現役大学生のローカルインターンシップに密着vol.4【石巻魚市場】
宮城県の水産業を支える魚市場の広報のインターンシップに密着
首都圏に在住し、首都圏の大学に通う現役大学生が、地方企業のインターンシップに参加したらその意識はどう変わるのだろう?
今回取材したのは、福島県出身で横浜の大学に通う渡部皓士(わたなべ あきと)さん。石巻魚市場株式会社(以下、石巻魚市場)で広報のインターンシップに参加していました。石巻魚市場のインターンシップは、約1カ月間の長期型。その中の終盤にあたる、最終発表の前日と、最終発表当日の2日間に渡り密着取材を行いました!
取材対象
・実施場所:宮城県石巻市
・受け入れ企業:石巻魚市場株式会社
・実施期間:2023年8月17日~9月15日(取材は9月14日~15日)
・参加者:渡部皓士さん 横浜国立大学/経営学部1年生
(プロフィール)
出身は福島県郡山市。大学進学をきっかけに横浜へ。まだ1年生だが、これまで経験したことがないことをしたいと考え、地方のインターンシップに参加することを決意。卒業後の進路についてはまだ明確にはなっていないが、今は都内の企業に就職しようと思っている。
取材1日目(9月14日)
インターンシップに参加した背景について、渡部さんに聞きました。
10時30分
すでに業務を始めている渡部さん。この日の午前中は、石巻魚市場のゆるキャラ公募用の投票箱を回収していました。
今回のインターンシップにおける渡部さんのミッションは、石巻魚市場の魅力を発信すること。そのために取り組んだのが「ゆるキャラの公募」でした。募集の告知はSNS上だけにとどまらず、地元の高校に直接出向き、募集箱を置かせてもらっていました。
「石巻魚市場ってすごいのに、そのすごさをちゃんと理解している人が少なくて。建物の長さが875.47mもあって、世界一長い魚市場としてギネス世界記録に認定されているのに、地元の若い人だと知らない人が結構いるんです」
「SNSの告知だけでも良かったのですが、アナログでしかできないこともあると思い、投票箱を手作りして直接学校(高校)に渡しに行きました。そうすることで、ゆるキャラ募集や石巻魚市場をより意識してもらうことにつながると思いましたので」
ゆるキャラ募集が、石巻魚市場に興味を持つきっかけとなってほしい。石巻魚市場の課題を、自分事として捉えた結果の行動でした。
12時30分
仕事場近くの定食屋さんで、海鮮丼のお昼ごはん。おいしい海鮮を楽しめるのも、石巻魚市場のインターンシップならではです。
14時
渡部さんと一緒に石巻魚市場のインターンシップに参加している、瀬川悟(せがわ さとる)さんと合流。午前中は手分けして投票箱を回収していました。ここから、明日に控えた最終報告の準備を進めていきます。
「1カ月間、ここまで来ることができたのは悟がいたから」と渡部さんは言います。ゆるキャラ募集の企画やプロジェクトの進行、会社のオフィシャルSNSの運用などを、自分たちで考え、作り上げていくインターンシップでした。社員の方から厳しいフィードバックを受けたり、瀬川さんとの議論が白熱しすぎてつかみ合いの喧嘩になったりと、本気だからこその困難もあったそうです。
生き生きと議論を交わしながら、最終報告の準備を進める2人からは、困難を共に乗り越えたからこその結束が感じられました。
16時
石巻魚市場の勤務は、7時半に始業し、16時に終業します。今回のインターンシップの運営を行うフィッシャーマン・ジャパンが運営するシェアハウスへと帰宅。
宿舎では、くつろいだり、別の会社のインターンシップに参加している住人と雑談をしたりして過ごします。在宅でも仕事ができる環境です。「明日の準備をもう少しやりたいので、もうちょっとだけ作業します」と渡部さん。
取材2日目(9月15日)
8時
最終報告直前の、最後の準備。石巻魚市場の事務所で、瀬川さんと入念にリハーサルを行いました。
10時
いよいよ、石巻魚市場の社員の皆さんの前で最終報告です。1カ月間のインターンシップの成果を報告します。
最終報告では、1カ月の活動とその成果、そしてインターンシップの期間が終わった後も、引き続き石巻魚市場の魅力を広く知ってもらうためのSNS活用の提案が盛り込まれていました。
発表には、この時執務エリアにいた全員が集まって、インターンシップ中の2人の取り組みや提案に対して、真剣に耳を傾けている様子が印象的でした。
12時
最終報告後のランチは、2人でラーメン屋さんへ。
石巻のご当地グルメ、「サバだしラーメン」を食べに行きました。鯖の旨味がたっぷりの、石巻ならではの逸品です。
14時
いよいよインターンシップ最後の仕事。ゆるキャラ募集の結果集計作業です。各学校から回収した募集箱を開封していきます。
箱から出てきたのは大量のゆるキャラ案。美術の授業課題として取り組んでくれた学校もありました。
また、実際の応募だけでなく、ゆるキャラを募集したことで、社内で話題になったり、取引先の方から「ゆるキャラの募集しているんだ」と会話のきっかけになったりと、思いがけない影響もあったそうです。
ゆるキャラ選定や、今後の作業を社員の方に引き継ぎ、渡部さんのインターンシップは終了となりました。
インターンシップを終えて
地方特有の課題に切り込んだ1カ月間
1カ月間のインターンシップを終えた渡部さんに、この期間の気付きや発見を振り返ってもらいました。
今回、渡部さんを受け入れてくれた石巻魚市場の取締役の升さん、インターンシップを担当した佐藤さんから、感想をいただきました。
升さん:インターンシップについては、若い感性を取り入れることで、石巻魚市場や水産業の活性化につながれば、という思いで受け入れを決めました。そして実際に受け入れてみて、ゆるキャラの企画は順調に進んで、応募作品も本格的なものが集まってきていますし、SNS運用も思っていた以上に閲覧者が増えていたので驚きました。今後、この成果を活用していくのが私たちの宿題だなと感じています。
佐藤さん:今回渡部さんと瀬川さんに任せた仕事は、会社の顔になるイメージキャラクターに関わる、とてもクリティカルなものでした。そんな中で、2人の姿勢はとても真剣で、一切の出し惜しみなく本気で考え、仕事に向き合ってくれたことが伝わる1カ月間でした。
2人が今回のインターンシップをきっかけに石巻を知り、そしてこれからの活動の中で「石巻ってこういう場所だったよね」と思い出を話すことで、そこからまた新たなつながりが生まれていくと思います。そういった意味でも、とてもいい機会だったと思います。
地方の課題に、仲間とともに本気で向き合った渡部さんのインターンシップ。皆さんも興味のある分野を選んで、ぜひ挑戦されてみてはいかがでしょうか?きっと素晴らしい出会いと経験がありますよ!
※この記事に掲載されている情報は、2024年1月にサイトに公開した時点での情報です。
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