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地方企業インターンシップ 現場レポート【地域法人無茶々園】

東京育ちの大学生が愛媛県の段々畑で農業体験
現地ならではの「発見」と「学び」があった

東京の大学に通う学生・大橋純さんが、愛媛県にある「地域法人無茶々園」のインターンシップに参加する様子を2日にわたって取材しました。

全国の主要都市だけでなく、地方でも数多くインターンシップは行われていますが、興味があっても、知らない土地に飛び込んでいくのは勇気がいること。しかしそこから1歩踏み出すことで、新たな景色や発見が広がっていくかもしれません。

地方就職したいと考えている方はもちろん、少し気になっているという方も、ぜひ参考にしてみてください。

 

取材対象

実施場所:愛媛県松山市(西予市)

受け入れ企業株式会社地域法人無茶々園 

実施期間:2019年9月2日~9月7日

参加者大橋純さん
東京都八王子市出身。東京の大学(経済学部)に通う3年生。4歳年上の兄が「無茶々園」で働いていることをきっかけに、今回のインターンシップに参加した。

 

収穫物の加工と包装作業

大橋さんのインターンシップが始まって3日目。この日は、乾燥野菜・乾燥果物を製造している「てんぽ印の乾燥工房」でゴーヤの加工体験からスタート。丁寧にゴーヤを洗浄し、一口大にカット。カットしたゴーヤを均等になるようトレーに敷き、次々と機械にかけて乾燥させていきます。

 

前日は畑へ行って、トマトや大根など収穫が終わった畑の片付け作業と、今ここで加工しているゴーヤほか沢山の野菜を収穫してきたそうです。「自分で収穫したものが商品になるのは嬉しいですね」と笑顔で話す大橋さん。

 

乾燥作業を終えると、工房外の作業スペースで前日に収穫した人参を「有限会社てんぽ印」の皆さんとビニール包装。「有限会社てんぽ印」は新規就農者を受け入れる「無茶々園」の連合組織の一つ。大橋さんと同じように、農業に興味を持ちインターンシップを経験して就職された若い社員の方々が多く、入社の経緯や趣味の話などを交わしながら、和気あいあいとした雰囲気で作業が行われました。

 

摘果作業と歴史や取り組みを学ぶ座学

翌日は松山市から西予市に移動し、早朝から畑でみかんの摘果作業。果実が病気にかかっていないか、1本の木に果実が実り過ぎていないか、1本1本の木を念入りにチェック。全体のバランスを見ながら、品質を揃えるため果実を摘み落としていきます。

 

摘果作業を終えると、お昼休憩を挟み、廃校となった小学校を再利用している事務局にて座学の時間。無茶々園理事・村上尚樹さんから「無茶々園」のこれまでの歴史や、現在の取り組みについて1時間ほど学びました。

 

参加者インタビュー

プログラム終了後、参加者・大橋純さんにお話を伺いました。

 

―今回のインターンシップに参加したきっかけは?

大橋:ここで働いている兄の存在が大きいですね。兄が携わっている農業の仕事って実際はどんなものなんだろう?と思って参加しました。もともと農業や林業といった第一次産業に興味があったんです。

 

 

農場にてトラクターで作業するお兄さんと 農場にてトラクターで作業するお兄さんと

―どうして第一次産業に興味を持ったのですか?

大橋:生活していく上で欠かせないものだからです。生活の基盤となる職種・業界ですから、自然と興味を持ちました。その他にもう一点、身近なところで外国人労働者の雇用問題に興味がありまして。ここでは技能実習生の受け入れもしているので、皆さんに直接お話を聞いてみたいと思っていました。

 

―実際にお話はできましたか?

大橋:はい。ここで働いているのはフィリピンの方々なんですけど、「お金を稼ぎながら勉強もできている」と仰っていました。一緒にご飯を食べながら、いわゆる生の声を聞けたのは良い経験でしたね。

 

―大橋さんは東京生まれ東京育ちですが、地方で働きたい理由は?

大橋:現在、東京には人が集中しすぎていると感じていて。地方で働く方が、個人に求められる仕事の幅も広く、自由度も高そうだなと思ったんです。海が近い場所なら、趣味のサーフィンを楽しみながら働くこともできますし(笑)。それと同時に、地方に身をおきつつ、その土地に人を呼び込む。いわゆる地方創生のようなことにも興味があるんです。その点、無茶々園は新規就農者の育成など、地域作りを中心に事業を展開されているので、学ぶことも多いだろうと思いました。

 

―初めて来た愛媛県の印象はいかがですか?

大橋:もう最高ですね。このインターンシップが始まる前に「無茶々園」の商品がどれだけ市場に出回っているのかっていう下見も兼ねて、兄と松山市内を観光したのですが、商店街も含めて全体に活気がありましたね。海も近いですし、郊外に足をのばせば土地が広く開放感があって、星もすごく綺麗でした。ただ皆さん車の運転はちょっと荒いと感じました(笑)。

 

 

―今回、実りの多いインターンシップ体験になりそうですか?

大橋:そうですね。インターンシップの体験は今回が初めてなのですが、参加してよかったなって。来月は林業関連の企業が集まるイベントに行く予定なのですが、こうして、「存在は知っていたけど、実際には触れたことがないこと(仕事)」を経験できるのが、今は一番楽しいです。

 

無茶々園理事・村上さんと振り返るインターン

最後に、大橋さんのインターンシップ体験をご指導されていた理事の村上尚樹さんも交え、お話を伺いました。

 

―インターンシップが導入されたのはいつからですか?

村上:担い手や後継者の育成を目的として本格的に始まったのは1999年からです。設立に携わったメンバーは、一度他所に出てから地元に戻ってきた人たちだったので、地元を良くするためには外からの血を入れていかなきゃ難しいだろうと。且つ、優秀な人材を受け入れるために、まずは一人でも多くの学生に興味を持ってもらいたいということで、こういった制度が導入されました。

 

―時代によって、インターンシップに参加される方の傾向に変化はありますか?

村上:そうですね。僕がここに来た2000年代初頭は、良くも悪くも「はみ出し者」というイメージが強かったです(笑)。それから10年ほど経って「職業としての農業」を選択することが一般化してきたように思います。現在もその流れが続いていて、就職活動の一環として参加する方が増えたという印象ですね。今の若い世代は、ただお金を稼ぎたいというよりも、仕事にやりがいを求めていたり、社会に貢献したいという気持ちが強い。そういった価値観で職業を選択する流れになってきていると思います。

 

―導入時からインターンシップの内容は変化していますか?

村上:農業なので季節によって内容は変わりますが、カリキュラムをかっちり組むような形ではなく、その時期の作業内容に合わせた実践型なのは変わらないです。人によって違いはありますが、先に知識を入れて頭でっかちになってしまうより、実際に体験してもらって、そのあとに知識が入って腑に落ちるというほうが僕は良いと思っています。

 

―取材中に社員の方々にお話を伺うと「全国の農業をまわってここが一番良かった」と仰る方が多かったのですが、そう思わせる魅力はなんでしょうか?

村上:僕自身もいろんな場所に行って研修を受けたんですけど、ここは「地域ぐるみ」でやっているので、本当にいろんな人が集まっているんです。

『地域協同組合無茶々園』という大きな枠組みの中には、農業をやりたい若い子たちが集まる『有限会社てんぽ印』がある一方で、おじいちゃんおばあちゃんの農家さんもいっぱいいるし、福祉サービスを行っている部門もある。狭い地域ゆえに人と人との繋がりも強いので、「会社に就職する」というよりも、“こういう場所でこういう風に暮らす”という「生き方としての農業」の方が、しっくりくるのかなと思います。「職業としての農業」にこだわるのではなく、こういった選択肢もあるということを知ってもらえたら良いですね。

やっぱり働く理由が1つしかないと、続けていくのって難しいじゃないですか。でもそこにいろんな価値を見出していれば、厚みが出てくる。そういった多元的な価値がここにはあるんじゃないかなと思います。

 

―企業としての今後の未来はどのように見込まれていますか?

村上:やっぱり他所から来る人を増やしていきたいですね。それに応じて事業を拡大していき、地域を盛り上げていきたいと思っています。地方で本当に切実なのは、人口減少と高齢化問題。僕一人が頑張っても人を増やせるわけではないので、ここに来た人間がそれぞれ成長して、「自分もこうなりたい」と思ってもらえるようなロールモデルになっていってほしいですね。

 

 

―最後に改めて大橋さんから、インターンシップを振り返っての感想をいただけますか?

大橋:一番印象的だったのは、やっぱり村上さんの人柄です(笑)。技能実習生のお話を聞きたいという希望も快く受け入れてくれましたし、知りたいこと・気になること全てに気さくに応えて下さいました。村上さんはじめ社員の方のお話を聞いても、農業で生活していくために利益を上げることや、地域の活性化に関しても、沢山の苦労があることも知ることができました。参加することに最初は不安でしたが、体験を通して新しい発見や学びを得ることができたので、本当に良かったです。

 

まとめ

体験を振り返っての印象に「村上さんの人柄」を挙げられていましたが、作業中やインタビュー中の大橋さんと村上さんの掛け合いも息ピッタリで、楽しく笑顔の絶えないインターンシップ現場でした。

参加者が1人というのもあったと思いますが、お互いに知りたいこと・知って欲しいことが、体験を通じて“密に”交わされていた印象。「インターンシップ=集団」というイメージから、1人で参加するのはちょっと…と敬遠しがちですが、大橋さんのように好奇心の赴くままに参加することで、こうした新しい発見や学びがあるかもしれません。