スペシャルインタビュー
第22回 首都圏より就職しやすい地方。就活のカギは「情報を取りにいく姿勢」

第22回 首都圏より就職しやすい地方。就活のカギは「情報を取りにいく姿勢」

リッチピクチャーズ株式会社 キャリアファシリテーショングループ/プロデューサー 
小澤 明人氏
教育ベンチャー企業にて営業マネジメント・人事・採用責任者を歴任後、日本初の「就活サポートセンター」を創設。学生・若年層を中心とした「就職支援」と「企業採用」を連動した新しいしくみを創りあげる。「自分を知る」「就活のしくみを知る」「業界を知る」「職種を知る」そして「企業を知る」など「知ること」をキーワードに、学生の視点に立ちながらも「採用側から見た就活指導」を実践。民間のハローワークとして年間2,000名超の求職者支援と延べ400社超の採用コンサルティングを実践。
現在、リッチピクチャーズ株式会社 キャリアファシリテーショングループ・プロデューサーとして、多くの企業の採用現場において「辞めない採用」をプロデュース。選考スキーム再構築から説明会・選考会代行実施まで行う。併行して全国の大学・自治体にて「学生・求職者・保護者・人事」向けの講演・研修セミナー・就業力育成カリキュラム作成も行う。

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地方・中小企業は、採用メソッドが確立していない

地方・中小企業は、採用メソッドが確立していない

今の日本は、史上もっとも“正社員の求人が多い”タイミングを迎えています。なのに、企業と人のマッチングは、なかなかうまくいっていません。求職者は企業価値より安心を求めてしまうし、企業は自社の魅力をうまくアピールできない。とくに、地方企業や中小企業の採用問題は深刻です。

 

まず、地方では、大手企業で当たり前になされているWebでの広報や説明会の実施ができていない企業も少なくありません。会社を知ってもらうところからはじめなければいけないのに、その認識がなく、説明会すらやらない企業も多い。スマホ非対応のWebページには情報が少ないうえ、「詳しくはお電話ください」なんてことが平気で書いてある。近ごろの若者にとって、電話をかけることはとってもハードルが高いというのに!(笑)

画一的な求人や「とにかく誰かに来てほしい」「誰でもいい」という空気がにじみ出た会社には、当たり前ですがなかなか応募がありません。

 

私は、そんな地方企業や中小企業に向けた「採用コンサルティング」を手がけています。たとえば担当者の方々に、所属する業界や自社の研究を改めてしていただく。そうすることで自分たちの立ち位置や魅力が見えてくれば、合同企業説明会などでも求職者を引きつけるプレゼンができるようになります。

 

また、インターネットでの活用が進んだ今、採用活動が非常に雑になっていることを感じます。ネットが無い時代であれば、問い合わせの電話1本でも大切で求人広告が出る日には、一日中電話の前に座っていたこともありました。すこしでも応募者の方が困っているようなら「会社の場所はわかりますか?」と、口頭で道順まで案内してあげます。その応募者は、面接で「どうしてこの企業を受けたのですか?」と尋ねたとき「電話応対がすばらしくて…」と答えたりする。企業に対するイメージは、本当にささいなことで変わるんですよね。求職中のみなさんも、心当たりがあると思います。

 

必要とあらば、私が1から10まで企業に代わり、採用を務めることも。そうやって本当にマッチする人材を獲得できれば、その社員は辞めずに活躍してくれます。企業にとっても応募者にとっても、それが一番。そんなご縁はつながっていき、ときどき「8年前に○○という会社で、小澤さんから採用された人間です。今いる部署でも採用コンサルを頼みたいのですが…」というご連絡をいただいたこともありました。

テーマ2
求職者は“積極的”に情報を取りに行かなくてはならない

求職者は“積極的”に情報を取りに行かなくてはならない

一方、求職者の方々がこれまでに頑張ってきた“就活対策”というのは、一般的に“大手に入るための対策”です。地方・中小企業の就活に、そのまま当てはめることができません。採用メソッドが確立されていない企業を受けるときには、自分から情報を取りにいく能動的な姿勢が必須なのです。

 

ところが今の求職者は“関わっていく力”が弱い傾向にあります。合同説明会に行っても、自分から企業の方に話しかけるのが怖い人は、少なくないのではないでしょうか。企業側も同じで、求職者に嫌われるのを恐れるあまり、うまくアプローチできない。そこで、自分から臆せず「教えてください」と話しかけられれば、ほかの応募者を一歩リードできることは間違いありません。

 

たとえば、どんなところに気をつけて情報を集めるといいのでしょう?
3つのポイントをご紹介します。

 

●ポイント1
わかりにくい企業サイトを見つけたら、業界研究のチャンス

 

ぱっと見て理解できない言葉が多く、わかりづらいWebサイトほど情報収集のチャンスです。まずはそのwebサイトから、わからない言葉をすべてピックアップして検索する。それはきっと業界の専門用語なので、調べれば調べるほど、業界研究になるんです。

社風等を調べるよりも、その会社が業界内でどんなポジションなのか、どんな仕事を成し遂げているのかを理解したほうが、就活はスムーズになります。業界や世の中の動きをチェックしたうえで面白そうな会社を選べば、仕事そのものも楽しく感じられるでしょう。

 

●ポイント2
「こんな人になりたい」という社長・社員がいるかをチェック

熱意のある社長や、自分の仕事に誇りを感じている社員が多い企業は、やはりおすすめです。大手と違って規模が小さいからこそ、代表と直接ふれあったり、学べる機会も多いはず。熱心な社長なら、最初の説明会やセミナーから登壇されるケースもあります。どんな人がどんなふうに会社をアピールしているか、見てみてください。

 

●ポイント3
その会社でどんな成長ができるのか「業務モデル」を尋ねてみる

在籍年数と収入などをまとめた「キャリアモデル」ではなく、どんな仕事ができるようになるのかをまとめた「業務モデル」を調べましょう。何年経てば、どれくらいの規模の案件が仕切れるようになるのか。いつ頃からチームが持てるのか。自分がそこで身につけられるスキルのイメージができれば、入社しても頑張れるはずです。

 

さまざまな情報を手に入れたら、そこから、自分の“働く動機”を考えてみましょう。「地方はのんびり暮らせそう」「地方にはやりがいがあるかも?」などのあいまいなモチベーションでは、なかなか続きません。UターンやIターンでよく聞かれる「地域に貢献したい」というのはすばらしい動機ですが、自分が何をするのか明確にしなければ、やはりあいまい。でも、橋をつくるとか、人口を増やすとか、大きなことでなくてもいいのです。その地でまじめに働いて、暮らしてくれれば、それだけで立派な地域貢献「こんな仕事をしてみたい」「この業界は面白そうだ」という視線と合わせて、自分にフィットする勤め先を探していきましょう。

テーマ3
「地方には仕事がない」は、大きな間違い!イレギュラーな採用もある

「地方には仕事がない」は、大きな間違い!イレギュラーな採用もある

日本が打ち出した未来社会のコンセプト「ソサエティ5.0」は、採用の世界でもキーワードになっています。「狩猟」「農耕」「工業」「情報」という4つの社会を経て、次にくるのは「超スマート」社会。これまでに生まれた技術や情報を、うまく使いこなしていく力が求められます。

 

就活に当てはめてみると、これまでは企業が与えてくれる情報をただ見るだけでよかったけれど、これからは自分で情報を集めたり、得た情報を活用する必要があるのです。私はいつも、就活をしている方々に「“見出し人間”にならないで」と伝えています。見出しを見て、すべてを理解したつもりになっているけれど、じつは中身をよくわかっていない…それでは、本当に自分とマッチする企業を見つけるのは難しいと思います。

 

インターネットはたしかに便利です。でも、キーワードの一発検索で見えてくるのは、その玄関口だけ。たとえば「製造業」「広告業」「サービス業」といくつキーワードを調べても、横にしか世界が広がりません。「製造業」→「機械」→「業界の動向」→「今後の展望・課題」などと掘り下げて検索することで、ようやくその業界や仕事の面白みが見えてくる。地方・中小企業の発信方法も改善されていくべきですが、応募者が調べ方を変えるだけでも、今まで見えていなかった企業の魅力に気づけるはずです。

 

地方には、じつは多くの求人が埋もれています。2019年1月の有効求人倍率を見ても、東京都の2.12倍と並んでトップを飾ったのは、福井県。続くのは広島県の2.08倍、岐阜県の2.04倍です。反対に約1.2~1.3倍と常にワースト10に入るのが千葉県・埼玉県・神奈川県なので、エリアで計算すると、首都圏は全国平均を下回ってしまいます。つまり、首都圏で就活をするよりも、地方でなにかしら産業を持っているエリアにいったほうが、就職しやすいのです。

 

地方は、イレギュラーの採用が多いのも魅力です。たとえば帰省するタイミングで、地元の企業に「1週間だけ実家にいるので、会社を見学させていただけませんか」と頼んでみる。それだけで、興味や熱意は伝わります。採用プロセスがこまかく決められている大手と違って、地方企業は「何度も来られないだろうから、そのときに面接もしちゃおうか?」と、駒を進めてくれることも。実際に、そういった過程を経て内定を獲得した応募者もいました。地方企業にそういうアポイントをとるときには、少し勇気を出して人間関係をつくりやすい電話がおすすめです。また、正規の募集期間ではないのに見学やインターンを受けつけてくれる会社なら、柔軟性の高さもうかがえます。

 

採用メソッドやほしい人材像が確立されていないぶん、地方・中小企業の就活には余白が多いもの。決まった人材を探すというより、お互いに話し合い、希望をすりあわせていこうとする会社もあるでしょう。応募者のみなさんも肩の力を抜き、相手企業の魅力を探す気持ちで、アプローチしてみてください。