レポート

現役大学生のローカルインターンシップに密着【タカチホ】

長野県の観光土産品等を扱う総合商社のインターンに密着

首都圏に在住し、首都圏の大学に通う現役大学生が、地方企業のインターンシップに参加したらその意識はどう変わるのだろう?

そんな問いを実際に検証してみようと、横浜市出身・都内の大学に通う永井源太くんに、長野県の観光土産品等を扱う総合商社の「株式会社タカチホ(以下タカチホ)」のインターンに参加してもらいました。

タカチホのインターンシップは約1カ月開催される長期型ですが、このうちの2週目に当たる期間に3日間、特別に参加させてもらえることに。

ということで、早速その様子を覗いてみましょう!

取材対象

実施場所:長野県上田市

受け入れ企業:株式会社タカチホ

実施期間:2022年8月24日~26日

・参加者:永井源太さん 国士舘大学/法学部3年生

(プロフィール)
生まれも育ちも神奈川県。小学生から高校生まではアイスホッケーに打ち込む。大学入学後は、視野を広げるべく学童保育施設や保育園、スケートリンクなどでアルバイト。現時点では地方就職を希望しているわけではないが、興味ある事業ができるのであれば勤務地は問わないという。

初日(8月24日)

11時45分

北陸新幹線「かがやき」509号で長野駅に到着した永井くん。
いよいよ始まる3日間を前に、まずは今の気持ちを聞いてみました。

 

13時

長野駅前にある「ホテル国際21」へ向かいます。
ここのラウンジで、今回お世話になるタカチホの久保田一臣(くぼた・かずみ)社長と、先週からインターンに参加している高橋勇暉くん(長野県立大学グローバルマネジメント学部3年生)、前田みなみさん(北九州市立大学法学部2年生)にご挨拶。1週目に行ったプログラム内容や、今回のインターンシップの目標などをシェアしてもらいました。

ちなみにタカチホは、みやげ品卸売事業をコアとする観光総合企業で東日本エリアに1営業所と13の子会社があり、16の配送拠点を運営する上場企業。そんな大きな会社の社長さんから直接レクチャーを受けられるのは、地方企業でのインターンシップならではかもしれません。

▲ 久保田社長(長野市の中心部にあるタカチホの本社ビル前で撮影) ▲ 久保田社長(長野市の中心部にあるタカチホの本社ビル前で撮影)

▲ タカチホはみやげ品卸売事業以外にも、温浴施設やアウトドアショップ、釣り道具店などを運営しています。<br />
<br> ▲ タカチホはみやげ品卸売事業以外にも、温浴施設やアウトドアショップ、釣り道具店などを運営しています。

16時

たくさん話をして、初日は終了。
タカチホのインターンシップの目的は「同社の経営資源を活かし、地域課題を解決する新しいビジネスプランを考えること」。
そのため、1・2週目はフィールドワークがメインとなり、3・4週目はビジネスプランの検討会議がメインとなります。
ちなみに永井くんが参加していない1週目は、タカチホの経営資源を知るための現場視察や納品作業に同行し、お土産屋さんの話を聞いたりしたそうです。

二日目(8月25日)

10時30分

2日目は1日フィールドワーク。
午前中に向かったのは、長野市から車で1時間ほど行ったところにある戸隠高原。古くは「戸隠神社」を中心とした山岳信仰の土地で、近年はスキー場、植物園、牧場、キャンプ場などもある観光地です。そんな戸隠地区の地域課題を伺いに、戸隠高原ホテルに向かいました。

▲ 戸隠高原のシンボルともいえる戸隠神社の中社・大鳥居 ▲ 戸隠高原のシンボルともいえる戸隠神社の中社・大鳥居

3人に話を聞かせてくれたのは、同ホテル代表取締役社長の松野功(まつの・いさお)さん。松野さんからは、

・戸隠エリアまでのアクセス手段が限られていること
・スキーもメイン客がシニア層となり、若い層を呼び込むコンテンツが不足していること
・県全体の課題として、観光客を回遊させる意識が低いと感じること
・関東圏で使える交通系ICカードが使用できず不便であること

などの課題が挙げられました。

これらの話に真剣に耳を傾ける3人のインターン生。
これまでの人生では出会うことが少なかった経営者の視点、話のひとつひとつが刺激的な様子です。

永井くんも、するどい質問を投げかけていました。

濃密な時間を共有し、永井くんと2人との距離も一気に縮まりました。東京と、長野と、九州の大学生。こんな機会がなければ決して会うことはなかったであろう3人です。

▲ 松野社長にヒアリング後、冬はスキー場になる高原を視察しながら意見交換 ▲ 松野社長にヒアリング後、冬はスキー場になる高原を視察しながら意見交換

▲ 戸隠エリアはお蕎麦も有名で、一年中観光客が訪れる<br />
<br> ▲ 戸隠エリアはお蕎麦も有名で、一年中観光客が訪れる

14時

お昼ご飯のあと市内に戻り、続いて長野県庁へ向かいました。
長野県観光部の皆さんに、県としての課題をヒアリングするためです。

6人の役場の方からたくさんの資料の提供を受け、民間事業者とはまた違った視点での課題意識を伺うことができました。

▲ 長野県観光部がある廊下には様々な観光情報が掲示されていた<br />
<br> ▲ 長野県観光部がある廊下には様々な観光情報が掲示されていた

16時

県庁でたっぷり話を聞いた後は、今日1日の振り返りをするため、近くのレストランに行き、久保田社長も交えて意見交換をしました。

ドリンクバーだけで終わるはずの会議でしたが、大いに盛り上がり、そのままレストランで晩御飯を食べ、お互いの大学の話なども交えながら、夜8時半まで続きました。

 

21時

充実の2日目を終えた永井くんに、今日1日を振り返る手記を書いてもらいました。

▲ 手記内容<br />
2日目のインターシップが始まった。午前は戸隠高原ホテルのオーナーの松野さんから、戸隠周辺地域の課題、観光に対してのヒアリング調査を行った。その課題を元に午後は、長野県庁に行き観光課の方々と意見交換という貴重な体験をさせてもらった。<br>話している内容、言葉、独特な雰囲気全てが新鮮でこれが仕事なんだと感じ、私自身大人へのステップを踏んでいるんだと実感した。様々な話を聞いて、長野県の各地域の歴史文化、長野県の魅力を知りもっと多くの人に知ってもらうことができないか、なぜ今まで長野県の魅力に気づくことができなかったのか、色んな物をみて、聞き、触れることで疑問が湧いてきた。<br>初日にあった不安が今は変わり、次はどんな新しい出来事が待っているのかという興味、期待に変わり、明日が楽しみだ。 ▲ 手記内容
2日目のインターシップが始まった。午前は戸隠高原ホテルのオーナーの松野さんから、戸隠周辺地域の課題、観光に対してのヒアリング調査を行った。その課題を元に午後は、長野県庁に行き観光課の方々と意見交換という貴重な体験をさせてもらった。
話している内容、言葉、独特な雰囲気全てが新鮮でこれが仕事なんだと感じ、私自身大人へのステップを踏んでいるんだと実感した。様々な話を聞いて、長野県の各地域の歴史文化、長野県の魅力を知りもっと多くの人に知ってもらうことができないか、なぜ今まで長野県の魅力に気づくことができなかったのか、色んな物をみて、聞き、触れることで疑問が湧いてきた。
初日にあった不安が今は変わり、次はどんな新しい出来事が待っているのかという興味、期待に変わり、明日が楽しみだ。

最終日(8月26日)

9時

永井くんにとっての最終日。
朝からタカチホの本社に集まり、永井くんは参加していない1週目も含め、ここまでヒアリングしてきた地域課題を付箋に書いて整理し、ビジネスの種を見つけるための意見交換を行いました。

この日は、インターンシッププログラムのコーディネートを担当している合同会社キキの堀さんも合流。久保田社長からは「誰のために事業を行うのか、目的を明確にすることが大事」だとアドバイスがありました。

「こんなに頭を使ったのは初めてかもしれません。事業をゼロから作り出すことの難しさを感じます。でも、地域課題を解決する仕事って面白いと思います」と永井くん。

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13時半

頭をフル回転させた後は、引き続き地域課題のヒアリングに出掛けました。12時に会社を出発し、車でおよそ1時間。信州新町までやってきました。まずは名物だというジンギスカンをいただきます。

濃密な3日間の効果で急速に仲が良くなっています。

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15時

訪ねたのは、宿業に加え、レストランの運営やSUP・カヤックなどのアクティビティツアーも主催する『さぎり壮』。所長の小山宙軌(こやま・ひろき)さんに長野県の中山間地域の課題についてお話を伺いました。

生まれも育ちも信州新町の小山さんは、一度は関東へ出たものの、生まれ育った町の魅力を全国へと発信するためにUターンしたそうです。「信州新町は知名度が低く、観光地としてはまだまだ。まず認知してもらうとこから始めなければいけないので、大変です」と語ります。

永井くんはじめ、3人の大学生からは、

・首都圏では味わえないこの地域ならではの魅力は何か?
・情報発信において力を入れていることは何か?
・こういう機会があれば助かるといったようなものはあるか?

など、午前中の会議の成果もあり、昨日にも増して意図のある質問が出ました。

「地元で活動している人は、思い描く理想の町や観光産業に向けて具体的な行動を起こしていて、心からすごいと思いました」という永井くん。最後はみんなで記念の一枚。

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17時

車でタカチホの本社に引き返すと、2泊3日のインターンシップもいよいよ終わりの時間が近づきます。それぞれに感謝を伝え合いながら、再会を誓う3人でした。

3日間を終えて

「楽しかった」では終われない。
働くことの醍醐味と難しさ、地方の面白さ、すべてを糧にと心に誓う。

長野を後にする前に、永井君にこの3日間を振り返ってもらいました。

 

今回、永井くんを快く受け入れてくれた久保田社長は、次のように話します。
「地方には、学生を育てることで地域へ貢献したいと考えている会社や人が集まっています。行政や民間企業、学生や経営者同士の横の繋がりも強く、お互いに協力して事業をイチから作っていける環境もあります。観光産業をはじめ、ビジネスの種になる魅力的なリソースもたくさんあるので、ぜひ就職の選択肢に入れてくださいね」

永井くんの意識を確実に変えた2泊3日のローカルインターンシップ。
地域、地方との縁を築く意味でも、一歩を踏み出しやすい取組みです。皆さんも、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか?

 

※この記事に掲載されている情報は、2022年10月にサイトに公開した時点での情報です。