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特 集

【教えて!海上先生】どんな魅力があるの?
 中小企業への就職、大企業への就職 <講演録 Vol.4>

【第4回】働き手を前向きな気持ちにさせてくれる、社内のコミュニケーション の大切さとは?


											

みなさんこんにちは、海上(うなかみ)です(※)。

前回の講義では、中小企業と大企業での昇進のしやすさ・しにくさについて、そして、それが仕事に取り組むときの意識や意欲にも大きく影響することについて、詳しく解説しました。

この第4回講義では、社内の風通しの良さやコミュニケーションについて考えます。
また、中小企業も良い点ばかりではありません。中小企業の課題や弱みについても考えてみます。

 

(この講演録は、海上委員が行った講演を「地方人材還流促進事業」事務局にて、特集記事としてまとめたものです。)

 

 

 

■大手企業社員の8割が「社長と話す機会はほとんどない」

ある著名大手企業の社員は、自分がいる部署が廃止されることを新聞やテレビで知って驚いたそうです。社員が何千~何万人もいる巨大組織ではよくあることで、むしろ重大情報であるほど教えてもらえないものです。でも、社員の立場からすると、なんとも不安な限りでしょう。

また、働き手アンケート調査で尋ねたところ、従業員1,000名以上の大手企業では8割以上が「(社長と)まず話すことはない」という結果でした(図-1)。組織が大きくなればなるほど、経営トップと目を合わせて話すことはなくなっていくのです。

図-1 経営者(社長)と話す機会はどのくらいあるか?


											
海上先生_Figure_180131_06

この点、中小企業の魅力の一つとしてよく挙げられるのが、「社内の風通しの良さ」です。それは「組織の透明性」や「社内コミュニケーション」といったところにも表れます。

働き手へのインタビューでも、例えば「中小企業で働いていると社内の全体が見渡せて、全体像がつかみやすい」「会社が小さいので財務状況がわかる。だからあまり不安がない」という声が聞こえます。

小さな組織なら、会社の端々まで物理的にも心理的にも距離が近いので、他部署の話題でもどういった仕事が動いているのか何となく耳に入り、少し歩み寄れば、直接に顔を合わせて相談することも簡単です。

こうした部署間のヨコの距離感覚だけでなく、「前職の大企業なら社長と話せるのは年に1回くらいだったが、今だと社長室にちょっと足を運んで話すこともできるのが充実感にもつながっている」「経営トップが何を考えているのか把握しやすい」というインタビュー回答があるように、経営トップとのタテの距離感が近いことも中小企業の大きな特徴です。社内に居れば、社長の話す声がどこからか聞こえ、忙しく歩く姿を見かけるのが中小企業の風景なのです。

 

■「経営者と話す頻度」は、やりがいにも関係する!

このように、一社員が感じられる“会社との一体感”や“経営の透明性・風通しの良さ”というものは、非常に大切です。なぜかというと、人々が働くうえでのやりがい・やる気の源にも影響する重要事項だからです。
そこで、こんなデータも紹介しておきますね。

図-2 「経営者と話す機会の多さ」と「仕事に対する好感度」との関係性


											
海上先生_Figure_180131_07

上述した「経営者(社長)と話す機会はどのくらいありますか?」という質問に対して、「今の仕事は好きですか?」という別の質問とをクロス集計したのが図-2です。

そして、ここでわかったのが、経営者と話す頻度が高い人ほど「今の仕事が好き」と回答しているという事実です。

「社長と話すことの何がいいの?」と思う方もいるでしょう。でも、やっぱり人は評価されたいし、誰かに認めてもらいたいという承認欲求があるわけです。

経営トップとのコミュニケーションが豊かな企業というのは、当然、他の上司や同僚とのコミュニケーションも良好なわけです。そういう雰囲気のなかで、直接社長から声をかけてもらったり、気にかけてもらえる機会が多いと、やりがいが生まれ、気持ちが満たされて、仕事が好きになりやすいということなのです。就職先を探すなら、そうした視点で会社を選ぶのも有効なポイントになります。

 

■大企業の強み、中小企業の弱み

本講義では、あまり知られていない中小企業の魅力を掘り起こすことで、大企業と中小企業の違いを解説して来ました。そのため、中小企業の長所に注目する視点が多かったですが、当然、中小企業の弱みもたくさんあります。それに触れないのはフェアではないので、ここで、中小企業の弱み、大企業の強みについても触れておきましょう。

 


											
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たとえば、インタビューで集めた働き手の生の声からは、「大手企業ならビッグプロジェクトも担当できるし、その達成感は大きい。給料も高いにこしたことはない」という意見がありました。確かに、会社全体のビジネス規模、平均的な賃金水準は、やはり大企業の強みですね。

また、就活的な視点でいえば、「行けるものなら一度は大きい企業に行くのがよい。中途ではなかなか入れないから」というのも、とても現実的な声ですね。

「今の会社は(小さくて)同期がいないので、競い合う人がいない」という声もありました。大企業では多くの部署があるので、さまざまな経験ができ、自分より優れた人やライバルに出会い、切磋琢磨できる機会は多いかもしれません。これは、上述した「中小企業では競争相手が少ないので昇進・昇格しやすい」という特徴の裏返しですね。ライバルが少ないことには、メリットとデメリットの両面があるといえます。

ワンマン社長や、能力的に不安のある同族後継者の存在、組合の未整備などもありがちな問題点です。

ほかにも、女性に比較的多い意見が「中小企業はアットホーム。ただ、一度人間関係が崩れると大変そう。また、いろいろな仕事がやれる半面、『何でも屋』として煩わしい事務仕事をやらされそう」という声です。この点、大企業なら3年に一度程度は人事異動があって、ウマが合う人も合わない人も引き離され、人間関係がリセットされます。

こうした弱み・問題点にもしっかりと目を向けた上で、それを克服している中小企業を見出す姿勢が大事になるのです。例えば、大きなプロジェクトに関わる中小企業もあれば、優れたライバルと競い合える中小企業もあります。人間関係が合わなければ他社を探せます。とにかく数や種類が豊富なので、多少のチャレンジ、トライ&エラーができるのも、中小企業に就職する大きな魅力です。

 

 

【まとめ】知れば納得。中小企業の魅力とは…

締めくくりに、全体を通したポイントを挙げると、次のとおりです。

 ●地元密着・生活重視のライフスタイルを実現するため、中小企業を選ぶ人は多い。地方にも会社数が多いので選択肢は広い。転職者の採用も多いので、やり直しが利く。
一方、事業規模や知名度を求めて大企業を選ぶは多い。ただし、地方にはそもそも大企業が少なく、入社できたとしても地元を離れた遠隔地転勤の可能性は大。

●競争相手が多くて、お決まりの昇進コースがありがちな大企業に比べて、小さく柔軟な組織をもつ中小企業の方が、昇進・昇格しやすい。
昇進・昇格の見込みがある企業では、明らかに社員の意識・意欲が高まる傾向がある。頑張れば応えてくれる、評価してくれるという実感が各人のやる気を高めることにつながる

●働き手の目から見て、比較的身近な存在である経営トップとの交流は重要。経営者との豊かなコミュニケーションは、働き手の前向きな気持ちに好影響を与える。“会社との一体感”や“経営の透明性”、“風通しの良さ”が感じられる企業を見出すことが大事。そうした企業は、中小企業の方が圧倒的に多い。

 


											

地方に就職先を探すとき、ぜひとも知っておきたい「働く場としての中小企業の魅力」は、以上のように整理できます。

一方、大企業の魅力としては、仕事のスケールが大きく、賃金水準が高い、安定性がある、と言われることが一般的です。確かにそうですが、あまり幻想化し過ぎないよう注意しなければなりません。

例えば、「しっかり勉強して、将来、安定した大企業に入りなさい」とは、教育熱心な親御さんがよくいう言葉です。なるほど、“安定”は、大企業の代名詞のようですが、ここ10年以内に、かつて世界一だった某国の自動車メーカー・電子部品メーカー・国際的大銀行などの有名大手企業でさえ、破綻の危機に瀕した事実があります。企業の名前自体は存続しましたが、多くの人員削減があり、社員の“安定”は脅かされました。

他方、中小企業には、創業以来何百年と続く会社も意外に多く見つけることができます。リーマンショックに直撃されてもリストラをしないで頑張った会社もいます。

平均的な賃金水準についても、大企業の方が高いことが多いですが、“平均”はあくまで“平均”です。昇進のしにくい大企業で低い給与にとどまるケースなら、中小企業で昇進して高い給与を得るケースの方が逆転するかもしれません。

学生の皆さんには、大企業への幻想、あるいは、中小企業への先入観にとらわれず、多角的な観点から企業をみていただきたいと思います。その際、本講義で解説した内容が微力ながら助けになるとしたら、存外の幸せと考えています。

 


											

【 講 師 略 歴 】
海上(うなかみ) 泰生(厚生労働省「地方人材還流促進事業」助言指導委員)
早稲田大学法学部卒業後、中小企業信用保険公庫、中小企業庁長官官房、通商産業省(現経済産業省)貿易局 課長補佐、
OECD(経済協力開発機構)パリ本部 輸出信用専門家会合委員、日本政策金融公庫総合研究所グループ長を歴任し、主席研究員(現職)。
埼玉大学大学院非常勤講師を経て、現在、横浜市立大学・立教大学・三重大学の3大学の講師を兼務。
所属学会 : 日本金融学会、組織学会、日本中小企業学会

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