レポート

現役大学生のローカルインターンシップに密着vol.2【ベガハウス】

鹿児島県でこだわりの家づくりをする工務店のインターンに密着

首都圏に在住し、首都圏の大学に通う現役大学生が、地方企業のインターンシップに参加したらその意識はどう変わるのだろう?

今回インターンシップに挑戦してもらうのは、神奈川県出身で、都内の大学に通う島村凛之介くん。注文住宅を扱う鹿児島県鹿児島市の企業、「株式会社ベガハウス(以下ベガハウス)」のインターンシップに参加してもらいました。

どんなインターンシップになったのか、早速その様子を覗いてみましょう!

取材対象

実施場所:鹿児島県鹿児島市

受け入れ企業:株式会社ベガハウス

実施期間:2023年1月22日~24日

・参加者:島村凛之介さん 中央大学/総合政策学部1年生

(プロフィール)
生まれも育ちも神奈川県。都内にある大学のキャンパスへも、実家から電車で通っている。陶芸サークルで活動し、中学受験専門の塾でアルバイトをしている。大学1年生なので就職活動はまだまだ先だが、現時点では地方就職にあまり興味は無いという。

初日(1月22日)

10時30分

鹿児島空港に到着した島村くん。これから始まるインターンシップに向けて、今の気持ちを聞きました。

 

13時

ベガハウスに到着。いよいよインターンシップが始まります。

案内されたのは、会社の敷地内にある「ベガ荘」。ベガハウスでインターンシップをする学生がベガハウスの家づくりを体験してもらうために建てたとのこと。

ベガハウスでは実践型のものから見学型のものまでさまざまなインターンシップの受け入れプログラムを用意しているそうですが、今回は島村くんが1年生であるということ、また、「地方企業で働くことの魅力」を感じてほしいということから「見学要素が強い3日間を過ごしてもらいます」とのことでした。

まずは八幡秀樹会長から、ベガハウスの事業内容や会社が目指していること、そして今回のインターンシップに期待していることについて、話を聞きました。

主に注文住宅を手掛けているベガハウスですが、グループ企業には、大工集団の株式会社トクエイ、リノベーションや場づくりを手掛けるデザイン企業・株式会社IFOO(イフー)があります。この3社がコラボレーションすることで、家づくりやリノベーションを起点とした場づくり、家具や仏壇の開発や地域活性化など、幅広い仕事を手掛けています。

▲ベガハウスのお客さんを招いた野外映画祭 ▲ベガハウスのお客さんを招いた野外映画祭

▲地域を巻き込んだイベント「MOSHIMO BASE落成式」 ▲地域を巻き込んだイベント「MOSHIMO BASE落成式」

▲川辺仏壇との共同プロジェクト「Buddan furniture」 ▲川辺仏壇との共同プロジェクト「Buddan furniture」

▲霧島神宮駅周辺活性化プロジェクト・駅内観模型 <br />
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▲霧島神宮駅周辺活性化プロジェクト・駅内観模型

14時30分

続いて、ベガハウスで設計の仕事に携わる、田村健太郎さんに話を伺いました。田村さんは、愛媛出身で鹿児島大学の大学院で建築を学び、ベガハウスに入社して4年目。ベガハウスでの仕事の内容や楽しさ、自身のキャリアについて話してもらいました。 

「地方就職のいいところは何だと思いますか?」という島村くんの質問に、「人と違う選択をすることで人と違うスキルを身に付け、レアキャラになりやすいこと」と回答していたのが印象的でした。

 

15時30分

お話を聞いた後は、田村さんに社屋を案内してもらいました。 

2016年に建てられた社屋は、ベガハウスのこだわりが随所に散りばめられています。 

執務スペースは、社員同士でオープンにコミュニケーションを取ったり、自由な発想がしやすかったりするように、天井を高くしています。一方で、図書スペースは天井が非常に低く設計されています。これは、低い天井の方が集中するときに向いているからだそうです。田村さんも、アイデアをひねり出すときはここを利用するそう。こういった、居心地の良い社屋が建てやすいのは、地方企業の特徴の一つといえそうです。

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16時

社屋に続き、敷地内にある「MOSHIMO BASE(モシモベース)」を案内してもらいました。この建物には、ShopBot(ショップボット)と呼ばれる、PC上でデータを作成すると木材を自動で切断してくれる機械が設置されており、デジタルファブリケーション(=デジタルデータによるモノづくり)を推進することを目的としています。

写真は、木から切り出したパーツのみで組み立てられる椅子です。MOSHIMO BASE内には、さまざまな試作品やパーツが置かれています。

ShopBotを使って実際に木材加工をしているところを見学しました。ベガハウスでは、地域住民向けにワークショップを開催したり、学校や大学と連携した制作実習を行ったりしているとのこと。地域に開かれた工房を目指していることがうかがえました。

 

17時

本日のインターンシッププログラムはここで終了。今日から2泊するベガ荘に戻り、薪ストーブの火を起こします。ベガハウスが生み出す暮らしを実際に体験してみることも、インターンシップならではの体験の一つです。

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21時

島村くんに、インターンシップ初日を終えての感想を聞きました。

「今まで地方の中小企業は、新しいことをやっていないと思っていましたが、ベガハウスは一つの事業に限らず、さまざまな挑戦や試行錯誤をしており、面白いことをやっている会社だと感じました。
なぜ地方の企業に都会の学生が来ないのか、についても考えてみました。このような問いはよく見かけますが、そもそも地方企業に都会の学生が分散されていくことがいいことなのかは分かりません。都会の学生が地方の企業に就職することを考える、という文脈の中で、地方と都会の問題や人手不足の問題も含めて広く考え、前提を疑っていくことで見えてくることもあるのではないかと感じました。」

二日目(1月23日)

9時30分

2日目の最初に訪問したのは「なかまの家」。ベガハウスのグループ会社IFOOがリノベーションを手掛けました。

この日は八幡会長が案内をしてくれます。なかまの家は、築100年を超える古民家を、地域コミュニティを活性化させるための「場」としてリノベーションしたとのこと。

▼Before

▼After

なかまの家では、定期的に鹿児島県内の出店者によるマルシェ「ナカマルシェ」が開かれ、地域の人たちが交流しているそうです。
メインの建物だけでなく、元々蔵だった場所を雑貨屋にしたり、防空壕だった場所を飲食スペースにしたりと、活用方法もとてもユニークです。

「とにかくこの場所をオシャレな出店者がいるオシャレな場所にしたかった」と語る八幡会長。「そうすることで、人が来たいと思うようになり、さらに来た人が見るだけでなく、買いたいと思ってくれる」と、デザインの重要性を語っていました。

昨日はベガハウスという会社についてたくさんインプットした1日でしたが、今日は、ベガハウスが地域で手掛けている仕事について知る機会が多くあります。島村くんは、積極的に質問をしたり、話を聞いたりしていました。

 

10時30分

続いて案内してもらったのは「萌蘖(ほうげつ)」。元は武家屋敷だった伝統的な建築を現代風にアレンジし、宿泊施設としてリノベーションされています。

ベガハウスは、日本の伝統的な「手仕事」をとても大切にしており、それを後世に残していくことを使命としています。「萌蘖は、細部まで手を抜かないこだわりの手仕事を、世界に発信していくための発信基地としていきたい」と、八幡会長は言います。

海外にも、手仕事を評価してお金を払ってくれる人たちがいる。その人たちに手仕事の価値を発信し、鹿児島に来たいと思ってもらうことで、人が増え、消費が増える。そして、住みたいと思う人たちが増えていく。自分たちは、そんなサイクルを回すための場づくりをしていきたい。八幡会長の説明にも熱がこもります。

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12時

ベガハウスが手掛ける建築や、その根底にある価値観を存分にインプットした後は、八幡会長が一押しのお店でランチをいただきます。

ベガハウスの話だけでなく、八幡会長自身のこれまでのキャリアや、働くことについての考え方など、さまざまなトピックについて話を聞くことができました。

 

13時30分

午後は、ベガハウスが手掛ける注文住宅の見学に行きます。今回案内をしてくれるのは、田村さんと同じ設計の部署で働く中西涼太さん。大学院卒業まで出身地である大分で過ごし、その後ベガハウスに就職して鹿児島に移住したとのこと。いわゆるIターン就職です。案内の前に、インタビューをさせてもらいました。

聞くところによると、ベガハウスの社員の半数は県外出身者なのだとか。ベガハウスは「多くの機会があって、チャレンジしやすい環境」であり、「モノづくりに妥協が無い部分が好き」だと語ってくれました。

 

15時

中西さんに案内してもらい、ショーホーム「仄々(ほのほの)」を見学しました。ショーホームとは、施主さんが住みはじめる前に展示用に借り受けている注文住宅のことです。今は全国の工務店が同じようなスタイルで展示会をしていますが、実はベガハウスが、このやり方の先駆けなのだとか。「ショーホーム」という言葉を商標登録しているそうです。

実際に建てられた家を体験しながら、家づくりのこだわりについて説明を受けました。

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16時

仄々にフラッと現れたのは、大迫学社長。

この2日間で島村くんがどんなことを見聞きし、そして感じたのかを聞きに来たのでした。鹿児島で体験したことを話しつつ、「都会の学生にどうやって地方の魅力を伝えますか?」「ベガハウスでは県外の学生をどのように採用しようとしていますか?」と臆することなく質問する島村くん。
大迫社長からは、地方で採用をする立場として「学生や求職者にとって、企業の魅力がすなわち地方の魅力になるのではないか」「未来を正確に予測しようとするよりも、変化に対応できることが大事」といった話を聞くことができました。

 

21時

2日目が終わり、残すところあと1日となりました。この日も島村くんに、感想を聞きました。

「2日目を終えて、どこでも働ける今の時代だからこそ、地方だとか都会だとか固定して考えるのではなく、やりたいことの変化によって自分の位置も変化させていければいいと感じました。都会と地方で同時に働いてもいい。けれども、その時に大事なのは、やりたいことを明確にすることはもちろん、地方がどのような特徴を持ち、都会と比べてどう違い、何ができる場所なのかを知っていることだと感じました。そうは言っても、『自分のやりたい事を明確化する』ことが一番の難題ですね……」

最終日(1月24日)

10時

インターンシップもいよいよ最終日。この日最初に訪問したのは、「面白い人がいるから話を聞いてみるといいよ」と八幡会長に紹介された坂口修一郎さんのオフィス。坂口さんは、鹿児島を拠点にイベントプロデュースや音楽活動を手掛けています。

鹿児島と東京を行き来している坂口さん。「鹿児島は、やりたいことがあればすぐに声を掛けられる距離感がいい」「1回は自分のいる場所を出ることで、見える景色も変わる」といった、地方と都会の両方に身を置いていたからこその意見をもらい、有意義なディスカッションをすることができました。

 

12時30分

坂口さんのオフィスを後にし、ベガハウスに向かいました。執務エリアでは、家具づくりのワークショップが開催されていました。ベガハウスでは、家づくりの設計の一部として家具や建具も手掛けており、定期的に家具デザイナーの村澤一晃氏を招いて、社内ワークショップを開催しているのだとか。

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14時

午後には、九州産業大学松野尾仁美先生の研究室の学生が、ベガハウスのインターンシップにやってきました。島村くんも一緒に参加させてもらうことに。

ベガハウスの谷征紀取締役から、家づくりの基本的な考え方のレクチャーを受けます。

その後、松野尾研究室の学生たちには、今回のインターンシップで取り組む住宅設計の課題が発表されました。

この日は雪が降りしきる空模様でしたが、レクチャーの後は今回の課題となる土地を実際に見に行きました。松野尾研究室の田中さん、志賀さん、赤木さんの3人の議論に入り、島村くんも意見交換をしました。

松野尾研究室の学生たちは、この後いよいよ本格的に課題に取り組んでいくのですが、島村くんのインターンシップは、時間が来てしまったのでこれにて終了です。

ベガハウスが手掛ける多くの仕事に触れ、さまざまな視点を持った人たちの話を聞き、地方就職についてひたすら考える、そんな濃密な3日間でした。

3日間を終えて

地方企業への偏った見方がなくなり、
フラットに選択肢として考えられるようになった

島村くんに、この3日間のインターンシップを振り返ってもらいました。

 

今回、島村くんを受け入れてくれたベガハウスの八幡秀樹会長からは、次のようなメッセージをいただきました。

「三日間のインターンシップご苦労様でした。
現代では、場所を問わず、働く環境が整ってきています。働くとは、稼ぐ、スキルアップ、そして、豊かに暮らす事ではないでしょうか。だからこそ、働く場所と、ボス探しが重要になってきます。
地域資源の再発掘と活用により、交流人口がひろがっています。学生さんの未来におけるスキルを伸ばし、活用できる場所として、地方企業にも、伸び代があると確信しています。今後の活躍を期待しています。
『また、鹿児島へおじゃったもんせ。』(また、鹿児島へおいでください。)」

「地方」「都会」という枠にとらわれるのではなく、大事なのは自分のやりたいことであると気付いた島村くんのインターンシップ。
皆さんもぜひ、地方企業のインターンシップに足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

※この記事に掲載されている情報は、2023年3月にサイトに公開した時点での情報です。