レポート

お金の話、正直どうなの?
~月収Before-After 地方就職者のリアル事情~

地方就職のお金の不安を、リアルな家計簿で解消

地方就職を考えている人の中には、収入が下がる可能性があるということから、経済的な不安を感じている人がいるかもしれません。

今回は、そんな地方暮らしのお金事情について、首都圏企業から地方企業への地方就職経験者に家計簿を提供していただき検証しました。家計簿を提供していただいたのは、2025年に東京都から長野県に地方就職した斉藤雄一(仮名)さん。提供していただいた家計簿について、移住を専門としたファイナンシャル・プランナーである一般社団法人移る夢(いるむ) 代表理事の​仲西康至さんに解説していただきました。

 

 

 

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~地方就職した斉藤雄一(仮名)さん プロフィール~

大学卒業後の22歳から24歳まで、東京都内のシステム開発会社で、プロジェクトマネージャー職を経験。しかし東京での人との関わり方や距離感にストレスを感じ地方就職を決意。2025年に長野県のキャンプ場を運営する企業に転職し、インバウンド向けの新規事業の責任者を担当している。

 

 

地方就職の決め手は、地方ならではの人間関係と仕事の裁量の大きさ

――まずは、今回家計簿を提供してくれた斉藤さんに、地方就職を決めた理由をうかがいました。

私が地方就職を考えたきっかけは、人との関わり方や距離感が地方の方が合っているのではないかと感じたことと、地方での仕事の裁量の大きさでした。東京よりも決裁権者との距離が近く、仕事が決まってから形になるまでのスピードが早いことを魅力に感じ、地方就職を決めました。

 

――移住前の心境と、実際に地方就職してからの心境や生活の変化について教えてください。

移住を決めた段階から、不安よりも新しい環境で挑戦できることへのワクワクが大きかったと思います。実際に長野で暮らしてみると、周囲の人から「ご飯食べていきなよ」と言われるようなつながりが生まれています。私にとってはこの近い距離感の人間関係が心地よく、東京で違和感のあった「表面的な会話」が減ったことでストレスも軽減され、自分らしくいられる場所に出会えたと感じています。

 

 

地方就職前後、斉藤さんのリアルな家計簿

では、東京都から長野県地方就職した斉藤さんの、地方就職前後の家計簿を比較してみましょう。 

斉藤さん提供の地方就職前後の家計簿 

収入について、月収は同じです。
しかし移住後はボーナスが出ない会社のため、ボーナス分の年間40万円が減収となっています。

支出については、斉藤さん独自の事情が含まれるので、いくつか補足します。

地方移住で最も差が表れる「住居費」は、移住前後の両方とも「社宅」ということで0円となっています。移住後の「食費」が大きく減額されているのは、地域のコミュニティで食事の提供を受けているためだということです。「月額2万円の食費で生活できる」ということではありませんので、ご注意ください。

 

 

移住前の「水道光熱費」がかかっていないのは、社宅で自己負担がなかったためということです。「通信費」は、移住の際に格安SIMに切り替えて見直しをしたそうです。

また、一般的な方よりも「交際費」が多いのは、ビジネスにおける人脈作りを積極的に行うための交流会参加費などが理由ということです。「車両費」は、車の購入ローンや車検などの費用で、ガソリン代は「交通費」として記載しています。

移住前は、収入よりも支出が多くても、ある程度ボーナスでカバーできていたかもしれません。しかし移住後はボーナスが無いので、家計の見直しが必要となるのではないでしょうか。

それでは、移住専門のファイナンシャル・プランナー 仲西康至さんに、こちらの家計簿に関して解説とアドバイスをしていただきましょう。

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ファイナンシャル・プランナー 仲西康至さん プロフィール

移住プランナー/移住専門FP/「一般社団法人移る夢(いるむ)」代表理事/空き家相談士 大阪出身。2006年国内初の移住専門FPとして独立。家族で北海道に移住し、「移住プランナー」として活動を開始。2022年には総務省「地域プロジェクトマネージャー」として鹿児島に移住。大阪・北海道・鹿児島の3拠点生活を実現。これまで18年間の活動で2,500組の移住相談に対応。著書には「移住を成功させる5STEP」「雪国に移住 住宅選びのテクニック20選」などがある。

 

 

地方就職では、収入が2~3割ダウンしても家計の見直しは可能

――斉藤さんの場合、月収は地方就職後も変わっていませんが、一般的に都市圏企業と同水準の収入になるのでしょうか?

都市圏から地方就職した場合、一般的に収入は2~3割減少すると言われています。
もちろん、移住先のエリアや移住者のビジネススキルなどの評価によって、必ず下がるという訳ではありません。ただ一般論としては、2~3割収入が減少すると想定していただいたほうがいいかと思います。

ただ一方で、住居費が抑えられるなどの理由から、生活費も都市圏の暮らしから2~3割削減できるようになります。そのため、収入が減少しても、著しく生活が苦しくなるという訳ではありません。

 

――移住前後で、住居費はどの程度安くなるのでしょうか?

全国賃貸管理ビジネス協会が発表している都道府県別の単身者の平均家賃では、東京都が75,984円(23区内は10万円超え)で、長野県が43,314円です。約3万円の差があります。同じ長野県でもエリアによって相場は変わりますが、一般的に都市圏から地方へ移住した際の住居費の差額は3~5万円と言われています。

――斉藤さんの場合は、社宅のため住居費がかからず、交際費が一般的な相場よりも多くなっています。一般的な家計を想定すると、どのような家計簿になりそうでしょうか?

斉藤さんが移住した長野県では、松本市に居住した必要家計をLIFULL HOME’Sが公表していましたので、見てみましょう。

 

 

 

松本市の場合の単身世帯の家計簿サンプル 

※出典:LIFULL HOME’S 住まいインデックスのデータより作成 ※出典:LIFULL HOME’S 住まいインデックスのデータより作成

斉藤さんの場合、交際費が家計の約半分を占めていましたが、一般的な単身世帯で同等の収入だった場合、このような家計簿が想定されます。住居費が約3万2千円で、交通・通信費は車に関する費用がかかるため、約2万4千円となっています。

もちろん、地方でも都市部に暮らすのか、郊外で暮らすのかによっても費用は異なりますし、車を軽自動車やハイブリッドにするのか4WDで雪対策するのかによっても、車の購入費やガソリン代は違ってきます。ただ、必要な家計のイメージをするには、参考になると思います。

地方生活の目的や夢のために、家計の見直しと貯蓄を

――都市圏から地方就職した場合に、注意が必要な費用は何ですか?

移住先がどのようなエリアで、どのような生活をするかによって変わってきますが、一般的には「車生活」になるため、車にかかる費用が必要になってきます。また、冬が寒いエリアの場合は、暖房費に注意が必要です。

雪国で大切な暖房は電気、灯油、ガスによって費用は変わります。とくに、ガスは都市ガスではなくプロパンガスになる場合が多く、割高になることも考えられます。

 

――斉藤さんの家計を見直すとしたら、どのようになりますか?

あくまで一般的なケースとして、交際費も世間相場で考えますと、下記のような家計の見直し案をご提案します。

 

 

ファイナンシャル・プランナー 仲西さん監修の見直し案 

住居費は社宅ということで、0円のままとしています。
食費は、地元コミュニティを活用して抑えているとのことですが、4万円程度は必要です。「水道光熱費」も、移住後まだ冬シーズンを迎える前のデータではないかと思いますので、冬の暖房費を考えると1万8千円程度は必要になるかと思います。

「交通費」は社宅のため、職場までの移動が少ないのかもしれませんが、公共交通機関が脆弱な地域では、コンビニに行くにも車が必要となります。そのため、2万円に引き上げています。また斉藤さんの家計簿には、「保険医療費」がありませんでしたが、病気やけがに備えて保険に入るケースもあるでしょうし、病院で診察を受けることもあると思いますので、1万円を計上しました。

 

最後に、貯蓄が0円でしたので、安全運用と積極運用の2種類の貯蓄をご提案します。
地方移住をされる方の多くは、「移住の目的や夢」をお持ちです。その「目的や夢」を実現するためには、資金が必要になります。

また、私たちは暮らしの中で様々なリスクを抱えています。緊急の出費に対処するためにも、貯蓄をすることはとても大切なことです。地方でマイホームを持つことや、趣味のアウトドアを楽しむこと、近くの温泉などでリラックスすることなど、みなさんが地方で成し遂げたい目的をお持ちです。その目的を実現するためにも、「貯蓄」は必要だと考えています。

「交際費」「雑費」に関しましては、上記の必要金額を算出した上で、収入からの差額で計算しました。

 

 

――最後に、地方就職でお金の心配をされている人へメッセージをいただけますか?

地方就職を考える場合に、収入が減ることを気にする人がいるかもしれません。
ただ、収入とともに生活費の支出も減るので、それほど心配する必要はないと考えています。必要であれば家計を「見直し」することも可能です。大切なことは、その地域のライフスタイルに合わせることです。今回の斉藤様のように、地域に溶け込むことで、素晴らしい暮らしを送ることが出来るでしょう。

そして私は、実際に地方移住し、やりたいことを実現してきたみなさんを見てきました。単純に「地方では収入が下がるのではないか」という不安だけで、地方就職をあきらめるのではなく、地方移住の目的や夢を実現するために、どのようなやり方があるのかを考えてみてください。

 

 

【編集後記】
移住専門のファイナンシャル・プランナー仲西さんは、地方就職によって「何を手に入れたいか」、地方移住の「目的や夢」が重要であると語ってくれました。家計簿を提供してくれた斉藤さんのように、地方ならではの人間関係やビジネスにおける裁量の大きさを求める人もいれば、豊かな自然の中で暮らしたい人、将来マイホームを持ちたい人、趣味のアウトドアを楽しみたい人など、いろいろな「目的や夢」があると思います。

仲西さんは、そんな目的を持って地方移住を検討している方々に、家計の見直しによるライフ・プランニングを提供し、地方移住のサポートをしています。 

 

LO活事務局でも、そんな地方就職を考えているみなさんに寄り添って、様々な視点からのアドバイスをさせていただきます。不安に思っていることがあれば、お気軽にご相談ください。

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