第1回「LOCAL×はたらく」を考える
1989年筑波大学卒、日本テレビ放送網株式会社入社。
1999年、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修士課程を修了しMBA取得。 その後ソニー株式会社に入社。
2003年、ハンゲームジャパン株式会社に入社、取締役を経て、2006年10月、取締役副社長に就任。
2007年10月、NHN Japan株式会社(ハンゲームジャパンより商号変更)代表取締役社長に就任。同年11月、ネイバージャパン株式会社設立に伴い、ネイバージャパ ン代表取締役社長を兼務。
2013年4月、NHN Japan株式会社の商号変更により、LINE株式会社代表取締役社長に就任。
2015年3月、同社代表取締役社長を退任。同年4月、C Channel株式会社代表取締役社長に就任。
テーマ1「外から見た地方の良さ」を伝えていこう
LINEを辞める前から、地方の可能性を探ろうとあちこちの自治体や企業に足を運び、ディスカッションをしていました。今やっているC Channelでのビジネスもそうですが、私自身、「日本を元気にしたい」という思いが強いんです。そのためには、まずは地方が元気にならないといけないと思っていたのですが、実際に足を運ぶと地方はとても元気があって、拍子抜けしてしまいました。ただ、東京の人が考える元気とはちょっと違う。少なくとも、「東京のようになる」ことが大事だとは思っていないんですね。
そもそも都会と地方とではライフスタイルが違うし、成功モデルも違う。いかに地方ならではのモデルを定義し、それを定着させていくかが重要です。
一番の課題は、「その土地ならではの良さ」が見えにくいことだと思います。実は地方にはたくさんの資源があります。新鮮な野菜や魚、木材などの自然や、継承され続けてきた技術など、素晴らしいものが豊富にある。でも、当事者たちはそれに価値があるとは思っていなかったりするんですね。ですから、そうした資源をいかに産業に変えて価値化するかが一つのテーマだと思います。そしてそのためには、第三者である都会に住む我々が「外から見た地方の良さ」を積極的に伝えていくことが必要です。
地方はもっと外から人を集めるためのパワーを持つべきで、そのためにはその土地の良さをアピールし、その地域に合ったやり方で進める必要はあると思います。でも、その方法がわからなくて、結局は「ITだ」「農業だ」と、みんな同じになっちゃっている。そこは何とかしていかないといけませんよね。
テーマ2「日本らしさ」は実は地方にしかない
グローバル化が進んでわかったことは、東京と海外は変わらないということ。そして、日本の良さ、日本らしさについて考えると、それは地方にしかないということです。
今はあらゆる点で都会と地方の距離が縮まっています。地方に住みながら東京で働くことも可能ですし、地方に住んで働くことが不利ではなくなっています。だから、いろいろな展開を考えやすくなっていますよね。
例えば、養豚が盛んな地域であれば、その豚を使った料理を出すレストラン、ホテルは思いつきやすいですよね。キャラクター化もできるし、ビジュアルとしてブランド化していく方法も考えられます。長野県は繊維産業が盛んですが、そこを生かしてファッションに興味がある人を集めて新しい産業を作っていこうとかね。その地のコアな産業に注目してみると、選択肢は広がると思います。あとは、県知事や市長といった首長の個性に着目し、彼らがどんな未来像を描いているのかを調べてみると、その地で伸びる仕事が見えてくるかもしれません。
個人的には、地方の良さは「成功しなくてもいい」というような空気感というか、「むしろあくせく稼がなくてもいいんじゃないか」と思えるところにあると思っています。困っている人のために貢献して喜んでもらえるとか、その経験を通じて何かを学べるとか、そういう部分にこそ、地方ならではの良さがあると感じています。
テーマ3「どうすれば幸せになれるか」を定義しよう
あらゆるインターネットサービスが普及したことで、学生でも経営者と直接コミュニケーションがとれる時代になりました。企業を知る手段が確実に増えているからこそ、情報収集は欠かせません。一方で、情報がありすぎるために、いくらでも知った気になれるわけです。だからこそ、直接会って話すコミュニケーションが重要。就職活動では「自分は将来こうなりたい」「こんな商品を作りたい」といった思いが根底にあったうえで会社を選べた方がいいに決まっています。それを見つけるためには、ちゃんとコミュニケーションをとっていくことが大事です。
学生の皆さんには、やっぱり、自分らしい人生を歩んでほしいと思います。そのためには、まずは自分を知ることです。人間は何のために生きるかといえば、幸せになりたいからだと思うんですね。であれば、どうやったら幸せになれるかを定義できない限り、一生幸せにはなれません。他人は絶対に幸せを運んできてはくれない。答えは自分の中にあるんです。だから、まずは自分を見つめて、定義する。定義ができたら、実行する。そういうシンプルな考え方でいいと思います。
(掲載日:2015年9月30日)