スペシャルインタビュー
第16回 若い人が「地方で働く」ということ

第16回 若い人が「地方で働く」ということ

ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘氏
愛知県出身。富士総合研究所(現・みずほ情報総研)を経て、2000年、インターネット創世記にネットイヤーグループの創業より参画する。大手企業のデジタルマーケティングなどに携わり、同社関連会社の役員を歴任。2012年、北海道の地域振興やブランディングを目的としたデジタルメディア事業に関わったことをきっかけとして、地方創生ビジネスに着目。以来、現在にまで続く、沖縄エリア最大級の観光振興・情報発信メディア「沖縄CLIP」や、瀬戸内地域の観光メディア「瀬戸内Finder」などを手がける。2016年、ネイティブ株式会社を創業して独立、代表取締役に就任。

テーマ1
「NATIV」の強みと、「地方創生業界メディア」

私たちネイティブ株式会社は、マーケティングが強みの「新しい地域商社」です。地域商社とは聞き慣れない用語かもしれませんが、地域にヒト・モノ・カネをもたらす仕事を思ってください。

現在は、社名を冠した「NATIV」というWebメディアを中心に、各地で事業を展開しています。本社は東京ですが、広島には「瀬戸内チーム」、那覇には「沖縄チーム」があり、現地在住のメンバーやパートナーとともに取り組んでいます。

「NATIV」の強みと、「地方創生業界メディア」

Webメディアとしての「NATIV」は、「地方創生業界メディア」 だと定義しています。私たちが地域の観光メディアを手がける中で感じた「地方創生をビジネスとしてきちんと成立させ、ヒト・モノ・カネが流れるような『産業』にしたい」という思いを実現するための媒体で、地方創生の現場で活躍する人を可視化し、応援するために誕生しました。

 

地方創生業界、と一口にいっても、その範囲はとても幅広いもの。介護や福祉、農林水産業など、ありとあらゆる業種が関わってきます。とはいえ、大きい部分を占めるのは、やはり観光業でしょう。1泊2日も長期滞在も「観光」ですし、「移住」も「帰宅しない観光」。加えて私は、その土地のものを売り買いする「通販」も「移動しない観光業」と捉えています。

 

実際問題、少子高齢化の進む日本国内だけでは、「居住人口を増やす」ことを前提とした地方創生は難しい。そこで「関与人口」を増やすことが重要と考えました。旅行に来た、その土地のモノを買ってくれた……。そうした「地域に何らかの形で関わってくれた」人を増やせばいい。昨年、日本には2800万人の外国人観光客が来ましたが、2020年に向けてさらに増えることが予想されます。「関与人口」なら、海外からの力も得て、大幅に伸ばせる可能性があるのです。

 

そうなると大切なのは「可視化」。
この土地にはなにがあるのか、何が魅力なのかをわかりやすく見せて、アピールすることが必要です。

「NATIV」の強みと、「地方創生業界メディア」

具体例としてひとつ挙げたいのが、私たちがお手伝いした、淡路島ブランディング企画 「おっタマげ!淡路島」です。淡路島名産のたまねぎをキーとして、たまねぎが取れるクレーンゲームや、絶景スポットに設置したたまねぎの巨大オブジェたまねぎを切ったときに出る涙を流す美人コンテストなどを仕掛けました。これによって、SNSで拡散されたのはもちろん、新聞・テレビも注目し、広告試算価値2億円以上を達成しました。一時的なブームに終わらず、今でもたまねぎクレーンゲームには長蛇の列ができているんですよ。

テーマ2
地方創生が成功する「カギ」とは

当社創業以前から様々な地方創生プロジェクトに関わってきたなかで感じたのは、成功するプロジェクトには必ず、地域の側に核となる人がいること。信念を持って「この地域をなんとかしたい!」と思い、自ら動く人がいないと、成功はおぼつかないですね。

 

私たちが魔法の杖を持っていて、それを振るだけで解決するわけじゃない。そこが重要なんです。あくまで私たちはサポート役に回り、地域の方々の「思い」に引っ張られる形で進むのが上手くいくプロジェクトのパターン。その意味で、人との出会いは本当に大切ですね。

地方創生が成功する「カギ」とは

その「人」は、元からの住民に限りません。都会からUターンされた方はもちろん、中には全く関わりのなかった移住者もいます。共通点は、地域にある、その地元ならではの「ロジック」を読み解けて、そこに入っていける人であること。

 

人脈だって外部からではパッと見、わからない。そうした「地域の文脈」がわかっていて、なおかつ自分自身も思いを持って動いている人に対して、私たちは外部から各種のノウハウやマンパワー、都会側の人脈を提供する。そういう構図が自然だと思いますね。

 

私自身も、これまでの活動は「地域が主語」となるようにやってきました。情報発信ひとつとっても、地域の方自身が「おらが街にはこんなところがあるよ」とか「地元の人しか知らないスポットはここだよ」と伝えるほうが、外から見た情報を伝えるより、多くの方に響くんですよね。

 

こうした情報発信は、在住者や出身者など、その地域と元から関わりがある人の方が、意外と反応してくれるんですよね。「うちの地元をよくわかってるじゃないか」とか「取り上げてくれてうれしいな」と感じてくれるような情報は、さらに信頼性が付加されて伝わっていくんです。

テーマ3
若い人が「地方で働く」ということ

実のところ、地方は慢性的に人不足です。その意味でも、若い人が地方で働くことで、大きなチャンスをつかめるのではと感じています。

 

もっとも、今の若い世代は、私たちが若かったころとは違い、「地方」を色眼鏡で見ることはないでしょう。NATIVでも学生インターンが活躍していますが、地方創生に関心を持つ若い方が増えていることも実感しています。

 

地方にはとても多くの「魅力的な仕事」「魅力的な会社」がたくさんあります。起業する、とか大げさなことをしなくても、そうした「いい会社」で働けばいい。具体的に名前を挙げたいくらいですよ、ここで(笑)。

 

若い人が「地方で働く」ということ

だいたい、都会で大企業に入ったところで、本当の意味での「大きな仕事」をするに至るには中々大変なものがあります。見た目にビッグな案件であっても、担当できるのは、そのごく一部。歯車の一個でしかない、ということがほとんど。その点、地方に行けば、何でもできます。任される範囲が大きいことが多いんです。自分を活かそうという方には、むしろ地方で「何でも任される」状況のほうがいいでしょう。

 

では、なぜ実際に地方で活躍しようと思う人が少ないのだろう、というと、これは単純な話で「知らないから」。可視化されていないんですね。残念ながら地方の企業は、その辺のアピールの機会が不足している。やり方がわからないのかもしれない。そういった部分でも、私たちのようなメディアを核とした会社がお手伝いする意味もあると思います。

 

もし、読んでいるあなたが地方創生に関わってみようかなと思ったのなら、いきなり移住だとか就職だとかではなく、まずは旅行でもしてみてください。その土地土地で人とふれあうことが大切です。今は都内でも、地方創生関連のいろいろなイベントもありますから、どんどん参加して、動いてみてください。動いた分だけ、チャンスが広がる。移動距離の分、チャンスが増える。

 

これは間違いないです。
自分のアンテナを高く張って、地方創生業界の可能性を感じてみてください。