レポート

現役大学生のローカルインターンシップに密着vol.5【南紀白浜エアポート】

和歌山県の観光リゾート地で地域課題に挑戦する、長期インターンに密着

首都圏の大学に通う現役大学生が、地方企業のインターンシップに参加したらその意識はどう変わるのだろう?

今回取材したのは、和歌山県の空の玄関口・南紀白浜空港を運営する「株式会社南紀白浜エアポート」に2024年7月から2カ月間の予定でインターンシップに参加している後藤莉子(ごとう りこ)さん。
地域コーディネーターとして勤めつつ、「地域および都市企業の課題の同時解決」を目指しています。そんな後藤さんのインターンシップの様子を2日間にわたり密着取材してきました!

取材対象

・実施場所:和歌山県西牟婁郡白浜町

・受け入れ企業:株式会社南紀白浜エアポート

・事業内容:空港運営事業および誘客・地域活性化事業

・実施期間:2024年7月~9月(取材は8月20日~21日)

・参加者:後藤莉子さん 筑波大学大学院/人間総合科学研究群(修士課程)

(プロフィール)
宮城県石巻市出身。幼いころからサッカーに打ち込み、高校時代には海外留学・研修も経験。大学では現在に至る「ダイバーシティ」の歴史を学び、大学院では多様性を受容する「ダイバーシティ&インクルージョン」を専門に研究している。これまで地元・宮城県で開催されたものをはじめ、複数のインターンシップに参加。今回、何度か訪れたことがあるという和歌山県の地方創生に興味を持ち、本インターンシップに参加した。

取材1日目(8月20日)

10時30分

南紀白浜空港は、和歌山県の空の玄関口として1968年に開港。和歌山県・南紀エリアは、世界遺産の熊野古道、ジャイアントパンダで有名なアドベンチャーワールド、ハワイのワイキキビーチと姉妹浜である白い砂浜が連なる白良浜ビーチ、日本三古湯にも数えられる白浜温泉など数々の観光資源を有し、年間300万人が訪れる観光リゾート地です。

白浜町は全国の自治体に先駆けて2017年からワーケーションを推進し、“ワーケーションの聖地”とも言われています。南紀白浜エアポートで空港を起点とした地方創生事業を展開する誘客・地域活性化室は、「ワーケーションの総合コンシェルジュ」として、企業向けのプログラム提案やご当地コンテンツの開発、現地の旅行手配、受入体制の整備などを行っています。

ワーケーション利用をするお客様の受入れなど“地域コーディネーター”として勤めつつ、白浜町および都市企業がかかえる課題と向き合い、解決に至るプログラムを作成するというのがインターンシップの活動内容です。

<center><strong>▲「熊野古道」が世界遺産登録20周年を迎え、2024年より「熊野白浜リゾート空港」に愛称を変更した。</strong></center><br />
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▲「熊野古道」が世界遺産登録20周年を迎え、2024年より「熊野白浜リゾート空港」に愛称を変更した。

 

11時

取材に伺ったのは、これまでの約1カ月間の成果を発表する「中間報告会」の日。空港内の会議室で行われた「中間報告会」には、南紀白浜エアポートの社員さんをはじめ、近隣である田辺市の市役所職員さん、林業・建設業・観光業など様々な業種の関係企業の方々、本インターンを共に並走するコーディネーターさん、そして同じ和歌山県内でインターンに参加中の学生のみなさんなど、合わせて約40人が参加しました。

後藤さんは、これまでの約1カ月間で白浜町の観光・ホテル業に従事する方々へインタビューを実施し、そこから得た、現在抱えている諸問題を発表。注目したのは人手不足が進む中、なかなか受け入れ態勢の構築が進まない外国人雇用に関してでした。

大学院で専門的に学んでいる「ダイバーシティ&インクルージョン」の目線で、日本人と外国人が共に活躍できる環境作りをテーマに、残りの1カ月間、取り組んでいきたいと語る後藤さん。

プレゼンテーションの後は、参加者からたくさんの感想とフィードバックをもらっていました。「もっとこうした方がよくなりそう」、「大きいテーマなので、あとはどう解決に落とし込むか?」など、建設的な意見が飛び交う中、中間報告会を控えたインターン生から「自分の報告会のハードルが上がりました(笑)」という感想もあり、会議室に笑い声が響く場面も。こうして、約1時間にわたっての「中間報告会」は無事終了しました。

 

「中間報告会」を終えての感想は? 後藤さんに聞きました。

 

12時30分

午後は車で、地元の建設会社・株式会社後工務店(うしろこうむてん)の取り組みを見学しに上富田町へ移動。その道すがら、地元で愛される中華屋でお昼ごはん。後工務店の社員さん、同社のインターン生と共に、美味しい中華に舌鼓を打ちました。

中間報告会での緊張感から一転、インターンハウスで共同生活をする仲間たちと和気あいあい。これから向かう“空き家”の話や、和歌山県の方言の話などで盛り上がりました。

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14時

到着したのは昔ながらの商店街にある一軒の空き家。元は薬屋だった物件で、2週間かけて残置物の片付けなどを済ませ、現在リノベーション中だそうです。

後工務店では「住みやすく災害に強いまちにするために地域力を鍛えたい」との想いから、建設会社でありながら、積極的に防災へ向けた取り組みを行っています。その一つとして、今年からはじめたのが空き家の再生と有効活用です。

日常的に人とのつながりを持つことができる拠点として、また被災時には避難所としても利用できる場所として――同社のインターンでは、この空き家のリノベーションと活用方法を考えるのが課題になっているそうです。

専務取締役・後棟晃(うしろ むねあき)さんの案内で、リノベーション中の空き屋を見学。今回のように和歌山県で過ごす同じインターン生の活動を見学させてもらう機会も多いそうです。「観光業とはまた別のところで、地域課題や様々な取り組みを知ることができ刺激になります」と後藤さん。

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18時30分

空港に戻り、一日の作業を終え、共同生活をするインターンハウス近くのお店に集合。中間報告会の打ち上げもかねて懇親会が開催されました。

南紀白浜エアポートの社員・柳原理穂(やなぎはら りほ)さん、インターン生とその受け入れ先の企業の方や、「地域を変えたい」という想いをもった地元のみなさんなど約20人が参加。それぞれのインターン活動の話や、将来の夢の話などに華が咲きました。本日お世話になった、後工務店・後さんの一本締めで懇親会は終了。お疲れ様でした!

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取材2日目(8月21日)

11時

今日は天保5年創業の老舗・柳屋旅館の湯川信太郎(ゆかわ しんたろう)代表にインタビュー取材。柳屋旅館では積極的に外国人雇用に取り組んでいて、たくさんの貴重なお話を伺うことができました。

白浜町の観光・ホテル業の歴史からはじまり、高齢化にともなう人手不足、外国人雇用の難しさなど、現状を真摯に話す湯川代表。

近日中にウクライナの家族を社員として受け入れる予定で、そのために新しい部署(仕事)を準備中とのこと。「へこんでたら、やってられませんからね(笑)」と前向きに、自分たちができることに努められているのが印象的でした。

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12時

柳屋旅館近くのレストランでランチ。全国屈指の生マグロの水揚げ量を誇る勝浦港が近いこともあり、新鮮な海鮮も魅力の白浜町。レストランでは「生マグロのひつまぶし」を堪能。

取材に同行してくれた南紀白浜エアポートの社員・西川明子(にしかわ あきこ)さんと、柳屋旅館のインタビューを振り返りつつ歓談。白浜町で新たに注目されているエリアなど、地元を知り尽くした先輩・西川さんの声に興味深く耳を傾けていました。

レストランに隣接するホテルは、ワーケーションの利用も多く、地域コーディネーターとして、アテンドする機会も多いそうです。オーシャンビューをのぞむ広大な足湯――確かに仕事もバカンスも捗りそうです。

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13時30分

三段壁(さんだんべき)洞窟

車で白浜町内の三段壁展望台へ移動。こちらも普段、地域コーディネーターとして、アテンドする機会が多いという白浜町を代表する景勝地。年間25万人が国内外から訪れるそうです。

展望台の近くにある「三段壁洞窟」も見どころの一つ。ここでも積極的にインターンを受け入れており、今回ご案内いただいたスタッフさんもインターン経験後に入社されたそうです。

エレベーターで地底36mまで下りた先には、自然の力で作られた洞窟が広がり、押し寄せる波、岩に砕ける波しぶきは圧巻。観光客が少なくなる秋から冬にかけては、ライトアップされた夜の洞窟を探検する「星降る洞窟ナイトウォーク」を2022年から開催。「ナイトウォークをはじめ、新しい試みに果敢に挑戦する方が多いというのが、私がお会いした白浜の方々の印象です」と後藤さん。

昨日、懇親会にも参加してくれた三段壁洞窟を運営する観光開発株式会社の新藤正悟(しんどう しょうご)社長にもご挨拶。こうした地域との信頼関係の構築も大切な業務の一つです。

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14時30分

車で空港へ帰る予定のところ「せっかく白浜に来てくださったのですから、他の景勝地も観ていってください」と、千畳敷(せんじょうじき)・円月島(えんげつとう)も案内してくれました。白浜を堪能してもらいたい――地域コーディネーターとして勤められている普段の顔を見るようでした。

<center><strong>▲千畳敷</strong></center>

▲千畳敷

<center><strong>▲円月島</strong></center><br />
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▲円月島

 

15時

空港に戻り、柳原さんに今回のインターンの受け入れについて、話を伺いました。

<strong>(プロフィール)</strong><br />
株式会社 南木白浜エアポート 誘客・地域活性化室<br />
柳原理穂さん<br />
和歌山県田辺市出身。京都の大学に進学し、卒業後は広島県で勤めていたが、2018年12月に「南紀白浜エアポート」にUターン入社。「インターンでは母のように、ときに姉のようにお世話になっています(後藤さん談)」。もうすぐ2児の母に。<br />
(プロフィール)
株式会社 南木白浜エアポート 誘客・地域活性化室
柳原理穂さん
和歌山県田辺市出身。京都の大学に進学し、卒業後は広島県で勤めていたが、2018年12月に「南紀白浜エアポート」にUターン入社。「インターンでは母のように、ときに姉のようにお世話になっています(後藤さん談)」。もうすぐ2児の母に。

―後藤さんの印象はいかがですか?

柳原さん 日常業務をやりながら限られた時間の中で、主体的に課題に向き合われていて、残りの1カ月も大いに期待しています。日常業務も手際よくこなしてくれるので、私としても助かっています(笑)。課題のために「こういう話がききたい」と相談があれば、話が聞けそうな場所を一緒に考えたり、人を紹介したりしているのですが、どこまで関わったらいいのか? その辺も模索しながら、後藤さんと一緒に成長していこうと思って取り組んでいます。

―柳原さんも、京都・広島を経てUターンされています。地元を選んで良かったことはありますか?

柳原さん 通勤ラッシュもないですし、同じ時間でもどこかゆっくり流れているといいますか……。自分のペースで働きながら、プライベートも充実させる、地方ならではの働き方ができる環境なのかなって思います。地元ならではのつながりも深く、色々な人に頼りやすいのも大きいです。県外から来た人には、方言が少しきつく感じられるかもしれませんが、どうか怖がらず(笑)。地域に飛び込んできてもらえると嬉しいです。

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インターンシップを振り返って

多くの出会いによって支えられたインターンシップ

インターンシップに参加して感じられたことを後藤さんに、振り返ってもらいました。

 

多くの人に出会い、支えられながら「地方の課題」に本気で向き合う後藤さんのインターンシップ。皆さんも興味のある分野を選んで、ぜひ挑戦されてみてはいかがでしょうか? きっと素晴らしい出会いと経験がありますよ!

 

※この記事に掲載されている情報は、2024年11月にサイトに公開した時点での情報です。