スペシャルインタビュー
第18回 都会の移住希望者の良きアドバイザー「移住・交流情報ガーデン」

第18回 都会の移住希望者の良きアドバイザー「移住・交流情報ガーデン」

移住・交流情報ガーデン 業務管理者 林 光一 氏
昭和55年に財団法人地方債協会へ入社。平成3年より財団法人地域活性化センターで、地域活性化事業への取り組みを開始。これまでに、箱根町「男女共同参画プラン」、北杜市「地域福祉計画策定基礎調査」、武雄市「男女共同参画推進計画策定支援調査」、坂東市「生涯現役で暮らすライフスタイル普及のための検討調査」、長野市「次世代育成支援ニーズ調査」などの各種企画策定に参加。現在は、「移住・交流情報ガーデン」業務管理者として、移住希望者の相談に応じている。

テーマ1
「移住・交流情報ガーデン」ではどんな情報が得られる?

「移住・交流情報ガーデン」ではどんな情報が得られる?

2014年に政府が首都圏住民を対象に地方移住の意識調査を行ったところ、「すぐに行きたい」も含む「地方移住に関心がある人」が全体の4割近くいることがわかりました。

 

周知の通り、今の日本の人口は東京に一極集中しています。中京・関西圏ですら人口流出が続いており、特に地方は人手不足により疲弊しています。であれば、地方移住に関心のある人たちにきちんとした情報を提供し、地方移住者を増やすことで「地方の活力」を上げられるはずです。

 

そうした背景から総務省が立ち上げたのが、「移住・交流情報ガーデン」です。JR東京駅から徒歩4分の場所にあり、「地方移住のための情報発信基地」的な位置づけとして、平日は夜の9時まで利用が可能となっています。

 

情報提供が目的ですから、全国の都道府県等が作っている移住希望者向けパンフレットを一通り揃えています。もちろん移住相談も可能です。私もその一人ですが、常時2名以上の移住相談員と就農の相談員、地方での就職のアドバイスを行う相談員がそれぞれ常駐し、対応しています。

 

この施設の立ち上げと同時に作られたのが、移住情報のポータルサイト「移住ナビ」です。各自治体が自分たちでコンテンツを発信できるようにしたサイトで、地域の魅力や仕事情報、空き家情報などが各自治体の運営により提供されています。館内には3台のパソコンを用意しているので、開館時間中であればいつでも利用が可能です。

 

また、館内を使ってのイベントも積極的に実施しています。自治体が主催する説明会やPRイベントだけでなく、地方移住や就職にまつわるノウハウ提供を目的としたセミナーなども実施しています。

 

昨年からは夜開催のイベントにも力を入れているので、仕事の後の時間でも気軽に立ち寄っていただけるのではないかと思っています。

テーマ2
移住先を探すうえで大切なことは?

移住先を探すうえで大切なことは?

移住・交流情報ガーデンに初年度お越しになったお客様は約1万7000人、老若男女、幅広い層の方々にご利用いただきました。最近では、「地域おこし協力隊」に関する相談をしに学生など若い方が来られることも増えています。

 

相談内容は多岐に渡っています。具体的に移住先を絞っていらっしゃる方よりも、地方で暮らしたいと漠然と考えている方が多いため、「何となく暖かいところで暮らしたい」「環境がいいところで子育てしたい」といったふわっとしたところから会話がスタートするケースが多いです。自治体のパンフレットを見たり、「移住ナビ」をチェックしながら、どんな選択肢があるかをお話しさせてもらっています。

 

初年度は、ご相談いただいたお客様に約7600件の移住関連情報を提供いたしました。当館のお客様からは、地方移住に「自然」や「環境」を重視する声を非常に多くいただきました。また、印象的なイベントがありました。鳥取県智頭町で開園する幼稚園「森のようちえん」の入園説明会が行われました。参加者の集まりを危惧しましたが、当日は多くの若いご夫婦で満員御礼状態となりました。智頭町の移住者には「森のようちえん」への入園が移住動機とするご家族もあり、環境の良いところでの子育てニーズの強さを実感しました。

 

相談員と話すことで、漠然とした地方移住への憧れから少しずつ思いを明確にしていったり、自分の考えが足りなかった部分に気付いてもらうなど、地方移住の「最初の一歩」「入り口」として施設を利用してもらえたらいいのかなと考えています。

 

相談を受けていて感じるのは、「移住の目的」を持っておくことの大切さです。漠然としていてもいいのですが、「どこでもいい」ではなかなか話も進みません。先述のような子育てや進級・進学といった話でもいいですし、農業でもいいでしょう。じゃあ農業なら、稲作なのか、果樹なのか、それとも花なのか、そういったところを考えていく必要は当然ありますが、それも相談しながら少しずつ具体的にしていき、目的に見合った場所を一緒に探していければいいのかなと思っています。

テーマ3
最近人気の「お試し移住」がオススメ!

最近人気の「お試し移住」がオススメ!

最近のトレンドの一つに、「お試し移住」というものがあります。
現地で長期間(長くて1か月程度)、実際に空き家を借りて住むとか、自治体が企画し、その地域の暮らしや魅力を体験してもらうといった日帰りから数日間程度の移住ツアーです。

漠然と考えている人ほど、最初に移住先を決めようとするのではなく、ぜひそういうツアーに積極的に参加してみるのがいいと思います。そして、行った先でお友達を作ってみてください。

 

お試しで暮らす中で、その地域でのライフスタイルが見えてくるでしょう。また、現地でお友達になった方を通じ、その地域のことをより深く知ることもできます。それを機にその地域への興味が高まっていくこともあるでしょうし、「いざ移住しよう」となった時に、住まいや仕事のことを相談できるかもしれません。

 

よく、「いい物件があったから」と、準備もなしにその地域に入っていくケースがあります。そうやって地域の関わりについてあまり考えずに移住した場合、「地方で暮らしたい人の価値観」と「地域の人が新しい人を向かい入れる価値観」が合わないことがあります。そうなると、コミュニティに入っていきにくくなったり、移住後の生活が楽しめないこともあります。

 

そういう意味でも、気になった地域があれば事前に何度か足を運び、そこで少しでもコミュニティを作ってから具体的に移住した方がいいのではないでしょうか。

 

地域によっては、市区町村の相談員やアドバイザーが頼りになることもあります。相談していく過程だけでなく、移住後の住まいや仕事、地域での揉め事なども、その人に相談すれば解決の糸口を持っている・・・なんてこともあるのです。そうした「頼れる人」を事前に見つけておくことも含めて、地域の中にお友達を作っておくことが大事なのではないかと思います。