現役大学生のローカルインターンシップに密着vol.3【まるにわ】
鳥取県で地域コミュニティを運営。まちづくりが実践できる長期インターンシップに密着
首都圏に在住し、首都圏の大学に通う現役大学生が、地方企業のインターンシップに参加したらその意識はどう変わるのだろう?
今回取材したのは、東京都内の大学に通う飯島遼平さん。鳥取本社の「株式会社まるにわ」が運営する「不真面目商店」で、今年の5月からお店の店長(コミュニティマネージャー)としてインターンシップに参加しています。
鳥取市内に暮らしながら、地域の方と交流を通じて「まちづくり」を実践する。そんな飯島さんのインターンシップの様子を、2日間にわたり密着取材させてもらいました。
取材対象
・実施場所:鳥取県鳥取市
・受け入れ企業:株式会社まるにわ
・事業内容:遊休不動産におけるリノベーション事業。まちに主体的に関わる市民や関係人口を増やすプロジェクトの創出など。
・実施期間:2023年5月8日~9月28日(取材は9月16~17日)
・参加者:飯島遼平さん 青山学院大学/経済学部4年生
(プロフィール)
神奈川県座間市出身。祖母が暮らす静岡県・修善寺温泉の街並みの移り変わりを目にし、中学生の頃から地域や地方に興味を持ち始め、大学では地域経済学を学ぶ。就職を前に「実際に地方で暮らし、お住まいの方と交流がしてみたい」と思い、大学を一時休学して、今回のインターンシップに参加した。
取材1日目(9月16日)
10時30分
今日はどんな活動をされるのでしょうか? 飯島さんに聞きました。
インターンシップの活動拠点となる「不真面目商店」は、JR鳥取駅北口から徒歩約15分。アーケード商店街「サンロード」の脇道を入った、城下町の風情を残す閑静な住宅街にあります。
「地域の方の世代を超えた交流が生まれる場」
「地域の方がゆるく気張らずに(不真面目に)商いを始められる場」
をコンセプトに、2022年8月に開店したこの地域コミュニティの場を、鳥取市内に暮らしながら、地域の方との交流を通じて継続・発展させていく。活動報告の後、次のインターン生に向けて引き継ぐまでがインターンシップの活動内容です。
週4日の商店の運営のほか月2~3回のペースで、受け入れ元である「まるにわ」の社員さん、鳥取市中心市街地活性化協議会の方と一緒に「空き家調査」も行っているそうです。
商店に到着すると、手慣れた様子でイベントの準備を進めていく飯島さん。
今日は鳥取市で移動図書館を運営する方たちがイベントを開催されます。店内では夏の音楽が流れる中、持ち寄った書籍を自由に読むことができます。また、店外では焼き鳥や、くじ引きが楽しめます。
「今日のイベントは自分たちの主催ではなく、場所をお貸しするという形ですので、一緒に楽しみながらサポートに徹したいですね」と話す飯島さん。
11時
準備を終えて無事スタート。お店はイベント目当てのお客さんや、たまたま通りかかったお客さん、常連のお客さんであふれ、小さなお祭りといった趣に。
12時
開店から約1時間。客足も落ち着いてきたところで、お昼ごはん。出来立ての焼き鳥に思わず笑みがこぼれます。
13時
まるにわの代表取締役・齋藤浩文さんが家族とともに来場されたので、今回のインターンシップについてお話を聞いてみました。
―実践的な「まちづくり」インターンシップだと思いますが、運営を学生(インターン生)に任せることの狙いは何ですか?
齋藤:不真面目商店は、飯島くんの前任にあたる初代インターン生が企画構想段階から関わり、作り上げた場所なんです。彼の熱意とキャラクターで、多様な人たちが集まってくる様子がとても面白く、僕ら社員が店先に立つより、「地域」や「まちづくり」に興味のある学生さんにお任せしたほうが、今後もこの広がりが見られそうだと思い、飯島くんにお願いしました。
―齋藤さん自身、新卒で鹿児島から地元の銀行へUターン。現在、銀行員を続けながら会社の代表もされています。起業・副業することに対して勤める銀行からは、すんなりとOKをもらえたのでしょうか?
齋藤:前例はなかったのですが、しっかりと話し合った上で、起業・副業の制度を作っていただきました。こうした「コミュニケーションが取りやすい」というのは、地方企業の良いところだと思っています。現在まるにわで得た知見を活かして、銀行のほうで学生向けのオンライン・インターンシップも担当しているのですが、これも提案してから実現するまで話が早かったです(笑)。
―鳥取市に暮らす魅力や面白さを教えてください。
齋藤:都市部ほどモノや情報は多くなく、「何もない」と感じる方もいるでしょうが、見方を変えれば「何でもできる」というのが鳥取市です。よく「余白が大きいまち」と言っているのですが、自分から何か新しいことを仕掛けたい、主体的な人にとっては天国みたいな場所です。「何もない」から「何かできるかも?」へと発想を変えられると、鳥取に限らずローカルでの生活もより楽しくなると思います。
13時30分
齋藤さんの息子さんと遊ぶ飯島さん。不真面目商店の2階(下写真)は現在、飯島さんが大改造中。インターン最終日までに、読書が楽しめる新しいスペースを作ることが目標だそうです。
14時
お店にやってきた常連さんとお話をする飯島さん。インターンシップ参加当初は、元々お店についていた常連さんとのやりとりに悩んだそうです。「そこはもう時間をかけて交流していきました」。今では顔と名前もしっかり憶えて、すっかり地域に溶け込んでいました。
15時
楽しそうな雰囲気に誘われて、子どもたち(こちらも常連)も来店。スーパーボールのくじ引きを大いに楽しんだ様子。子どもから高齢の方まで、本当に幅広いお客さんがお店にやってきます。
18時30分
盛況につき、予定より30分遅れでイベントが無事終了(焼き鳥も完売!)。皆さんお疲れ様でした!
取材2日目(9月17日)
11時30分
「不真面目商店」の開店前に、商店から徒歩5分の「まるにわ本社」で、取締役専務の谷口俊博さんにお話を伺いました。
―飯島さんの印象はいかがですか?
谷口:前任が作った環境でやっていくのは大変だったと思いますが、懐に入るのが上手というか器用な面もあって、今やすっかり溶け込んでいるという印象です。
―谷口さん自身、大阪・東京を経て鳥取へUターンされています。地元を選んで良かった点を教えてください。
谷口:鳥取で勤めた設計事務所で、初めて公共物件に携われたことが良かったです。個人建築士となった今でも携わっているのですが、大阪・東京の時に勤めていた設計施工の会社では、公共物件に携わる機会はほとんどなかったので。地元に帰ってきたことで、民間・公共と大小広く建築業界を見られたのは大きかったです。
―そのまま都心部で働くという選択肢は考えなかったのですか?
谷口:そうですね。都心部は建築物が多すぎて、これは誰が何年かけて、どれだけの人数で作ったのか?設計や現場の苦労を想像するとゲッソリしてしまって(笑)。もう一つ、地元を選んで良かった点は、自分が携わった建築物が街中に埋もれないというのもあります。建てば目立つ。それが今の仕事のやりがいにもつながっています。
12時30分
不真面目商店に向かうと、すでに店内はお客さんでいっぱい。本日のイベントはお菓子を食べながら、紙芝居の読み聞かせを楽しむという、その名も「おかし&紙芝居」。
14時
掘りごたつの部屋に集合して、紙芝居の読み聞かせが、はじまりはじまり。わんぱくな猫が、何とかお月さまに触れようとする物語に、子ども達は夢中になっていました。
読み聞かせの後、お菓子に合う美味しいコーヒー(近所の珈琲屋さんで購入した豆を使用)を準備する飯島さん。苦いのが苦手という子には、牛乳たっぷりのカフェオレをふるまっていました。
15時
その後も9月が誕生日の人をみんなで祝ったり、遅れてやってきた子に向けて、2度目の紙芝居の読み聞かせを行ったり、わいわいと賑やかな雰囲気のままイベントは終了しました。
長期の地方インターンシップに参加してみて
「愛着のある場所」に変わった、約5カ月間の地域交流
約5カ月間にわたるインターンシップに参加して感じたことを、飯島さんに振り返ってもらいました。
地方で暮らし、そこに住まう人々との交流を通して、初めて来た鳥取が「愛着のある場所」へ変わったという飯島さん。今回お世話になった人たちにも「進路が決定したら、報告しに帰ってきたい」とのことでした。
縁もゆかりもない土地に、自ら「ご縁」を作りに行った飯島さんのインターンシップ。そこで育んだ人や土地との関係は、長い人生の財産になるに違いありません。
皆さんも、ぜひ挑戦されてみてはいかがでしょうか?
※この記事に掲載されている情報は、2023年11月にサイトに公開した時点での情報です。