地方で生きる

LO活×日本仕事百貨~地方のオモシロ企業・仕事図鑑 vol.3~

まち・コミュニティづくり編

まちの魅力は、そこにいる人の目を通して見えてくることが多いと思います。

同じ場所を歩いていても、地元で暮らしてきた人は懐かしい出来事を思い出したり、移住してきた人にはまだ誰も気づいていない可能性が映ったり。

そんなふうに、地元で暮らしてきた人、移住してきた人。それぞれが混ざり合うことで、まちやコミュニティのよさは育まれていくんだと思います。

ちょっとした気づきが、コミュニティを動かすきっかけになる。その変化の中心に、自分自身が立てるのも地方で働く醍醐味。

今回は、いろいろな生き方や働き方を紹介する「日本仕事百貨」から、「まち・コミュニティづくり」 をテーマに3つの仕事を紹介します。

どれも人との関わりを大切にしながら、地域の未来を紡いでいくような仕事です。

株式会社b.note:山口県萩市

山口県北部にある萩市。江戸時代には毛利家の城下町として栄え、松下村塾など明治維新とゆかりの深い場所も多い。

萩市浜崎町は、かつて北前船の寄港地だった商人のまち。町屋や蔵が数多く残るまち並みは、2001年には「伝統的建造物群保存地区」にも指定された。

港の近くにあるのが、「舸子(かこ) 176」。かつて海産物問屋として使われていた築200年の建物を改修し、フレンチレストラン・喫茶・ギャラリーとして運営されている。

運営会社のb.noteは、神奈川・鎌倉にある洋館「古我邸」で、レストランとウエディング事業をおこなってきた会社。

2018年から取り組んでいるのが、ここ浜崎でのプロジェクト。活用されていなかった歴史ある建物を改修し、新たな場をつくることで、人の流れを生み出してきた。

フレンチの料理人、和菓子職人、萩焼のギャラリー運営など、それぞれの得意分野で活躍するスタッフは、移住してきた若者が中心。

まちを歩けば、地元の人が声をかけてくれる。そんな地方ならではの温かい関係性を楽しんでいる。

代表の新井さんはこう話す。

「浜崎の人たちって、まちで起きていることは全部自分ごと、みたいな感覚を持っているんです。人口が減って建物も朽ちていって、『このままだとまちがなくなる』と心底思うような経験をしたんだと思う。だから僕らの新しい取り組みも受け入れてくれるし、若い人たちが空き家にいるだけで喜んでくれるんです」

地域でお祭りがあるときは、特別メニューを考えて総出で出展したり、個人でクラフトビールスタンドを立ち上げたスタッフがいたり。

単に就職するのではなく、自分らしい生き方を見つけに。仕事も暮らしも、このまちに溶け込みながら、じっくりと縁を育てている。

 

株式会社b.note
事業内容:ウエディング施設・ホテル・飲食店の企画、開発、運営
創業:2009年
所在地:神奈川県鎌倉市由比ガ浜4-10-41(本社)、山口県萩市浜崎町176(舸子176)
従業員:30名(2026年1月)
HP:https://futatsugai.jp/kako176/

 

 

湯あみ里山公園ぷかぷかコミューン(公益財団法人大谷教育文化振興財団):兵庫県丹波篠山市

新大阪駅からJR福知山線に乗車。尼崎や宝塚を通りすぎ、およそ1時間で篠山口駅に到着する。

そこからバスで25分、草山温泉バス停の目の前にあるのが「湯あみ里山公園ぷかぷかコミューン」。

温泉やBBQ場、キャンプ場と一体になっていて、聞こえてくるのは家族の笑い声。里山の自然に包まれ、おだやかな時間が流れている。

UFOのようなかたちの建物がぷかぷかコミューンだ。

1階に地元の特産品を扱う直売所やカフェがあり、2階は飲食スペースで、360°山々の風景を一望できるデッキになっている。屋根には土が敷かれ、自然に草花が育つようなつくりに。

運営元の公益財団法人大谷教育文化振興財団は、兵庫県における教育、芸術、文化の振興発展及び地域活性化に寄与することを目的とした財団。その事業の一つが、ぷかぷかコミューン。

根幹にあるのは、地域、自然とのつながり。そして、この場を育てているのが「野遊びプランナー」や「虫博士」と呼ばれる、丹波篠山の自然を大切にしているスタッフたち。

子どもたち向けに、虫採りワークショップや自然体験学習のプログラムを企画したり、目の前の畑で栽培したさつまいもや大根を、地元の野菜と組み合わせて、ワンプレートランチを提供したり。

今後は、地域循環の新たなカタチとして、地域で採れた食材を使った天然酵母でグルテンフリーのパンを通販で販売する取り組みも進めている。

地元農家さんとのつながりを活かし、素材の調達から調理、値付け、商品化まで一貫して手がける。

働く人たちは、自分の「好き」やアイデアを思う存分表現しながら、地域のストーリーを込めて、商品やプログラムを開発している。

地域にとっても、自分たちにとっても、いい活動を行う。それを胸張って言えるような働き方ができる場所だと思います。

 

公益財団法人大谷教育文化振興財団
事業内容: 青少年の健全育成・文化芸術・草山地域振興事業
創業:1984年
所在地:兵庫県西宮市川西町13番10号(財団所在地)、兵庫県丹波篠山市遠方41番1号(湯あみ里山公園ぷかぷかコミューン)
従業員:12名(2025年12月)
HP:http://www.ootani.or.jp/outline.html

 

 

株式会社DOSO:山梨県富士吉田市

富士山の裾野に広がるまち、富士吉田。

懐かしい色合いの提灯と軒先のテントに、背景にはどっしりと富士山が待ち構えているのが、このまちのメイン通りの本町通りだ。

10年前までシャッター街だったこの通りが、今、たくさんのものや人が関わり合って新しいハーモニーが生まれている。

株式会社DOSO(ドーソ)は、古民家をリノベーションした「SARUYA HOSTEL」を起点に、アーティスト・イン・レジデンスや、世界中に拠点を持つクリエイティブコミュニティの拠点の一つ「FabCafe Fuji」を運営している。

社名の由来は、「道祖神(どうそじん)」という甲信越地方に多く見られる旅や交通安全の神さま。

宿を起点として、訪れる人を迎え入れ、送り出すまでの間まちごと楽しんでもらう。そんな場所をつくっている。

宿のベッドリネンや客室のカーテンなどは、地元の機屋(はたや)さんが製作した、オリジナルのものを使用。

カフェでは、海外の人に富士吉田の文化を知ってもらうだけでなく、地域住民も異なる文化が体験できるよう、欧米では定番の発酵ドリンク・コンブチャなどのメニューを提供。食材も周辺地域から仕入れ、素材を活かしたメニューを開発している。

観光客はもちろん、お客さんを宿へ案内しに来たという近隣の方や、アーティスト・イン・レジデンスにやってきた作家さんなど、多様なバックグラウンドの人たちが集まるこの場所。

スタッフは、別地域からの移住者や、海外でバックパック経験がある人も。宿やカフェを行き来しながら、自身の得意分野や興味を活かして働いている。

それぞれの視点を持ち寄りながら、このまちに必要なものを考え、自分たちでつくる。

そうしてシャッターが降りていたこのまちに、あかりが再び灯っていく。

日本といえば富士吉田。富士吉田といえばFabCafe Fujiや、SARUYA HOSTELを思い出してくれるように。人と富士とファブリックのハーモニーを紡いでいく人たちがいます。

 

株式会社DOSO
事業内容:宿、カフェ、アーティストインレジデンス、イベント企画運営
創業:2020年
所在地:山梨県富士吉田市下吉田3-6-26
従業員:29名(2025年12月)
HP:https://saruya-hostel.com/

 

 

まちの切り取り方は自分次第

今回紹介した3つの仕事には、どれも地域の人と向き合いながら、まちをよりよくしていこうとする想いがあります。

同じ場所でも、誰が見るかでまちの見え方は変わる。

自分の経験や視点が、きっと活きる機会もあるはずです。そしてその視点が重なることで、まだ見ぬまちやコミュニティの姿が少しずつ形になる。その変化の瞬間に、立ち会えるかもしれません。

 

 

執筆者: 大津恵理子
福岡県出身。筑紫平野のほぼ真ん中で生まれ育つ。学生時代は、ボランティアでネパール
東部にある村でホームステイしながら公民館再生活動に携わったことも。大学卒業後、日本仕事百貨を運営する(株)シゴトヒトへ入社。地方での取材を50件ほど経験。取材先のまちの雰囲気や温度感を大切に、等身大で伝えることを得意にしています。

日本仕事百貨について:
さまざまな生き方や働き方を紹介する求人サイト。実際に働く人のもとを訪ね、一つひとつ取材し、会社・働く人の思いに加え、大変なところも含め、ありのままを伝えている。
https://shigoto100.com/