レポート

地方企業インターンシップ 現場レポート【西川ゴム工業】

業界トップシェアの自動車用ゴム製品で広島から世界へ
県外からインターシップに参加する3名を密着レポート

広島県広島市に本社を構え、自動車のドアやサイドウィンドウなどから、雨や風や音など、車内への浸入を防ぐ“ウェザーストリップ”という製品で業界トップシェアを誇る西川ゴム工業株式会社

同社のインターンシップは5日間で行われ、今回10名の学生が参加。そのうち、地元広島以外から、社員寮に泊まり込みで参加している3名の様子を取材させていただきました。

様々なプログラムを通じて、彼らは何を感じ、学んだのでしょうか。地方都市の企業に秘められた魅力とともに、彼らの奮闘ぶりを追いました。

取材対象

実施場所:広島県広島市

受け入れ企業西川ゴム工業株式会社 
1934年創業。ゴム、プラスチック等、産業用高分子製品の開発・設計・製造・販売。

実施期間:2019年9月2日~9月6日

参加者臼井輝樹さん野澤笙子さん田中美汐さん

プレゼンテーションに向けたグループワーク

取材に伺ったのは、インターンシップ終盤に差し掛かる4日目。本社ビル内の会議室では、10名の学生たちが3班に分かれて営業業務にまつわるグループワークを行っていました。

グループワークの課題は、「みなさんが通う大学について、プレゼンテーションしてください」。高校3年生役を演じる社員の方に、学生たちは大学の職員になりきって、自分たちの大学を第一志望として選んでもらえるよう、その魅力をアピールするというものです。

“自社製品”を“自動車メーカー”に売り込む営業業務を“大学”と“受験生”に置き換えることで、学生たちも身近なテーマとして捉えられ、積極的に取り組んでいました。

プレゼンテーション本番は実践的で緊張感も

グループワークを経て、まとめたプランを全員の前で発表。各グループとも、パワーポイントを駆使しながら学校の魅力を伝えていきます。

それぞれに個性が光った、3グループのプレゼンテーション。終了後、社員の方からは「文字よりも視覚で訴える」「ポイントを絞る」「具体的な情報を提示する」などプレゼン資料のまとめ方に関することに加え、「話し方」「声のトーン」「身振り手振り」といった何かを相手に伝える際に取り入れると効果的なポイントのアドバイスがありました。

貴重な生の声が聞ける、営業社員との座談会

社員の方との座談会に臨む学生たち。企業側からは、営業担当社員2名が参加されました。

学生たちの質問は、仕事のやりがいや誇り、海外クライアントとのコミュニケーションといった業務に関することから、ストレス解消法、休日の過ごし方などプライベートのことまで様々。そんな質問に対し、一つひとつ丁寧に耳を傾け、親身になって答える社員の方の姿が印象的でした。

各自の学びを総括する、インターンシップ参加報告

インターンシップ最終日には、これまでの課程を振り返って、報告資料を作成しました。前日のプレゼンテーションでの経験を踏まえ、グラフや指標を用いるなど読み手(受け手)が分かりやすいように工夫して資料をまとめます。

前日よりも余裕がある表情で、5日間を振り返る学生たち。疑問や不安は放置したり一人で抱え込んだりせず、仲間に相談したり社員の方にアドバイスを求めながら、その場で解決して次に進もうとする姿勢が見て取れます。そのせいか、デスクワークとは思えないほどの活気があふれていました。

 

若手社員との懇談会では、皆さん興味津々

最後のプログラムは、若手社員の方との懇談会です。参加されたのは、グローバル事業推進部、生産企画部、経営企画部で活躍する若手社員3名。社員の方による自己紹介から始まり、仕事の内容、一般的な一日の流れなどの説明が行われました。続いて、学生から事前に提出されていた質問に、3名がそれぞれ回答していきます。

比較的年齢が近いということもあってか、学生たちも若手社員の方々に興味津々。前日の座談会よりもさらに深く切り込んだ質問も飛び出し、社内では最も身近な存在となる先輩より、少しでも多くの学びを得ようと積極的です。若手社員の方々も、学生たちの思いに応えようと、エピソードを交えながら時間一杯まで話してくださいました。

そして時間は正午。学生たちと若手社員3名の一行は、会社近くのカフェへ移動。ランチをとりながら懇談会の続きです。カフェという場所柄もあってか、よりリラックスした雰囲気でインターンシップの感想や、就活での悩みといった話に華を咲かせていました。この懇談会で、インターンシップの全日程が終わりました。

 

インターンシップ参加者の声

プログラム終了後、参加した学生3名にお話を伺いました。

 

臼井輝樹さん(京都府出身、京都の大学に在学中) 臼井輝樹さん(京都府出身、京都の大学に在学中)

野澤笙子さん(鳥取県出身、大阪の大学に在学中) 野澤笙子さん(鳥取県出身、大阪の大学に在学中)

田中美汐さん(山口県出身、山口の大学に在学中) 田中美汐さん(山口県出身、山口の大学に在学中)

―皆さんはどのようなきっかけで今回のインターンシップに参加されたのですか?

田中:リクナビの合同説明会で、この会社を知りました。大学の広島県出身の先輩に相談したところ、優良企業だと教わったんです。そこから、会社のことについて深く調べるようになり、インターンシップに参加しました。

野澤:会社の存在を知ったのは、大学で見たインターンシップ実施企業の一覧です。広島にある企業ということで、興味を持ちました。私は鳥取県出身なので、高校の同級生も広島の大学に進学している子が多いんです。広島は暮らしやすく人が優しいと聞いていたので、広島に就職して生活できたら良いなと思っていました。

臼井:私も大学でインターンシップ実施企業の一覧を見て興味を持ちました。西川ゴム工業を選んだのは、世界的に活躍している企業で、業界トップのシェアを持っていたからです。また、広島という街そのものにも興味がありました。

 

―野澤さんは広島で就職したいということですが、広島にも数ある企業の中から西川ゴム工業を選んだ理由は何ですか?

野澤:インターンシップの情報を知ったのが、マイナビやリクナビの情報解禁前でした。西川ゴム工業のHPなどで独自にいろいろ調べていくうちに、業界トップシェアであることやBtoB企業であることなどがわかりました。それまであまり知らなかった企業・業界だったので、好奇心がくすぐられて興味を持つようになったんです。

 

―今回のインターンシップで特に印象に残っているプログラムは何ですか?

田中:2日目のロールプレイングでクレーム対応の仕事を体験したことです。出された課題を班で協力して解決するプログラムなのですが、「協力」というのは言葉では簡単に言えても、実際にはとても難しく大変なことだと実感しました。

 

―プログラムを通じて、社員の方々との接点も多かったと思います。印象に残っている言葉やエピソードはありますか?

臼井:西川ゴム工業の社員の方は、全体的に温かくて優しい印象があります。感動したのは、工場見学の帰りにバスを待っていた時の出来事です。雷が鳴って雨雲が近づいてくる中、工場の方が傘を人数分抱えて走ってきてくださったんです。自分もこんな温かみのある社会人になりたいなと憧れましたね。

 

―今回のインターンシップを通じて、今後の地方就活に活かせそうな学びはありましたか?

野澤:BtoB企業ということもあり、仕事内容や社風のイメージがしづらかったのですが、インターンシップを通してチームでの情報共有やコミュニケーションを大切にされていることなど、その社風に触れられたことは大きかったですね。ネットだけでなく、その地に訪れ、社員の方と触れ合うことで知る情報の大切さを身にしみて感じました

田中:頭では分かっていたつもりでしたが、インターンシップを通じて「仕事をするうえでの責任」について改めて考えさせられました。先日行ったクレーム対応のロールプレイングでも、実際に自分がその立場だったら正しく対応出来るだろうか…その責任の重さを肌で感じることができましたし、社会人になる前にこういった経験が出来たのは、大きな財産です。

臼井:地方都市でも、国内の大都市や世界と繋がっているということを学びました。以前は、大都市の大企業が世界と繋がって日本のビジネスを動かしているイメージでしたが、地方都市の企業でも、グローバルに活躍できるということが分かりました。東京や大阪など大都市の企業に入らなくても、世界を相手にしたダイナミックな働き方ができるんだと確信しました

 

採用担当者 インタビュー

管理本部 人事部 髙瀬惣一さん 管理本部 人事部 髙瀬惣一さん

―インターンシップを導入されたのは、いつからですか?

もともとは、広島県内の大学と企業をつなぐインターンシップ協議会の取り組みとしてスタートしました。当時は大学からの要請に応える形で、地元大学の学生しか受け入れていなかったのです。

ただ、企業としては、進学で県外へ出て、人も情報も多様な環境で地元にはない様々な物事を見聞した学生も必要だということで、広く受け入れていこうという動きに変わり、2016年2月から主体的に独自のインターンシップを展開しています。

 

―学生と接する中で、気にかけている点はありますか?

受け入れる側の私たち自身、学生に対するアドバイスや講評、フィードバックなどで失敗することも多いんです(笑)。つい熱くなり過ぎて、学生を困惑させることもありますし。まだ仕事のイロハも分からない学生たちに、こちらの思いを押し付けるだけでは伸びませんし、視野も広げてあげられません。ですから、学生にとっての気付きをうながしたり、良い部分を伸ばしてあげられるよう、意識してやっています

 

ーインターンシップを通じて、学生には何を学び感じ取ってほしいですか?

一番は、企業や職種についてしっかり研究する機会にしてほしいです。理系に比べ文系の学生は、何の仕事に就くかという“就職”より、どの会社に入るかという“就社”の意識が高い傾向にあると感じています。

自分はどういう仕事をしたいのかを、しっかり見つめて研究した上で“就職”してほしいですね。そのためにも、ただ何となくプログラムをこなすのではなく、仕事に関する疑問や関心をどんどん掘り下げて、会社の“ホントのところ”をつかんで帰ってほしいなと思います。

 

まとめ

インターンシップへの参加を決めるまでは、西川ゴム工業について詳しい知識がなかったという参加者の皆さん。

参加にあたってリサーチを進めるにつれ、業界トップシェアを誇り世界的に知られる企業であることを知ったといいます。それだけに、不安や緊張もあったようですが、インターンシップでの社員の方々や参加学生との交流を通じて、同社への愛着と関心が高まった様子です。

同時に、「首都圏や大都市の企業でなくとも、世界を舞台に活躍できる」ことを、強く実感する機会になったことでしょう。規模の大小や知名度の高低を問わず、地方都市にも素晴らしい企業は沢山あります。人事担当者の方がおっしゃっていた「就社ではなく就職」を実現しやすいことも、地方都市の企業の魅力ではないでしょうか。

地方都市での就職を選択肢に入れることで、皆さんが活躍できる可能性の幅はグンと広がるはずです。