんです。
移住って、初めての人は何も分からないですよね?
だから、私たちのような協会やLO活のような専門機関や自治体、そして各自治体が東京や大阪などの都市圏に設置している移住相談窓口などにどれだけ頼れるかなんです。
そして相談する時は、「地域性、仕事、家」の順序で考えてください。
特に重要なのが「仕事」です。
自分がこれまでやってきた仕事の経験が活かせる場があれば、仕事を軸に地域が決まる場合もあります。移住者だからこそ活躍できる仕事も、地方にはたくさんあります。今までの経験、これからやってみたいこと、ぜひ堂々と相談してみてください。意外と地方では介護の仕事も人気で、都市圏で資格を取ってから移住する方もいらっしゃいますよ。
家も、自治体や移住相談窓口などに相談すると、空き家や公営住宅を紹介してくれる場合もありますし、いろいろな助成金を案内してくれる場合があります。
一人で考えていると、なかなか優先順位がわからない場合があるんですね。
でも、専門家に相談していると、大事な順番をしっかりアドバイスしてくれます。そして、いろいろな選択肢を与えてくれるので、その選択肢を選んでいけばいいんです。
子育てできる期間なんて限られています。お子さんと一緒に生活を楽しめる環境は、どんな環境なのか、この後シングルマザーを積極的に受け入れたいという自治体の方々のお話をうかがいますから、ぜひイメージしながら聞いてみてください。
頼れるところを頼って時間を節約して、残った時間でしっかりお子さんとコミュニケーションしてあげてください。「上手に頼る。上手に任せる」これ、私たちの協会でよく使う言葉なんです。
お子さんは楽しいワークショップ
お母さん方が、このようなセミナーを受けている間、お子さんたちはどのように過ごしているのでしょうか。ちょっと別室のワークショップ会場の様子を覗いてみましょう。
今回のワークショップをプロデュースしていただいたのは、クリエーターのやまさき薫さん。グラフィックデザイナー、イラストレーター、シルクスクリーン作家として、東京・東小金井駅近くの高架下のお店、5組の作り手によるアトリエ併設のストア「atelier tempo (アトリエテンポ)」にて、『絵とデザインのアトリエ「ヤマコヤ」』を主宰。作品制作・ワークショップを中心に「暮らすこと、つくること、伝えること」を大切にしたものづくりを目指した活動をされています。
会場には3~5才くらいのお子さんがたくさん。オリジナルの缶バッジやバッグを作ったり、絵とシールでデザインをしたり、木工工作をしたりと、みんなすごく集中してちびっこクリエーターのいい顔をしていました。
ちびっこクリエーターが手掛ける指先をいくつかご紹介しましょう。
鋭く具体的な質問が飛び交うパネルディスカッション
さて、それではママさん会場に話を戻しましょう。
江成さんの基調講演に続いては、シングルマザーを積極的に受け入れている自治体の皆さんを交えてのパネルディスカッションです。
今回ご登壇いただいたのは、こちら3自治体の皆さんです。
北海道喜茂別町
札幌に隣接する喜茂別町は、札幌の中心地まで車で90分くらいの場所で、北海道の富士山とも言われる「羊蹄山」の麓に位置します。「水の郷100選」や「グリーンツーリズムモデル育成地域」に認定される自然豊かな土地。冬は雪が車を覆い隠すほどに降り積もる様子や、住民の約9割の世帯に光回線が行き届いている通信環境など具体的な生活の様子を説明していただきました。また最近の北海道では、スノーリゾート地で働き手が足りないということで、時給2,000円以上の求人なども出ておりまだ時給は上昇するのではないかなどというようなお話もいただきました。
http://www.town.kimobetsu.hokkaido.jp/
静岡県静岡市
子育てしやすい街ランキングで1位になったこともある静岡市では、市役所に「移住コンセルジュ」という専門職がいて、移住希望者に対して仕事や住居、子育てなど、さまざまなサポートをしているそうです。また、地方は「自家用車がないと生活できない」というイメージがあるかと思いますが、静岡市は自転車で生活でき、担当者ご自身も自転車通勤だそうです。アニメ「ちびまる子ちゃん」でおなじみ、さくらももこさんのイラストでシティープロモーションを行っており、会場では「静岡子育てマップ」なども配布され、子育てのしやすい環境についてご説明いただきました。
https://www.city.shizuoka.lg.jp/
鹿児島県十島村(としまむら)
鹿児島県の十島村は、世界遺産の屋久島から奄美大島までに挟まれた、有人七島と無人五島からなる南北約160kmの日本で一番長い村。サンゴ礁や琉球文化など自然・文化に恵まれ、「刻(とき)を忘れさせる村」とも言われています。学校教育は、子どもの数が少ないことから、ほぼマンツーマンに近い形で先生が指導をしており、ネイティブの英語の先生の授業もあるということです。そしてICTを活用して、島外の学校とインターネットでテレビ会議のようにして、授業を行うような取り組みもあるそうです。スライドで映し出される島々の美しい風景に、会場では感嘆の声が上がりました。
そんな自治体の方をお迎えして、実際の地方での暮らしについてお話をうかがい、会場のママさんからは質問をしていただきました。
そこで質問される内容が、やはり子育て中のママさんならではのものばかり。
・自家用車は必須ですか?
・企業で社員になった際の平均給与はいくらくらいですか?
・北海道の暖房費はいくらくらいですか?
・高校/大学はどこに行くケースが多いですか?
・移住定着率はどの程度でしょうか?
など、多くの具体的な質問が出てきました。
各質問に対して、自治体の担当者は親切に回答していただきましたが、自治体ごとに環境が異なりますので、回答内容はそれぞれ個性がありました。そして各自治体ともに、移住者や子育てなどに対する支援策について、熱のこもった具体的なご説明をいただきました。
例えば民間の賃貸住宅の相場が1LDKで4万円程度のところ、公営住宅であれば1万円台で同程度の広さの住宅がある。高校進学時などは、約7万円の補助があるなど、具体的な話がうかがえました。
パネルディスカッション後は懇親会となり、ママさんたちはさらに具体的な質問を、自治体の担当者にされていました。時間いっぱいまで、担当者の前に列を作って順番を待っている方もいらっしゃり、参加者の中には、会場近くにあるハローワークへ自治体担当者と一緒に訪問するなどのケースも出てきました。今回のセミナーを活用してよりよい子育て環境を手にしたいという真剣さが伝わってくる懇親会となりました。
シングルマザーの移住支援窓口
残念ながら今回のセミナーに参加できなかった、というシングルマザーの皆さん。
次回の開催予定は決まっていないのですが、厚生労働省委託事業であるLO活では、無料で個別相談を受け付けています。
江成さんのお話のように、地方移住は専門家に相談していただくのが一番です。
LO活の相談員は、東京駅八重洲口にある移住交流窓口「移住・交流情報ガーデン」にも常駐している地方就職に詳しいプロの相談員です。
下記お問い合わせフォームより、お気軽にご相談ください。
ご希望があれば、今回ご登壇いただきました、日本シングルマザー支援協会の江成さんのご紹介も可能です。「何から始めてよいか分からない」「移住のイメージもできていない」という方でも結構です。どのような暮らし・子育てがご希望なのかをお聞かせください。ぜひ一緒に考えさせていただきたいと思います。
ご相談は、こちらからお願いします。