イベントレポート

イベントレポート(vol.1)
『地域で見つけた自分らしい働き方 〜ブルーオーシャンなローカルビジネスとコミュニティの話〜』

兵庫県丹波市で自分らしい働き方を見つけた3人の物語を追う

2019年7月19日(金)に東京茅場町のFinGATE KAYABAで開催された「地域で見つけた自分らしい働き方〜ブルーオーシャンなローカルビジネスとコミュニティの話〜」のイベントレポートをお届けします。

イベントでは兵庫県丹波市エリアへ移住した3名の若者をお招きし、地方での仕事や暮らしについて、参加者と自由に話してもらうグループワークを行いました。イベント終了後には、登壇者3名との懇親会や、8月に丹波市で実施される「SPLASH!!丹波!!2019」という水遊びイベントのタイミングに合わせて丹波を訪問し、実際の地方暮らしを案内するツアーの案内も行いました。

イベントのテーマは、「ブルーオーシャンなローカルビジネスとコミュニティとつながるきっかけ作り」です。どのような内容だったのでしょうか。

イベントの開催概要については、こちらのページからご確認ください。

 

ブルーオーシャンなローカルビジネスとは?

「ブルーオーシャン」とは、競争相手のいない未開拓のビジネス市場のこと。反対語は「レッドオーシャン」で、血で血を洗う競争の激しいビジネス市場ということから赤い海という表現となっています。今回のイベントテーマとなっている「ブルーオーシャンなローカルビジネス」には、地方だからこその「ブルーオーシャン」という意味があるのですが、どういうことなのでしょうか?

まずは有賀史朗さんの基調講演からはじまりました。

 

地方では、東京の経験が希少価値

東京でシステムエンジニアの仕事をしていた有賀さんは、移住先の丹波でWEB制作会社を立ち上げました。大きく東京と違っていたのは、お客さんの対応だったそうです。

東京では、顧客企業にWEBの担当者がいて、ある程度専門的な話をしていきます。
しかし丹波では、いきなり社長さんからざっくりした相談が来たりします。しかも最初は「ホームページを作りたい」という相談だったものが、よくよく話を聞いてみると「そもそも会社の広報活動をどうすれば良いか分からない」ということもよくあるようです。
SNSの活用方法や問い合わせフォームを設置したりという基礎的なことは、東京では対応しているお客さんがほとんどですが、丹波ではそんな知識でさえ希少価値だったりします。

 

地元にWEB制作会社などなく、東京の書店のようにWEBやマーケティング関連の専門書が豊富という訳でもない丹波では、WEBに関する知識を有する人がいないため、相談できる人がいなかったようです。有賀さんは、「特に自分がスペシャリストだと思ったことはありません。ただ普通に東京でWEBの仕事をしていたその知識が、こんなにも人を助けることになるとは思っていませんでした。」と語ります。

 

競合がいないからこそのブルーオーシャン

そんな有賀さんの事業は丹波でたった1社。つまり丹波ではWEB制作会社が1社なので、競合相手がいないのです。競合がいないということは、市場を取り合う必要ない「ブルーオーシャン」なのです。ですから、「他社との差別化や独自技術」という以前に、お客さんの悩みを聞いて、しっかりと改善策を提示できれば良いのです。特にスペシャリストでなくても、一般的な知見があれば「地方ではしっかりと活躍できる」ということです。

ただし、東京の会社とは企業規模が異なりますので、低コストでできる案を提案することが望まれます。WEBは無料で活用できるツールがたくさんあるので、そのツールの活用法を教えるだけでも仕事につながるそうです。「もちろん東京よりも価格は安くなります。でも、生活コストが異なりますから、収入は減少しても気になりません。」と笑顔で語っていました。

 

シェアハウスを作ったら、移住者相談窓口を受託

続いての登壇者は、井口元(はじめ)さんです。
井口さんは、30歳になった際「このままでいいのか?」と考えはじめたタイミングで知人が選挙に出馬。「丹波市で選挙に出るから手伝って!」と頼まれ手伝いに行ったところ、後援会長と仲良くなり、誘われるままに丹波へ移住。その後家族も呼び寄せ、有賀さんと会社を立ち上げています。

現在は有賀さんと一緒に会社を立ち上げていますが、丹波へ移住してからそれまでの経緯はどのような感じだったのでしょうか?

 

友人の選挙の手伝いに行って移住を勧められた井口さん。最初は仕事も無かったため、移住を勧めてくれた後援会長の会社を手伝う形で社員としての生活で移住生活をスタートします。家は後援会長が自宅前の空き家を買ってくれて、その後Iターン専用のシェアハウスにしてみたということです。

シェアハウスを立ち上げると、面白いことをはじめた移住者がいると地元で話題になってゆきます。そのタイミングで「丹波市が移住相談窓口を民間に委託する」という話があり、「周囲からやってみろ」と言われたため応募してみたところ、採択されて丹波市の移住相談窓口を任されるようになったそうです。
そして移住希望者として、その移住相談窓口を訪れた有賀さんと出会い、新たな事業を起こすことにつながっていったそうです。
井口さんは、地方での人とのつながりから新たな事業が生まれる地方生活の魅力について語ってくれました。

 

地域の外から稼げる街づくりを

最後の登壇者は安達鷹矢さん。新卒で入社した大手EC企業を退職後、丹波市のお隣、丹波篠山市へ移住。古民家再生を専門に活動する社団法人でプロジェクトを担当した後、日本酒Barの開業などの経験を経て、現在は「ローカルPRプランナー」として活躍中で、NHKのドキュメンタリー番組U-29でも取り上げられたこともある地方創生の先駆者の一人です。2017年に株式会社Local PR Planを創業。

 

安達さんが丹波篠山市へ移住してきて考えていることは「地域の外から稼げるまちづくり」だそうです。

また、安達さんの活動とは別ですが丹波市は兵庫県の東部に位置し、京都府福知山市と隣接する自然豊かなエリア。「土曜日は丹波市に」というキャッチコピーで、週末の観光客を呼び込んでいます。

安達さんは少し違った方法で観光客を呼び込んでいるようです。

 

外から人を呼べる人を50人集めよう!

安達さんは「外から年間300人くらいを呼べる個人事業者を50人くらい集めてくることを目標にやっている」と語ります。それぞれの個人が年間300人を自身が住む丹波篠山市福住という地域に連れてくれば、年間約15,000名の観光客が丹波篠山市福住のまちを歩くことになります。その観光客が50人の個人のお店を行き来したり、コラボの仕事につながるような仕組みを作るのが僕らの仕事と「ローカルPRプランナー」がすべきことを語ってくれました。ただし、そんな目標を掲げてはいますが、無理をしないのが地方の良さです。目標に届くまでは、畑仕事などもやれば食べることには困りませんからと笑顔で語っていました。
では、外から人を呼べる人とは、どのような方なのでしょうか?

安達さんは福住地域の地図を見せながら、どんな方が活躍しているかを解説します。
まずは自分が日本酒Barをやり始めたころ、吹きガラスの工房もできました。
このガラス工房をやっている方は有名な方で、小山薫堂さんや隈健吾さんと一緒に「日本の50人の匠」に選ばれているような方です。その他にも、30年くらい自作のビールで研究していた方がはじめたクラフトビールのブリュワリーができたり、かつて「なるほど!ザ・ワールド」という人気テレビ番組のディレクターをやっていた方の薪ストーブのギャラリーができたり、イタリアンレストランができたりしたのが約5年前。さらにここ2年で10件くらいの新しいスポットが立ち上がっていますと、福住の移住者が開業した場所を紹介してくれました。

自分たちのやりたいことを実現しながら、お互いの仕事や生活を支え合う仕組みをつくる「ローカルPRプランナー」の仕事について話している安達さんの表情はいきいきしていて、楽しさが伝わってきました。

 

「地方暮らし」何でもお答えします!

3名のパネラーの話が終わると、それぞれのパネラーの周囲に集まり質問コーナーがスタート。かなり具体的な質問で盛り上がりました。
今回は、その一部分をご紹介しましょう。

 

収入は減りますよね?

確かに収入は都会にいた頃より減少しました。でも生活費も下がるので、生活的には大丈夫です!
生活費は、年間100万程度でも全然問題ありません。最近は畑もはじめたので、食費も更に少なくなっています(笑)。収入は金額としては確かに少なくなりますが、余剰の収益はさほど変わらないと思っています。ストレスも無く毎日楽しく暮らせることは、何よりのプラスですから、何も気にならないですよ!(安達さん)

 

地方生活の何が楽しいですか?

私は元々「地域のPR」に興味があったので、それを実践しているだけで十分地方移住した価値を感じています。例えば、築150年の古民家って、誰も住んでいなければ単なる空き家で、場合によってはゴミと同じ扱いになる場合もある。でも、方法次第でそれを価値あるビジネスに変えていくこともできる。例えば、最近借りている一軒家は月4万程で借りているのですが、敷地がかなり広いのでシェアハウスにすることで、家賃収入も得られるし、移住促進にもつながります。
自宅は同地区で150万で購入していて、その一室でBARを開業したのですが、元手が少ないしランニングコストも少ないので分すぐに収支がプラスにできるんです。まあ都会の時に比べたらわずかですけど(笑)。(安達さん)

 

地方創生の魅力って何ですか?

地方で移住者が新しいことをはじめると、そこが街ではじめての観光スポットになるんですね。そこに人の出入りができはじめると、地元の人も徐々に利用してくれるようになってビジネスになるんです。そして、その人の輪がだんだん広がって、更に新しいことが生まれる。この新しいことが生まれる体験が魅力ですね。新たなことをはじめるときも、打ち出すものがしっかりしていれば成功することを見てきていますから、そんなに不安にならなくて大丈夫だと思います。(井口さん)

 

仕事はどうやって見つけますか?

地方での就職は、完全に「ハローワーク」で探すのが一番です。なぜなら、転職サイトの営業が来ないので転職サイトに掲載されないんですよ(笑)。あと、地元のいろいろな集まりの場に参加すると、更に世界が広がりますよ。(井口さん)

 

地元人脈はどう広げればいいですか?

私がやっているのは「知らない作戦」です。移住直後は、現地のことを知らなくて当然ですから、その「知らない」ことを利用して図々しくコミュニケーションの接点を作ります。最初は、地元の商工会や消防団などの既存の団体に加盟します。次に、その団体の集まりには必ず参加します。そのときに知らないふりして、お偉いさんの隣とかに陣取って話をして仲良くなります。周囲からも怒られますが、そこも接点をつくるひとつのきっかけと考えれば、笑い話です(笑)。よく「地方では、よそ者は嫌われる」って言われますが、私が移住してきて今一番の協力者は、移住した時点で一番厳しく対応していたじいちゃんですよ(笑)。懐に飛び込んで仲良くなったら、きっとみんな協力してくれます。(井口さん)

 

移住のきっかけは何でしたか?

私の場合は、LO活セミナーでしたね。東京での仕事に悩んでいたときに、LO活のセミナーを知って参加して、そこでLO活の担当者と話をする機会があったんです。地方のストレスのない生活の話をセミナーで聞いた後、その担当者の方にそのときの状況を聞いてもらったところ、「近々地方で開催されるイベントに行くから一緒に行かないか?」と誘ってくれました。それで地方移住を意識して初めて訪れたのが丹波です。そこで出会った方々の印象が良かったので、その場で丹波への移住を決めてしまいました。丹波とは何の縁もなかったので、行き先が別の場所だったら、別の場所に移住していたかもしれませんね(笑)。(有賀さん)

 

今後の開催予定

LO活では、このようなイベントを順次開催予定です。地方移住者と接点を持って、いろいろな現地の暮らし・仕事の話を聞くことは重要なことです。LO活で取材してきた多くの移住者が、現地の人とのつながりがきっかけで移住を決めたと話しています。
ぜひ、下記URLから今後の開催予定をご確認の上、お気軽にご参加ください。

https://local-syukatsu.mhlw.go.jp/seminar/?sponsor=jp00&place=&theme%5B%5D=emigration&target%5B%5D=general&date=&result=true

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