スペシャルインタビュー
第11回「自分らしく生きたい」が地方に目を向けるきっかけになる

第11回「自分らしく生きたい」が地方に目を向けるきっかけになる

元ライフハッカー[日本版]編集長  米田 智彦 氏
元ライフハッカー[日本版]編集長、文筆家、コンテンツディレクター
1973年福岡市出身。出版社、ITベンチャー勤務を経て、文筆家・編集者・ディレクターとして、出版からウェブ、企業のキャンペーン、プロダクト開発、イベント開催、テレビ、ラジオへの出演と多岐にわたる企画・編集・執筆・プロデュースに携わる。2011年の約1年間、旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を敢行。都内約50カ所のシェアハウス、シェアオフィスなどを渡り歩き、ノマド、シェア、コワーキング、デュアルライフといった新しい働き方・暮らし方を実体験。2014年より月間読者数580万人のウェブメディア「ライフハッカー[日本版]」の編集長を務める。TOKYOMXテレビ「モーニングCROSS」のコメンテーターとしても出演中。主な著作に『僕らの時代のライフデザイン』(ダイヤモンド社)『いきたい場所で生きる 僕らの時代の移住地図』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

テーマ1
「自分らしく生きたい」が地方に目を向けるきっかけになる

「自分らしく生きたい」が地方に目を向けるきっかけになる

私が編集長を務めていた「ライフハッカー」というサイトは、ハウツーやテクノロジー、ガジェット、学びなどがどんな風に個人の生活や仕事を変えていくのかを主に扱うメディアですが、それに加えて、もう少し大きな視野で、社会問題を解決するメディアとしても様々な情報を提供しています。地方創生や移住、新しい働き方について扱った記事も多く、中でも、実際の移住の現状を捉えた記事は、たくさんの読者に読んでもらいました。私自身も「どう生きるか、どう暮らすか、どう働くか」というのがこの10年くらいの人生のテーマでした。家財や定住所を持たずに、東京を回遊して暮らす「ノマド・トーキョー」という活動を行ったのも、そうした興味からでした。

 

最近の潮流を見ると、リモートワークという新しい働き方、パソコンやスマートフォンなどの通信機器の発達、LCC(格安航空会社)の普及というものが、場所を選ばない働き方を促進させています。また、地方自治体が移住を促進したり、大企業が働き方改革を打ち出したりしています。そんな時代だからこそ、あらためて「自分が暮らしたい場所はどこか?自分はどこで生きたいのか?」というテーマについて一冊の本にしたら面白いんじゃないかと思いました。日本も海外も合わせた「移住地図」といったものができるんじゃないかと考えたのが、『いきたい場所で生きる』という本を書き始めたきっかけです。

 

本では、33人の移住者たちの実体験を紹介しています取材をして感じたのは、彼らが地元の方々とのつながりの中で、数々の工夫を重ねて今の暮らしが成り立っていることでした。その根源にある移住者たちのモチベーションは、「自分らしく生きたい」ということです。

 

これまでは、都心にしか仕事がないとか、家業を継がないといけないとか、都市部にいないといけない様々な「縛り」があった。そこから少しずつ自由になってきていて、「東京出身だけど田舎で暮らしてみたい」といったような選択肢の幅が広がったのではないかと思います。2011年に起こった東日本大震災は、地方に向かわせる一つのきっかけになりましたが、「自分はどこに住んで、働きたいのだろうか」という根源的なことを自分に問い直す、大きな時期に来ているのは間違いないと思います。

 

実際に移住した彼らは皆、それぞれ、それなりの苦労がありながらも、本当に楽しそうです。ストレスがないのでしょう。それは、繰り返しになりますが、地方だから、都市部ではないから幸せなのではなく、「自分の生きたい場所」で暮らしているからです。

テーマ2
若者目線での地域資源に目を向けること!

若者目線での地域資源に目を向けること!

都市部と比べた際の地方のメリットは、いろいろとあると思います生活コストが安いこと。通勤ラッシュがないこと。食べ物がおいしいこと。ストレスから解放されること。そして、地方での新しい仲間づくりの面白さもあると思います。

 

一方、地方の課題としては、人口減や過疎化、高齢化によって、「元気がない」といったことがよく言われます。しかし、逆に言うと、今はそうした「地方の疲弊」「空き家問題」といった課題がプラスに働き始めているように感じています。たとえば、空き家を安く借りてリノベーションする、DIYで拠点を作るといった、人が見向きもしなかったものを活用できる動きがとりやすくなっているんです。

 

そして何より、新しいことを始めたいと思ったときに、手を挙げてプロジェクトを立ち上げられる余地が、地方にはまだまだあります。誰もやっていないことを、一番最初に始められます。

 

地方における仕事のチャンスをもう少し考えるなら、グローバルな視点を持って、世界を市場にビジネスを立ち上げるケースがあることも知っておくとよいでしょう。とあるスタートアップ企業のサービスが世界中で流行った理由について伺うと、「ホームページに掲載しているツール説明を英語にしたからだ」と言われました。場所など関係なく、そうした他がやっていないちょっとしたことで、直接世界とつながっていける時代なのです。地方だから、東京だから、といったことは問題ではないのです。

 

もう一つ、その土地ならではの資源に目を向けるのは大事ですが、できれば若者視点で考えてみてほしいです。地方資源というと、空気がきれい、魚がおいしい、土地がたくさんある、といったことがよく言われますが、それは正直言ってその土地にしかないものではありません。だからこそ、「コミュニティスペースが作りやすい雰囲気がある」とか「地元の人が若い力に対して協力的」といった、若者にとって必要なもので、その場所ならではの特徴があるかどうかまで、しっかり考えて目を向けてほしいです。

 

あとは、地方からインパクトを生み出そうと活動している経営者は、地方の中小企業にもたくさんいます。そういう会社を探し、直接会いに行ってみることも大事だと思いますね。

 

私はよく「リファイン」という言葉を使います。内部にいる人だと気付かない魅力も、外を知っている人なら簡単に気付くことができるもの。そうやってみつけた地方の魅力を、若者のアイデアとかけ算し、新しいものとしてリブランディングしていくのは、これからの一つの面白いプロジェクトになり得るものだと考えています。

テーマ3
心の声に耳を傾け、興味がある土地に足を運ぼう

心の声に耳を傾け、興味がある土地に足を運ぼう

ピンと来る場所があったら、まずはその土地に行ってみること。足を運んで、その土地の人と話してみることが大事です。たとえばSNSでつながってみてもいいかもしれません。さらに、一度だけでなく二度、三度と足を運んでみる。それを繰り返すうちに、「ここだったら楽しく過ごせそうだ」と直感できたり、「何か大きな喜びが得られそうだ」と感じたりといった、「この土地が私を呼んでいる」気分になるはずです。

 

そうやって、回数を増やしていきながら、少しずつその土地にシフトしていけばいい。月に2回は足を運ぶようになったら、もうそれは半分移住したようなものです。私は「試住」と言っていますが、試しに住んでみればいい。そうやって、その土地のことを知り、人とつながっていけばいいと思っています。いきなり最初から根を張ろうなんて考えなくていいんです。まずはその土地のことを好きになることが重要です。

 

どの土地にも、「移住の先輩」はいるものです。彼らに会って教えを乞うたり、相談したりするのは非常に大事なことです。

「築150年の誰も住んでいない古民家があるけど、月1万円で住んでみないか」みたいな、自力では絶対にたどり着けないような情報が、彼らから舞い込んでくることがあるかもしれません。何より、私が33人に話を聞いていろいろな気づきがあったように、経験した人にしか分からないことはたくさんあるのです。

 

今の時代、情報はいくらでも集めることができますが、人は情報だけでは動きませんし、情報に触れるだけでは人生は進んでいきません。だけど一方で、情報がないと行動しないのも事実です。だから、まずは情報を得ること。そして行動すること。その先に、人生が変わること。そうやって一歩ずつ進んでいけばいいと思います。

 

その最初の一歩を踏み出そうという時に必要な情報が集まっているのが、「LO活」のようなサイトでしょう。サイトに様々に掲載されている「本当の生の声」に触れることが大事ですし、いろいろな土地について知るきっかけにもなると思いますね。