イベントレポート

イベントレポート(vol.7)
『東京を卒業して、新しい自分と出会う!~東京卒業式 & 東京卒業作戦会議~』

東京卒業式 & 東京卒業作戦会議とは?

2019年度のLO活イベントシリーズ第7回は、2020年1月23日(木)に東京駅八重洲口の移住・交流情報ガーデンで行いました。

今回のテーマは「東京卒業」

不安や疑問がありながらも、東京を卒業し、地域で働き暮らしていくことを決めた人たちをみんなで送り出すとともに、東京卒業を検討している人たちがファシリテーターを交え、具体的な東京卒業作戦を練っていくイベントです。

今回は、東京からの移住を決めたばかり、ほやほやの「東京卒業生」2名にご登壇いただき、東京卒業までの気持ちの変化や移住の決め手になったことなどのお話をうかがいました。そして講演後は、ご参加いただいたみなさんと「どのように卒業準備を進めるか」の作戦会議を実施しました。

 

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実は、平成26年内閣府の調査によると、男女とも「10・20代が最も東京卒業を検討している」のです。

同調査によると、今後移住する予定又は移住を検討したいと回答した人(「今後1年」「今後5年をめど」「今後10 年をめど」「具体的な時期は決まっていないが、検討したい」の合計)が、全体の約4割を占めているのです。性別×年齢層別に見ると、男女とも10・20代で移住する予定又は検討したいと回答した人の割合が比較的高いことが分かります。

男性の50代が高いのは、早期退職制度などを利用したセカンドキャリア設計が要因かと思いますが、10・20代はそうではなく、何かしら東京に生きづらさを感じたり、地域により大きな可能性を見出しているからではないかと思います。

※若者の「東京卒業」に関する街頭調査の結果を、当イベントの告知記事に掲載していますので、ご参照ください。

 

出所:内閣官房「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」より<br> 出所:内閣官房「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」より

実際に「東京卒業」された方は、どのようなことを考えて卒業に至ったのでしょうか。

まずは、ほやほやの「東京卒業生」からお話をうかがいます。

 

やりたいことが仕事である楽しさを知る

田村 裕太郎さん

1995年3月、新潟県新潟市生まれ。24歳。
一橋大学経済学部卒。大学時代から地方に猛烈な魅力を感じつつも、新卒で東京の不動産会社に就職。しかし自分の想いと行動のギャップに気づき、2018年4月から愛媛県西条市に移住し、起業型地域おこし協力隊として市内の限界集落の創生に取り組む。

 

Iターンで愛媛県へ移住した田村さんですが、移住先の愛媛県西条市は2020年版 住みたい田舎ランキング(宝島社『田舎暮らしの本』より)の大きなまち・若者部門で1位になった、近年移住者が急増しているエリアです。

田村さんはそこで、宿泊施設の運営や空き家の活用などの仕事をしています。
どのような経緯で、移住を決めたのでしょうか。

田村さんはもともと地域活性に興味があったそうです。大学時代は生まれ故郷の新潟県にある「粟島浦村」の研究をしており、就職活動の時に地域就職も考えたそうですが、大学の先生に「一度、東京でビジネスを経験した方がいい」と言われて、不動産会社に入社します。

会社では投資商品の営業などを担当。勉強することばかりで苦しみながらも楽しくやっていたそうです。しかし一方で、自分がこうしているうちにも地域はどんどん衰退していくし、自分がやっていることは地域活性には繋がらないという気持ちもあって、後ろ髪をひかれる思いもあったということです。

加えて、よくも悪くも東京での仕事に身体が慣れていきます。

例えば、満員電車や自然の少ない環境でも平気になっていきます。それって本当にいいことなのか?感覚が麻痺し始めているんじゃないか?…と不安になり、このままでは「自分は何がしたかったのか」すら麻痺して分からなくなってしまうと感じたそうです。

 

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そんな時に目に飛び込んできたのが、「Next Commons Lab」という近代化・都市化の次の時代の共同体の形を考える団体の起業家募集記事。

「自分を信じて創造する起業家募集!」のキャッチコピーに導かれ、「コミュニティディレクター」という、主に宿泊施設や周辺のコンテンツ開発を事業の中心として、観光・インバウンド事業、滞在型プログラムなどの実施を担っていく仕事に出会います。

見つけた!
直感的にそう感じたそうです。

すぐに応募して、必死でプレゼンを突破し、見事採用!

実際に移住した今は、「やりたいことが仕事である楽しさ」を満喫しているそうです。

田村さんは、最後にこんなメッセージを残してくれました。

「若さは何よりも強力な武器です」。

賃金という意味では、東京卒業で減収となりました。でも、地方は家賃などの生活費が安く、食材をいただくことも多く、特に収入額の減少は気になることはありません。そして地方には若者が少ないので、とても大切にしてくれるし、やりがいを感じます。

満員電車にも乗らないのでストレスは軽減しますし、仕事も遊びのように楽しめて幸福度は上がっています!ということでした。

 

流されて生きるのも楽だけど、やっぱり「面白いほうの仕事」がしたい!

山碕千浩さん

1994年、島根県飯南町生まれ、25歳。
早稲田大学を卒業後、主に飲食店を経営している関東の会社に就職し、カフェ社員として調理や接客に従事。2年半勤務の後、19年12月に島根県へのUターン転職を決め、現在は株式会社石見銀山群言堂グループにて、暮らしに関わる仕事をしている。

 

島根県から東京の大学へ進学し、東京で働き始めた山碕さんですが、社会人になり2年を経過した頃、多忙な業務に疲れ「退職」したいと感じたそうです。「転職」ではなく「退職」なのは、多忙な生活の中で、仕事と転職活動を同時に行える自信が無かったから。一度立ち止まって「退職」し、アルバイトに切り替えながら転職活動を行ったそうです。

転職活動をはじめると、仕事は2種類のタイプに分けられると気づいたとか。

1つは、いわゆる「労働」。職場に行って、一定時間決められたタスクをこなす働き方。時間と引き換えにお金を稼ぐこと。

もう1つが、「なにかはわからないけど、面白いこと」。やりたいことをやって生きていくこと。でも、その当時の山碕さんには「自分が何をしたい」のか、イメージできなかったそうです

この2つの働き方を考えた時、山碕さんは「社会の歯車でもいい」と思うこともあったと言います。なぜなら「そのほうが楽だから」。会社の指示に従って決められた時間を働けば、収入は得られる。自分でやりたいことを見つけられていないし、それもいいのかな…と考えたこともあったとか。

しかし、そこで思い出されたのが「現状維持は後退だ」という言葉。山碕さんはその言葉を思い出し、「自分は面白い人でありたい」という気持ちと「流されて生きるのも楽でいいよ」という気持ちの狭間の中で、葛藤しました。

その結果、「自分は他人からも面白い人と見られたい」という意識が芽生えてきたそうです

でも、「面白いほうの仕事」をしたいと思って求人サイトを見ても、仕事が探せません。普通の求人サイトの検索は、「面白いこと」で検索できないから。そして、自分自身の「面白いこと」も明確にできていなかったからです。

 

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そんな時に出会ったのが、「日本仕事百貨」というサイト。

このサイトは、求人情報の掲載方法が独特で、仕事の内容を読み込まないと、その企業の情報が出てこないのです。資本金や募集職種、給与や求める人物像、社名でさえも最後のほうまで読み進めないと出てきません。

ここで見つけたのが、島根の今の会社の記事。特にUターンしたい訳ではなかったそうです。たまたま面白いと思った会社が地元の島根県だったのです。同じ島根県内ですが、会社があるエリアは子どもの頃に一度行ったことがあるかどうか、記憶も曖昧なエリア。地元県に戻ったという意味ではUターンになるのかもしれませんが、気持ち的にはIターンだったと言います。では、その記事のどこに魅力を感じたのでしょうか?

最後に、山碕さんが当時、「日本仕事百貨」で今の会社の記事を読んだときの感想メモを見せてくれました。

書かれていたのは、こんな内容です。

「自分には何もできないであろうことが目に浮かんですごく怖い。何もスキルがないし、知り合いもいないし、この会社に入ることをイメージするとが怖かった。でも、何も知らないから、勉強するために働こうと思った。学び続けることが好きだから。どんな働き方があるのか、どんな考え方があるのか、それを勉強するのに、こんなに打ってつけのところはないんじゃない?いろいろ教えてもらえばいいじゃん!(私の年齢なら)まだそれが許されるのだから。」

ご自身の葛藤した大切な気持ちを、絞り出すように伝えていただいたメッセージは、「動き出したいけどどう動いていいのか分からない」という若い世代に勇気を与えてくれる力強いものでした。

 

東京卒業作戦会議

「東京卒業生」のお話をうかがった後は、参加者のみなさんが「どうやって卒業を迎えるか」の準備に関しての「作戦会議」が行われました。

卒業生の田村さんチーム、山碕さんチームの2テーブルに分かれていただき、卒業生への質疑応答も含めて、ご自身がどのように準備すればいいのか、イメージしていただきます。

両テーブルともに、活発な議論が行われました。どんな議論が行われていたのでしょうか。

 

■SNSなどで、東京の友達と比較しませんか?

イベント参加者の中には、地方から東京の大学に進学した大学生もいらっしゃいました。そんな大学生からの質問は「今時SNSで友達の暮らしが伝わってくる中、東京の友達の暮らしのほうがいいな…なんて比較したりしませんか?」というもの。

登壇者の田村さんはきっぱり「それはないです!だって東京の友達より、自分のほうが楽しく生きている自信がありますから。」と回答。

確かに都会に憧れて東京の大学へ進学を決めた学生から見れば、東京は楽しいところがたくさんあり、かつて都会に憧れて地元を離れた自分の目線で考えると、「都会の生活が上で地方が下」なのかもしれません。

でも、東京卒業生からすると「上下という発想はなく、自分がどうか」ということなんですね。いかに充実した生活をしているかが伝わってくる会話でした。

 

■いきなり移住?最初は二拠点生活から?

東京卒業に向けて不安なのは、やはり「その地域になじめるか」だと思います。いきなり移住してなじめなかったら…。そんな不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、最近は「二拠点生活」という発想も浸透してきています。実際に「二拠点生活」をされている参加者の方から、こんな意見が飛び出しました。

「戻る場所があると安心だから、二拠点がいいのではないでしょうか?」

その方は静岡出身で、仕事は東京で行い、週末に実家に帰る二拠点生活をされているそうです。そして、二拠点のメリットは「気持ちの切り替え」だと言います。

東京にいる時は完全に仕事モード。バリバリと仕事をこなして暮らしていますが、週末新幹線に乗ると、急に仕事から離れてOFFモードに切り替わるのだそうです。このモードの切り替えスイッチが、環境の変化によって自動的に切り替わるのがいいとおっしゃっていました。

 

■どうやって暮らすエリアを探す?

山碕さんチームでは、東京卒業生の山碕さんにこんな質問がありました。

「どうやって暮らそうと思うエリアを選べばいいのですか?」

漠然と東京を出たい、地方移住したいと考えても、Uターンでなければ暮らす場所を考えるところから始まりますから、暮らす場所を選ぶのは「東京卒業への第一歩」かもしれません。

山碕さんは、こう答えました。

「私は蔦屋書店で気になった本からヒントをもらいました。」

一般的な書店は、本が探しやすいように、きれいにカテゴライズして陳列されています。しかし、アート作品などの多い蔦屋書店は、独特なレイアウトで書籍が陳列されているので、その日の気分に従って目に飛び込んでくる本が違ってくるのだそうです。

そして、気になった数々の書籍を眺めて、そのジャンルなどから「キーワードを拾い集める」。そのキーワードを大切にして、友達とそのキーワードで話をして、その時に友達と話している自分の反応などを参考に、その方向性が自分に合っているのかを確かめていくのだとか。

素敵な自己分析の方法ですね。

東京にある、移住相談施設を活用しよう!

さて、そんな「東京卒業作戦会議」も終わり、参加者の方が「どのような手順で卒業の準備をするか」とイメージをしていただけたのではないかと思います。

最後にイベントを主催したLO活から参加者の方にお伝えしたのが、こんな話でした。

 

■やりたいこと・住みたい場所の選択肢を広げましょう

「東京を卒業したい」そう思った場合、次に「どこで暮らそう・どんな仕事をしよう」と考えると思います。

前述の山碕さんのように、本屋でそのヒントを見つける方法もあると思います。さまざまなWebコンテンツを検索するのもいいと思います。

ただ、そんな時に思い出していただきたいのが「東京にも、地方移住に関する情報満載の施設があるということ。」

当イベントの会場でもある、東京駅八重洲口の「移住・交流情報ガーデン」には、壁一面に日本全国の道府県の移住パンフレットがビッシリと置かれています。

 

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LO活のアドバイザーも常駐していますので、どのような暮らしがしたいのかイメージできていなくても、「これまでの生活の中で楽しかったこと、これからやってみたいと思っていること」などをお話いただければ、その方の思考にあったエリアにどのような候補があるのかを提案させていただきます。

施設内にはたくさんのパンフレットもありますし、全国の自治体が作成したPR動画を自由に閲覧していただくことができますので、そのエリアの雰囲気を感じていただきながらお話を進めることができます。

ご相談は無料ですので、「地方移住」にご興味があるようでしたら、ぜひ一度足を運んでいただければ幸いです。何の準備もしなくて結構です。どのような資料があるのか、パンフレットを見に来ていただくだけでも結構です。

さまざまな情報をインプットして、やりたいこと・住みたい場所の選択肢を持っていただければと考えています。

移住・交流情報ガーデン

・[所在地]東京都中央区京橋1丁目1-6越前屋ビル1F
・[開館時間](平日)11:00-21:00 (土日祝)11:00-18:00 [休館日] 月曜
・[問い合わせ]iju-garden@outlook.jp

・[アクセス]
JR/東京駅(八重洲中央口)より 徒歩4分
地下鉄/東京メトロ銀座線 京橋駅より 徒歩5分
東京メトロ銀座線・東京メトロ東西線・都営浅草線/日本橋駅より 徒歩9分