地方で生きる

離島で働く 三宅島編

キャンプツアーやゲストハウスを立ち上げ島を楽しむ。

離島に移住。響きはとても良いけど、本当に暮らしていけるの?そう思う人もいるのではないでしょうか。島出身でUターンを希望している人、島暮らしに憧れて移住したいと考えている人。島に移住したら仕事はあるのか、どんな生活が待っているのか、島での仕事と生活についてインタビューしました。

一般社団法人アットアイランド 兼 三宅島ゲストハウス 島家 代表
伊藤 奨さん

東京都生まれ、東京諸島(伊豆諸島・小笠原諸島)育ち。伊豆諸島の大島、八丈島と小笠原諸島の父島で、幼少期から高校まで過ごす。その後、神奈川県の大学に進学し教員を目指すが、進路を変更。社会人経験を積み、東京諸島・教育・自然をキーワードに、一般社団法人アットアイランドを設立。三宅島に移住し、2017年にゲストハウス・島家を三宅島でオープンさせた。

 

三宅島ってどんな島?

東京都・伊豆諸島の一つ三宅島へは調布飛行場から飛行機で最短50分で行くことができる。人口は約2,500人(平成30年12月)。火山とともに生きる島として知られ、およそ20年周期で噴火を繰り返す島内には、火山島ならではのダイナミックな地形や景色が広がっています。また、ウミガメを見たり、ドルフィンスイムをするために訪れる観光客も多く海がきれい。産業は水産業や農業、林業が中心。海の幸が豊かでマグロ類やキンメダイ、天草などが取れます。

三宅島ではどんな仕事をしているの?

一般社団法人アットアイランドという、東京諸島の出身者で島に思いのある若者を、有志で集めた団体の代表を務めています。

この団体では、キャンプツアーの運営や、ゲストハウスの立ち上げ・運営などを行なっています。そして今は並行して、アットアイランドが作ったゲストハウス・島家のオーナー業をしています。経営部分から掃除まで、すべてやっています。また、三宅島のことを良く知るために、公園を管理する仕事やネイチャーガイド、島コンやお祭りの司会、地域の青年団・消防団などにも積極的に関わっています。

三宅島を選んだきっかけは?

私の生い立ちが関係しています。父が東京都の保健所に勤めていて、大の島好き。私の生まれは東京の六本木なのですが、父の転勤ですぐに伊豆諸島・大島に移住。さらに、小笠原諸島・父島に移住し、その後、高校卒業までを伊豆諸島・八丈島で過ごしました。

教員になるため神奈川県の大学に進学しましたが、在学中に本当に教員で良いのかと疑問を感じ始め、卒業後の1年間は、学生時代から勤めていたフィットネスクラブで、インストラクターとして働きました。そんな中で、大切にしたいキーワードは、「東京諸島」「教育」「自然」だと気づき、フィットネスクラブを1年で退職。自然と教育に関する経験を積むため、神奈川県三浦市の野外教育の施設に就職しました。

一方で、有志団体のアットアイランドを立ち上げ、東京諸島に関係する若者を集め、将来どのような島にしていきたいか、話し合う場を設けました。そこではさまざまな意見が飛び交いましたが、島育ちにも関わらず、島の本当の課題を理解できていないことに気が付きました。島の現状も課題もよくわからないまま育った自分たち。何よりもそれを把握するべきだと考え、まずは私が当事者として島の現状と課題を把握しようと思いました。

東京諸島11島をすべて訪れ、三宅島に腰を据えて活動することに決めました。三宅島は噴火を繰り返しつつも島を思う人が多く、素朴な反面、パワーがある。また、自分がまだ住んだことのない場所でチャレンジしたいということもありました。

三宅島で何をすることにしたのですか?

東京諸島・教育・自然というキーワードは変わりませんでしたが、いきなり教育関連を仕事にするのは難しい。島の良さを知り、伝えられるのは観光事業だと考え、まずはキャンプを企画し島外から人を呼び、三宅島の良さを伝える活動を始めました。その間、私自身も三宅島の人や、生活の流れと状況を知るために、運送のアルバイトや、中学校の支援員を行いました。

三宅島に来て1年が過ぎた頃、キャンプ企画だけだとなかなか深く三宅島に関わる人が増えないと実感。ゲストハウスが三宅島にはなかったことと、素泊まりであれば外食になるので、島民と観光客が関わる機会ができると考え、ゲストハウス・島家を作ることになりました。

1,500万円の融資を金融機関から得て建物を購入。まだ20代で信用がないのが普通ですが、支店長が私のブログを見ていてくれたこともあり、快く融資を引き受けてくれました。

ゲストハウスはリノベーションの段階から島内外の人々が出会える場所にしたい、という思いがあり、ワークショップ形式で改築を進めました。そして2017年7月1日、ゲストハウス・島家がオープン。オープンして1年経った今、すでにリピーターとなってくれる方々が数多くいらっしゃいます。

プライベートはどう過ごしてるの?

プライベートと仕事の垣根があまりないのですが、たまに集中して事務作業をしたい!という時など、東京に行ったりします。

島にいると地域のコミュニティがあり、家に島民がふらっと訪れてくれたり、飲み会に誘ってくれるので、日々が割と忙しい。一人で集中したい時は逆に本島に戻ります。ただ、それは私の仕事や立場ならではのことでもあるので、自分でバランスを取って居場所を作っていくのが大事だと思います。

三宅島に暮らしてみた感想は?

三宅島を含め東京諸島は、秘境と呼ばれる場所に行くのが難しくなく、車を降りて2~3分も歩けば絶景が広がっていたりします。 そんな自然が素晴らしい場所にありながら、東京から近過ぎず遠過ぎずで、程よい距離感です。自然と共に暮らしたい人にとって、とても良い場所だと思います。

ただ島全体が人不足で、張り切って色々なところに顔を出すと、島でのんびり暮らすはずが都会より忙しい!なんてことにもなりかねません。なので、自分でコントロールしながら生活することが重要です。

また、三宅島はお祭りがとても熱い!子どもから大人まで、お祭りとはそもそも何のためにあるのかを自然と理解し、それを踏まえて継承していっているので、本気のお祭りが繰り広げられ、とても感動します。

今後の目標は?

まずは、今までほぼ一人で運営していたゲストハウス・島家にスタッフを1人雇い入れ、より自分が事業運営に集中できるような仕組みを作ろうとしています。

また、島家をリニューアルオープンさせ、よりお客様がプライベートを保てる空間にしたいと思っています。その他、ゲストハウス以外の事業も広げて、遊びに来た人がより、満足できるような空間づくりをしていきたいです。

三宅島に関しては、自分が今ゲストハウスを持つエリアを、どう面白くしていけるかを考え中です。観光で来た人にも、三宅島で店やイベントなど、新しい取り組みが始まる時に、自分も関わりたい!と思ってもらえるような仕組みづくりができたらと思っています。

法人をより大きくしたいという気持ちはありません。ただ、東京諸島に関わる若い世代がより力を発揮し、10年たった時に、より面白い島々になれば良いなと思っています。その時に、アットアイランドが教育や創業の面でプロフェッショナルな民間の団体になっていたら良いですね。そのための仲間づくりも、行っていく予定です。

離島移住を目指す人に三宅島はオススメですか?

そうですね。バランスをうまく取れれば、とても暮らしやすい場所だと思います。自分がどのように暮らしたいのか。のんびりしたいのか、島民とがっつり関わりたいのかなど、しっかりとビジョンを持って移住することをおすすめします。あまり張り切らず、やりたいことに対してゆっくり手を伸ばしていく、という気持ちが大事かもしれません。

三宅島で就職したいという人も、観光協会、役場、建設系、消防などに職を得て移住した人が多くいるので、仕事は探せばあると思います。自分で仕事を作っても良し、就職しても良しだと思うので、ぜひ一度、三宅島に訪れてみてくださいね。

離島で働く 三宅島編【まとめ】

伊豆諸島、三宅島のインタビューでは感じたことは、「自分が何をしたいかを明確に持ち、それに向かって突き進むこと」が重要だということ。島暮らしに憧れを持つことも大事ですが、それ以上に島で何をしたいか、どんな暮らしをしたいかという意思を持つことが、快適に島で暮らすためのポイントだと感じました。