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スペシャルインタビュー

第7回「LOCAL×はたらく」を考える 第7回「LOCAL×はたらく」を考える

第7回「LOCAL×はたらく」を考える

株式会社久原本家グループ本社 代表取締役社長  河邉 哲司 氏
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株式会社久原本家グループ本社 代表取締役社長  河邉 哲司 氏

1893年に福岡県糟屋郡の久原村(現久山町)で創業した醤油蔵をルーツに持ち、創業124年を迎える老舗である、総合食品メーカー久原本家グループ。その4代目として、1996年に社長に就任。椒房庵の「からしめんたいこ」や「キャベツのうまたれ」、「茅乃舎だし」などのヒット商品を世に送り出すアイデアマンでもある。なお、久原本家グループは食品製造だけでなく、飲食業や小売業にも積極的に展開している。2005年9月には「自然食レストラン茅乃舎」を福岡県・久山町に開業したほか、2016年7月にはベトナム・ホーチミンに初の海外飲食店舗となる日本料理店「KUBARA」をオープンしている。

地方企業だからこそ。「本物」へのこだわり

地方企業だからこそ。「本物」へのこだわり

私はこれからは「地方の時代」だと考えています。

 

昔はあらゆるものが中央集権的でしたが、eコマースなど商売の手段も増え、「大きいことがいい」が通用しない時代となりました。逆に、「食」や「農産物」という点では地方に強みがあります。また、少子化が進む中で、地方にいる家族の近くに住んで働きたいという人が多くなれば、彼らの雇用の受け皿となる場所も必要となってきますし、仕事だけに追われるのではなく、「より豊かに人生を送るにはどうしたらよいか」という議論も活発になってきています。そうした面からも、今地方へ注目が集まっていると感じています。

 

そのような中で、地方の企業が生き残るためにはどうしたらいいか。大手企業と同じ土俵で戦うのではなく、我々だからこそ出せる価値とは何なのか。それは、「ここまで手間ひまかけてやるの?」と思われるくらい、徹底的に質にこだわり続けることです。

 

当社では「モノ言わぬモノにモノ言わすモノづくり」という信念を大切にしています。「モノを言わす」ような商品を作るためには、時間も手間も惜しまず、「本物」を追求し続けることです。だから値段も高くなってしまいますし、原料の都合もあって数量限定にならざるを得ない。でも、そういうこだわりが結果的に大手との差別化に繋がり、我々だからこその価値となっていくのです。

 

以前、福岡の百貨店に出展した際に、「安いお店が増えたせいで商品が売れなくなったと思っていたが、久原さんの商品が高くても売れるのを見て、お客さんが欲しいものを本当に供給できていなかったんだと気付いた」と言っていただいたことがあります。そこに、地方の企業として生き残っていくためのヒントがあるのかなと思っています。

何事も「足を使う」ということが大切

何事も「足を使う」ということが大切

私たちの商品は、あちこちのスーパーに置いてもらうような安いものではないからこそ、ブランド価値を高めることをすごく意識しています。ブランドは美味しさへの期待に繋がります。食品会社なのに、社内にはデザイナーやコピーライターがいるくらい、我々の思いを伝えるための言葉や写真、そしてデザインを大切にしています。

 

社員にもよく、「感性を磨け」と言っています。特別な知識がなくてもいいから、美術館やミュージカルに足を運んでみることを勧めています。わからないながらも、そこで感じるものがあるはず。それがいつか何かの役に立つと思うのです。

 

また、新しいものを生み出す必要があるイノベーションの時代に大事なのは「情報」です。ただ、今の世の中はどこにいてもインターネットで何でも情報が得られると言いますが、それはちょっと違うと思っています。実際に人と会って話し、体験して得た情報から、初めていろいろなことがわかってくるものです。その点、地方は東京に比べると環境面で劣るかも知れません。だからこそ、出張でも何でも自分で足を運んで拾ってこいと社員にはいつも言っています。

 

私が思うに、大学時代にやっておくべきことで最も大切なことは、「自分が得意な物差し」を見つけること。勉強も、友達をつくることも、アルバイトも、もちろんそれ以外でも、「自分は何に興味があるのか?」「どのようになりたいのか?」という問いを求め続けるのです。そのためにも、学生の間に自分の足で歩いて、経験して、さまざまな情報に触れるべきだと思います。とにかく自分で動くことが大切です。元気な若者が増えないとこの国は駄目になりますし、特にこれからの地方を支えるのは、そういう元気な人たちなのですから。

地方の企業の頑張りから、日本を元気にしたい

地方の企業の頑張りから、日本を元気にしたい

今、私には二つの夢があります。

 

一つは地方の企業として、海外に旗を立てるということ。九州という土地柄もあるのでしょうか。私は、地方の企業だからと地方でじっとしているのではなく、あえて全国へ、そして世界へと打っていきたいと考えています。地方だって面白いことができるんだという思いで「この田んぼばかりの町から世界へ行くぞ!」と社員といつも話しています。既にベトナムにレストランをオープンさせましたし、米国でのeコマースをスタートさせていますが、今以上にもっと広く世界に発信していきたいと企てています。

 

そしてもう一つが、私個人そして久原本家グループが「さすが」と言われる機会をもっと増やすことです。「さすが」という言葉の裏には「期待値」があります。その期待値を超えた時に、「さすが久原だ」と言っていただけるわけですから、そういうモノづくりにこだわっていきたいと考えています。そのためにも、大手がやらないような戦略をあえて立てていく必要があります。

 

「なぜそんなにチャレンジ精神があるのか?」と聞かれることがあります。

実は若い頃は、当時はまだ小さな醤油屋だった久原を継ぐのが嫌で嫌で逃げ回っていたのですよ。しかしいよいよ継がなければならなくなったときに初めて、「時代が変わっていくのに、今と同じことを続けていては駄目だ」と4代目としての使命を考えたのです。そのときにたどり着いた「チャレンジしなければならない」という強い思いが、私の全ての原動力になっています。醤油屋からタレやダシなど新しい領域に事業転換したのも、本格的な茅葺き屋根のレストランを作ったのもチャレンジでした。でも、新しいチャレンジをすると、必ずお客様や地元の人が喜んでくれるんですよ。それが嬉しいので、もっと喜ばせようと思ってまたチャレンジする。それの繰り返し、その積み重ねが今です。だから、お金とか上場とかそういうことはどうでもいいんです。この場所で商いをしていた先祖と同じように、これからも社会貢献を通じて地元に恩返しをし、この福岡県の久山町という場所から、全国そして世界に飛び出していきたいと思っています。

 

我々は「醤油」と「だし」を商品として持っており、これらは和食の中心となるものです。これからの時代、ますます世界を意識して発信していきます。我々のような田舎の中小企業がそうやって頑張ることで、「あの会社もできるのなら」と思ってもらいたい。私はそうやって皆に火をつけて、日本全体を元気にしていきたいんですよ。地方にいる我々だからこそそういうやり方ができるのではないかと考えています。

 

(2017年2月1日掲載)

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