スペシャルインタビュー
第25回 コロナ後も人材ニーズが旺盛な地方。臆することなく就活に挑戦を!

第25回 コロナ後も人材ニーズが旺盛な地方。臆することなく就活に挑戦を!

株式会社 YOUTURN/代表取締役 中村義之氏
福岡出身。筑波大学卒業。2008年、株式会社ディー・エヌ・エー入社。EC事業に従事。2010年10月、同社から分社・独立した株式会社みんなのウェディングの設立に取締役兼マーケティング部長として参画。2014年3月、同社取締役兼事業本部長として東証マザーズに上場を果たす。2016年5月、地元福岡で株式会社YOUTURNを創業。首都圏のエンジニアやスタートアップ人材と地方企業のマッチング事業を展開中。

テーマ1
地方では自分の「存在証明」は不要

地方では自分の「存在証明」は不要

東京に比べて地方はチャンスが少ない。そう思っている人は多いかもしれませんね。でも人材の希少性という観点からいえば逆です。この仕事、誰かやってくれますか?という話が出たときに、はい!と手を挙げる人が極端に少ないのが地方の企業です。下手をしたら「君しかいないから君にやってもらうしかない」となります。

 

ここにいてくれるだけでうれしい、みたいな精神性も地方の特徴です私自身が U ターンで福岡に移住して、とても感動したのも実はそこです。まだ何をやるかも決めていない段階で、いろんな企業の経営者の方、金融機関の方たちを訪ねて、「福岡で起業しようと思っているんです」と挨拶回りした時に言われたのは、「よう帰ってきたね!」という言葉でした。私が何をするかよりも、私が福岡を選び、ここに住むと決めたこと――私が存在すること自体に価値を感じてもらえたのです。私がまだ何の価値も発揮してないのに。

東京は逆です。自分の価値を発揮しないとここにいられないと思っている人が多いんじゃないでしょうか。東京での生き方、働き方は、自分の存在価値を自ら証明しなければならないという強迫観念にさらされているように感じます

 

仕事で自分の価値を発揮したいという気持ちは分かります。だけど、そういうこと以前に、ベースとしてまず自分の存在を承認してくれる、喜んでくれる人がいる。それが福岡に限らず地方の良さです。自分がその町にいることがうれしいと、周りの人から言ってくれる。そういう場所に身を置くだけで幸福度は上がりますよね。そんな環境で働いているうちに、かけがえのない自分になっていく。そういう生き方って、すごく素敵だと思うんですよ。

テーマ2
新型コロナ感染拡大――この危機にこそ人材は求められている

新型コロナ感染拡大――この危機にこそ人材は求められている

現在、新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染拡大という状況下です。マクロ的な視点で言えば、多くの企業が採用を控えていると思います。ただ私たちの福岡特化型の転職支援サービス事業はあまりコロナの影響は受けていません。

 

今回のコロナショックで多くの経営者は「危機が会社を強くする」ことに気付いています。そして「有事において必要な人材こそが本当に必要な人材」だということにも。私たちは創業以来、「地域の課題解決ができる人材」「地域の経営者の右腕になれる人材」を求める企業にずっと向き合ってきました。そうした人材に対するニーズが、まさにコロナ感染拡大という有事においてより強まっていると感じています。

 

IT人材についても同様です。リモートワークをやらなくてはいけない、もっと電子化を進めなければ生き残れない、となっても社内に人材がいない。「うちはまだいいよ」なんて甘いことは、コロナ後は言っていられません。その意味で人材ニーズはより強まっています。実際、私たちが取り扱っている求人数はコロナ以前とコロナ以後とでは変わっていないのです。

今はコロナでどこも大変で求人がないから転職活動なんてしても無理と思っている方がいたとしたら、全然そんなことはないと分かっていただきたいですね。特に20代の方で、東京でそれなりに経験を積んできた人に、次世代リーダーとして参画してほしいと考えている企業は、こちらに結構多いのです。

テーマ3
東京では自分を過小評価しがち。自分の能力をゼロベースで見直そう。

東京では自分を過小評価しがち。自分の能力をゼロベースで見直そう。

いくら福岡や地方都市でニーズがあったとしても、自分はそこで求められる人材なんだろうかと不安な方もおられるかもしれませんね。そんな方に知っておいていただきたいことがあります。

 

●ポイント1 「東京で普通に働いているだけ」で高い能力が培われている!

こんなエピソードがありました。福岡では有名な老舗企業の社長にお会いした時のことです。社長は、東京の商社で仕事経験があって、東京のビジネスシーンもご存知です。その方にどんな人材が欲しいですかと聞いたら、「東京で普通に働いてくれていた人なら全然いいよ」という答えでした。東京は規模の大きな会社が多くて、市場も巨大なので、より広い視野を求められ、人間関係の調整力や先々を見通す力が問われる。そういう環境下で働いていた人なら、普通に仕事をしていたとしても、いろんな能力が培われているはずという考え方なのです。

 

●ポイント2 東京の「できる人」と自分を比べるのはやめよう

「東京で普通に活躍してくれていたら全然オッケーだし、どなたともお会いしますよ」という社長の言葉は、東京で自分の価値に不安を感じている人に勇気を与えてくれるのではないでしょうか。そもそも東京で働いているビジネスパーソンは、相対的に見て自分の価値を低く見積もる傾向にあります。自分以外に「できる人」がたくさんいると、どうしても自分の価値を過小評価しがちになってしまうのです。成長意欲の高い人ほどそうなります。自分はまだまだ、もっともっとと思って働いていますから。

 

東京は人が多いですから、自分よりできる人と比較し始めたらきりがありません。それ故比較するという相対感でなく、絶対感として自分は何ができるかということを改めて確認し直すことです。「東京でだったらみんなこれくらいできる、だからアピールするほどのことはない」なんて考えずに、自分のスキルや経験を客観的に評価してみてください。その上で、自分はもっとできる! 自分はもっと価値があるぞ! と自分にそう言い聞かせることです。

 

●ポイント3 競争で摩耗するより、自分があるがまま生きられる場所へ

東京で息苦しさを感じるのだったら、より自然体で、あるがまま生きられる場所を選んだ方がずっといいと思います。そういう生き方が自分はいいんじゃないかと漠然と思って悩んでいた方は、コロナという大きな出来事が発生したことで、背中を押されている感じではないでしょうか。

 

人口が少ない地方では、「この仕事ができるのは俺しかいない」と思っている人がたくさんいます。その認識が妥当かどうかは別として、そう思えるってことはハッピーですよね。特に今の20代の方は自分がナチュラルに楽しめること、好きなことでどんどん尖っていく方が自分らしいと感じる人が多いんじゃないでしょうか。そういう人は競争で摩耗するよりも、早く自分の好きなことに没頭できる環境に移った方がいいと思います。

 

東京ってやっぱり人が多かったり、満員電車だったりとか、自然が近くにないとか、環境ストレスが結構高いと思います。どんな仕事でも多少なりストレスはあるのだから、それ以外の環境ストレスは極力ゼロの方がいいですよね。できるだけ環境ストレスが低いところでチャレンジした方が、気力も充実した中でトライできるし、自分の健康も維持できる。結果として成功確率は高くなるその意味でも地方を積極的に選択する理由があると思いますね。

「好きなことをやるのは競争に勝ってからだよ」なんて上司や先輩に言われて、やっぱりそうなのかな、自分に自信もないし、競争しなきゃいけないのかなあ……なんて思ってしまう人がいるとしたら、そんなお説教は気にしなくていいと言いたいですね。上の世代が生きてきた時代と、これから自分が生きていく時代は違うんだと思えばいい。将棋の世界でも藤井聡太さんなんて10代で信じられないような活躍をしていますよね。若い人はできるだけ早く、自分の好きなことに没頭できる環境を見つけていただきたいですね。