地方企業インターンシップ 現場レポート【八葉水産】
『自分の幅が広がった』ーー
東京の学生2人が宮城県でインターンシップに挑戦!
みなさん、この夏はインターンシップに参加されましたか?
地方エリアでの就職を希望する人から、地方企業ではインターンシップをやっていないのでは? といった質問を受けることがよくありますが、地方企業でもインターンシップは実施されています。
最近は自治体でもインターンシップに力を入れているところが多く、普段は東京圏や大阪圏の大学に在学している人が、宿泊しながら地方企業でインターンシップに挑戦する例も増えてきました。
今回は、普段は東京の大学に通う2人の大学3年生が、宮城県の企業でインターンシップを実施している様子を取材させていただきました。
インターンシップにこれから参加したいという方や、他の方の事例を知って自らの振り返りをしたいという経験者の方も、ぜひ読んで参考にしてみてください。
取材対象
・実施場所:宮城県気仙沼市
・受け入れ企業:株式会社八葉水産
昭和47年創業。塩辛やめかぶなどの水産加工食品を製造・販売している。
東日本大震災で全ての工場が被災したが、現在は2つの工場を再建し、忙しく稼働している。
・インターンシップ実施者:
小島レイさん
中央大学経済学部3年
水野愛美さん
明星大学デザイン学部3年
・インターンシップ実施期間:
2018年8月27~31日
インターンシップの様子
小島レイさん
埼玉県在住。母親の実家が岩手県にあったこと、また、スノーボード好きが高じて、東北地域が好きになる。社会人になったら家を出て自立することも考え、東北で働くこともよいのではないかと思い始める。
LO活プロジェクトで今回のインターンシップのことを知り、参加した。
―担当業務は何ですか?
営業企画の仕事をやらせてもらっています。
昨日は営業社員の方に商談に連れて行っていただき、実際にお客さんと打ち合わせをするところを見せていただきました。
今日(3日目)は、地元のスーパーで試食販売を体験させてもらいました。
9時から16時まで仕事の体験をして、日報を書き、担当の方に振り返りのコメントをいただきます。
最終日は、社長に販促企画の提案をさせていただくことになっています。
―日々の生活はどうしていますか?
インターン中は、会社の近くのホテルに宿泊しています。交通費や宿泊費は企業と県で負担してくださる分があるので、本当にありがたいです。
仕事が終わると、夜はインターン仲間の水野さんとご飯を食べたりとか。周りが本当に静かですし、涼しくてびっくりしました。
―どんなことが印象に残りましたか?
昨日は実際に商談の様子を見せていただいたのですが、商談を見たのは初めてで、こうやってビジネスが動いていくんだ、という様子が見られて大変勉強になりました。
今日はスーパーで試食販売の仕事をしていたのですが、「八葉水産の商品です」というと、「ああ、八葉さんの!」と言ってくださるお客さんが何人もいて、地元でちゃんと知られていることの影響力ってすごいと思いました。
―インターンに参加してみてどうですか?
周りの友達は東京の企業のインターンシップに参加していて、「なんで宮城まで行くの?」と言われて、軽い気持ちで参加して大丈夫だったのだろうかと不安でした。でも参加してみたところ、会社の皆さんが親切で、いろいろな経験をさせていただいて、宮城まで来て本当によかったと思います。
水野愛美さん
東京都在住。大学ではデザインの勉強をしている。祖母の家が岩手県にあり、東北になじみがあった。
東北地方で、企画やデザインに関わる仕事が体験できないかと探していたところ、大学の掲示板でぴったりのインターンシップ先を見つけ、参加した。気仙沼には今回、初めて訪れた。
―担当業務は何ですか?
商品開発の仕事をしています。
昨日は、製造現場の見学と、たくさんの商品の説明をお聞きしました。
今日は、土産用商品のパッケージデザインの企画をしています。
最終日に社長に企画を発表する時間をいただいていて、うまく進めばアイデアが採用される可能性もあるとのことです。
―インターンに参加してみてどうですか?
すごく楽しいです。自分の幅が広がると思います。気仙沼のことが好きになりました。
社長との話
この日は、業務終了後、清水社長が話す時間をとってくださいました。
企業経営やこれからの働き方、就活のアドバイスまで、様々なことを語っていただきました。
―なぜインターンシップを受け入れようと思ったのですか?
震災の影響で中堅の社員が減ってしまいました。
今、会社は好調で、積極的に採用を進めています。今年は3人の大卒者が入社しました。
インターンシップを受け入れることで、社員が、新しいメンバーを受け入れるトレーニングにもなると考えています。
―会社を経営するうえで、普段どんなことを意識されていますか?
10年前までは、生産性を高めることに集中していたが、それだけではだめだと思っています。人口増加を前提にしたビジネスから、人口減少の時代に合わせたビジネスをしていかなければなりません。常に観察して、会社を変化させていく必要があります。
現在、2つの工場を再建しましたが、供給が追いつかないので、いろいろな取組みをしています。専門家の力を借りて生産性を上げていくのも1つですが、従来通りに生産性の向上を目指してつくればよいというわけではなく、新しいことも考えていく必要があると思います。
中小企業は、社会に変化を生み出す事業をしやすい環境にあります。人は変化を嫌うけれど変化は必要です。大きな組織では、今いる社員を否定しなければならないので、それが足かせで変化が遅くなる。その点、小さな組織は挑戦をしやすい環境があります。
また、東北はとても可能性があふれた地域です。東京は今後も酷暑が続くと思いますが、こちらは生活するにはとても快適。東北でよい製品を作って生活し、東京のマーケットで売る形が理想だと思います。
―会社では多様な働き方を実践されているそうですね?
海外プロジェクトも進めていますが、それを担当している社員は、埼玉に住んでいて、必要な時にオフィスに来る他はリモートワークで進めてもらっています。多様な働き方を実現することで、多様な人材に関わってもらえます。イノベーションは人と人のつながりから生まれるので。
―インターンの2人へのメッセージ
今は時代の過渡期。これから社会に出ていく人はその過渡期を生きていくことを意識してください。
やりたいことを仕事にするには、仕事の内容から入ることと、たくさんの人と会って話をすることが大事だと思います。こうやってインターンシップに参加することは非常によい経験になります。がんばってくださいね。
様々なことを語ってくれた清水社長。
お話を聞いた後、小島さんは「聞いていて鳥肌が立ちました。こんなに世の中のことを考えて話を聞く機会がなかったので。すごくいい経験をさせてもらっているんだなって改めて思いました。」と感想を述べてくれました。
まとめ
今回取材させてもらった2人は、東京の大学に通い、就活のことが気になりだした普通の大学3年生です。祖父母がいるということでなじみはあったものの、宮城で働くということを強く決めているわけでも、何か確証があったわけでもありません。
でも、好奇心と少しの勇気で踏み出して、インターンシップに参加した結果、普段ではなかなかできない経験を得ることができました。
自分が知っている東京の有名企業のインターンシップに参加するのもよいですが、地方にも面白い企業はたくさんありますし、インターンシップを行う企業も増えてきました。少人数で様々な経験ができたり、社長との距離も近い、地方企業のインターンシップはおすすめです。何日か就業体験を行うことで、会社の雰囲気もわかります。
冬にもインターンシップを行う地方企業はたくさんありますので、興味をもった方はぜひ参加してみるとよいと思います。