地方ビジネス最前線
第3回
2016.12.7(水)

地方のまちが可能にする、人生の実験と創造

今回は、地方都市を「人生の実験を行うフィールド」と見立てて、新たな価値を見出すことに主題を置き、福井県鯖江市で、「JK課」や「ゆるい移住」などのプロジェクトを生み出す若新雄純さんに語っていただきました。

経済が成長しない社会の中で「キャリアアップ」が意味を持たなくなった時代に、目指すべき生き方の正解はなくなりました。そこで、次の正解を探すのではなく、もともと正解はないという発想になって、そこに至る過程を楽しむ、つまり「人生の実験」を繰り返していくことが今の生き方になっています。そして、その実験をできる余地が地方にこそあると若新さんは主張します。地方には、良くも悪くも人もシステムも都会のように緊密でないので、そこに余白が生まれ、いろいろなことを試せる余地があります。
若新さんが福井県鯖江市ではじめた「ゆるい移住」というプロジェクトは、まさにその余白をいかした移住プログラムで、「移住者何人」というような目標はいっさい立てず、参加者に目標を課すこともなく、ただ個人に人生の実験を行う猶予をもたらしました。結果、6人も鯖江に残り、本人たちは様々なことに挑戦しながら、人生の実験の過程を楽しんでいます。

質問コーナーでは、実験を可能にする地方のコミュニティの重層性や、成果が想像しずらいプロジェクトをいかに実現していくかなど、なぜ若新さんが次々と面白いプロジェクトを実現できるのか、その裏側も語っていただきました。

株式会社NewYouth代表取締役/慶應義塾大学特任講師
若新 雄純
慶應義塾大学大学院修了、修士(政策・メディア)。専門はコミュニケーション論。
人・組織・社会における創造的なコミュニケーションを模索する研究者・プロデューサーとして、実験的な政策やプロジェクトを多数企画・実施。
全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や、総務大臣賞を受賞した福井県鯖江市の「鯖江市役所JK課」、同じく鯖江市の若者が家賃無料で半年間体験移住できる「ゆるい移住」などをプロデュース。
著書に『創造的脱力~かたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論』(光文社新書)がある。

これまでのイベント

第1回
地方だからできる新規事業の可能性〜ヤンキーの虎と若手起業家

現在、地方では新たな存在が事業開発の立役者となりつつあります。
その1つが、2016年発刊の「ヤンキーの虎」(藤野英人氏著)で取り上げられたような、地方で多様な事業を経営してミニコングロマリットを形成する経営者の存在です。また、もう1つが、外部から地域に入って、これまでになかった発想でビジネスを展開する起業家です。
その代表である2人が、地方ビジネスの新たな可能性を語ります。

第2回
地方を変えるUIターン人材

地方では、 UIターン人材が新たなビジネスを起こしています。
彼らがどんな切り口でビジネスを始め、地域にどんな影響を与えているのか。
地方で「稼げる仕事」を成立させるノウハウを、商店街改革の第一人者である木下斉氏と、神奈川県小田原市にUターンした起業家山居是文氏とのクロストークから読み解きます。

第4回
教育を通じた地域の活性化

現在の経済の中心から遠く離れている所から、未来の種は生まれる。
なくなることで地域の衰退に病院以上に影響を与えるのが学校です。廃校が危ぶまれる離島や山間部の高校を、特色ある教育を行う場に変えることで、今後の社会にとって最先端の教育を行う場所に変える。藤岡慎二氏の取組みから、地方の高校の新たな可能性を探ります。