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スペシャルインタビュー

第8回「LOCAL×はたらく」を考える 第8回「LOCAL×はたらく」を考える

第8回「LOCAL×はたらく」を考える

いすみ鉄道株式会社 代表取締役社長  鳥塚 亮 氏
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いすみ鉄道株式会社 代表取締役社長  鳥塚 亮 氏

東京都生まれ。明治大学商学部卒業後、学習塾職員などを経て、27歳の時に外資系航空会社に入社。30歳で同業他社に転職した後、32歳の時に副業として鉄道前面展望ビデオの販売を行なう有限会社パシナコーポレーション(パシナ倶楽部)設立。2009年、千葉県・いすみ市・大多喜町・小湊鉄道が共同出資する第三セクター「いすみ鉄道」の社長公募に応募。123名の中から選ばれ、同年6月に同社の社長に。就任後は、運転士公募、人気キャラクター「ムーミン」を使ったタイアップやグッズ販売、ファン倶楽部発足、枕木オーナー制度など、様々な活性化事業に取り組む。

都会の人の感性で田舎を「演出」しよう!

都会の人の感性で田舎を「演出」しよう!

2009年に社長になった時に思っていたのは、鉄道ファンではない、普通の都会の人が「いいな」と思えるコンテンツが、田舎にはたくさんあるなあということでした。例えばローカル線の旅番組。あれは鉄道ファンじゃなくて、都会に住む普通の人がたくさん見ているんですよ。だから、そんな素晴らしい鉄道を廃止するのはもったいないし、うまく使ったら地域も一緒に浮上できるんじゃないかと思いました。

 

どうせ働くなら、憧れの場所で仕事したいじゃないですか。満員電車に揺られてビルの中で働くことに憧れているならそれを選べばいい。でも私は違いました。「若い人にとって都会はチャンスが減っている」とよく言われますが、それは私たちの世代でもそうだったんです。勉強でも何でも、自分の「売り」で勝負しようと思った時に、田舎の方が使えそうなコンテンツが充実していて、若い人たちにとってのチャンスが転がっているのです。私がこちらに来て改めて感じたのはそういうことでした。

 

例えるならば、東京の生活は「日用品」、つまり「生活に必要なもの」です。かたや田舎は「別になくても困らないもの」だと思います。私の中の大原則は、「必要なものほど売れない」。だって、生活に必要な肉、魚、野菜、服…これらは全部、結局は価格の勝負ですよ。安いお店があれば、人は流れてしまう。だけど、なくても困らないもの、たとえばフェラーリを買う時に、「お願いだから2割引いてよ」なんて言う人、いませんよね? 価格じゃなくて「どうしても欲しい」というのが購買の動機だからです。

 

田舎もそれと同じ。売りやすいんです。コンテンツとして演出することで、「行ってみたいな!」となるわけじゃないですか。だって、ただ列車に乗って一往復するだけで楽しいなんて、田舎にいる人には理解できないんですから。普通に都会で育った人の方がビッグチャンスを見つけやすいのです。

 

いすみ鉄道の商品は、1時間に1本走る列車で、単位時間あたりの商品供給量は50席ほどです。少ないですよね。だから安売りする必要もありません。それに、お取り寄せもできない。わざわざ行かないと楽しめません。だったら、こんなに売りやすい商品はないじゃないですか。それを地元の人に「交通の足として使ってください」などと必死にお願いしても、バスも走っていれば車もある中で無理ですよ。つまり、どこにマーケットがあるのか、それを理解してくれる人がどこにいるのかを見極めることが大事です。いすみ鉄道という田舎のビッグチャンスを、ブランド化して都会の人に届けることが大事であって、それが、私が毎日やっていることなのです。

「田舎と都会をつなぐ」をビジネスチャンスに

「田舎と都会をつなぐ」をビジネスチャンスに

いすみ鉄道は、千葉県のいすみ市と大多喜町の2市町間を走っています。そのいすみ市の中心にある大原漁港は、「伊勢海老」の漁獲高が日本一※なんです(千葉県外房大原夷隅東部漁業協同組合ホームページ:http://www.bii.ne.jp/ohara-iseebi/)。これ、皆さん知りませんよね? いすみ鉄道では、「伊勢海老特急」や「伊勢えび弁当」という企画をやっていますが、これは、日本一の伊勢海老を知ってもらおうと始めたのです。「なぜ伊勢海老なんですか?」と興味を持ってもらったり、それをマスコミに取り上げてもらったり、東京の百貨店で販売してもらったりすることで、たくさんの人が千葉県の名産について認識を新たにしてくれます。これ、地域を盛り上げるのには最高ですよね。

※千葉県外房大原夷隅東部漁業協同組合ホームページより引用

 

 

函館本線の森駅では、超有名な駅弁として知られる「いかめし」が売られています。だけど、このお弁当が実際に森駅でどれくらい売れているかご存じですか? おそらくですが、ほとんど売れていないと思います。だって森駅は函館から1時間もかからない。本州に向かう人はお弁当は函館で買ってあるだろうし、函館に向かう人はあと1時間もないところでお弁当なんて買いませんよ。ここで重要なのは、「森駅で売っていること」です。あそこで売っている名物だから、東京の百貨店でも売れるんです。つまり「リアル」と「バーチャル」なんです。

 

いすみ鉄道も同じです。安全、正確、ローコストで走っていたら、そのリアルをバーチャルに膨らませてあげればいい。それができるのは、都会の人のセンスですよ。知り合いに、四国の山奥で葉っぱを拾ってきて東京の料亭に販売している人がいますが、それも同じですよね。つまり、大事なのは田舎と都会を「つなぐ」ことなんです。

 

それをしようと思った時にポイントとなるのは、「その土地が好きかどうか」ではないでしょうか。人を好きになるのと同じで、好きになるのに理由はいりません(笑)。じゃあどうしたらいいのかといえば、歩くことです。「なんか居心地がいいなあ」「水が合うなあ」と思う場所がきっとあると思うんです。それを覚えておいてください。

 

最近の若者を見ていて尊敬するのは、スマホを片手に情報収集して、「ちょっと行ってみよう」と行動しますよね。あれ、すごくいいことだと思います。最近はテレビ番組でもタレントが街をぶらぶらしていますが、地味な路地とかそんな場所ばかり歩いていますよね。あれが大事なんです。

 

「その土地で働くことは、その土地に住むこと」と言いますが、私は土地と人は分けて考えた方がいいと思っています。だって人のことを嫌いになってしまうと、その土地のことまで嫌いになってしまうからです。無理してその地域に溶け込もうなんて思わなくていいんじゃないでしょうか。大事なのは「つなぐ」ことなんですから。

「何で自己実現するのか?」を考えてほしい

「何で自己実現するのか?」を考えてほしい

第三セクターであるいすみ鉄道は、かつて国から「もういらない」と言われたものを、地元の人たちが守り抜いたからこそ、今もあるわけです。だからそれを30年以上も残した地域は、その鉄道から利益があって然るべきだと思います。私がこれからもすべきことは、「ホントだったら廃止だったけど、鉄道を守ってきてよかったなあ」と地域の人たちに思ってもらうことです。

 

そのためには、まずは沿線を盛り上げたいと考えています。いすみ鉄道が走っていれば、沿線に関連ビジネスが栄えていく。そこに人が集まれば、地域が潤う。「おいしい思い」をするのは、私たちじゃなくて地域の人でいい。これは国鉄や営利的にやっている私鉄ではできないこと。第三セクターだからこそです。これが、私のポリシーです。

 

いすみ鉄道のような第三セクターは、日本全国どこにでもあります。だから、そういう地域の人たちに「自分たちにもできるはずだ」と思ってもらいたいですね。だって、富士山の絶景が拝めるわけでもなく、感動的にきれいな渓谷の中を走るわけでもない、いすみ鉄道がこうやって注目していただけているわけですから。

 

せっかくこの世に生を受けて、何か目的があって生まれてきたと考えたら、何か自己実現をしたいですよね。私は飛行機の操縦士や電車の車掌になりたいと思ってずっと生きてきて、今こうして働いています。「職業を通じて自己実現ができる」というのは、自己実現として一番素敵なことだと思っています。もちろん楽しいことばかりではないですし、厳しいこともたくさんあります。

 

自己実現の方法は、何も職業に就くことだけに限りません。試しに、大学3年くらいになった時に一度、どの会社に入ろうかじゃなくて「どういう方法で自己実現したいのか」を考えてみたらいいと思います。もちろん、決めたからといってそっちに行くとも、行けるとも限りませんが、これから生きていくうえでの「道しるべ」としては大事なものになると思いますよ。

 

(2017年3月10日掲載)

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